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『4 ダンジョン』

森の生活にも慣れてきたところです

そして、更に、数年は経った・・・と思う。


森の障壁は相変わらず、強固で通れる気がしない。

そして、ギルドではA~Sランクと言われていた、魔物とのサバイバル生活が始まる。


愛剣となった、遺品の剣は、いまだに刃こぼれ一つなく。

そして、扱う魔法も順調に威力や効果が進化している。

森の魔物では、同時に複数を相手にしない限りは苦戦しなくなった。


髪が長くなれば剣でバッサリ切って。髭は石で作ったナイフでスッキリ剃った。

森だけあって、澄んだ泉もあり。身体を洗うのには困らなかった。

水に映った俺の顔が、少しフケたように見えたが。まあ、その通りだろう。


そして、帝国の方角を探すが、どこに行っても障壁が邪魔をして、森から出られない事が分かった。

こうなると、結界その物をどうにかするしかないが、

グラッセ王国側から、結界を張られているため、こちら側からはどうしようもない。


数年も一人で戦い続けていると、話が通じる相手が欲しくなった。

俺は、以前に会話が出来た、アースドラゴンの所へ向かう事にした。


普通に考えれば、規格外の怪物と対話しに行くなど、狂気の沙汰だろう。

誰でもその場で、無意味に容赦なく殺されると考える。

しかし、理由は分からないが、そうはならない気がした。


***


俺は思い出深い場所に訪れた。

久しぶりの再会だが、相手は俺が来る事が分かっていたように、自然に話かけてきた。


『数年前とは比べ物にならぬ程、充足しておるな』

「そりゃどうも。森から出られないが、何か知らないか?」


相手は、本来であれば敬意を払うべき相手だが、

俺に礼儀のような物を求められても困る。

よって、普通に話すことにした。


『森の結界を解くしかあるまい』

「それが出来れば苦労しないんだが、王国から張られているからな。どうしようもない」


王国も気合を入れ過ぎだろう。

少しくらい抜け道があってもいいだろうに。


そんな事を考えていたのだが、

目の前の相手からは思いもよらない答えが返ってきた。


『あの矮小な結界もどきであれば、何の効果も無いぞ?』

「なに?グラッセ王国が魔の森を封じていると昔から言い伝えられているぞ?」


結界もどきとはどういう事だ?

話の雲行きが怪しくなって来た。


『人間が作った大嘘よ。この森の魔物を人間の結界でどうにか出来るワケがあるまい』

「言われてみると、矛盾の塊だな」


驚きの新事実だった。

確かに、人間の力で、この森の魔物を封じ切るのは無理がある。

それに、もっとも分かりやすい喩えが目の前にいる。

あの結界がこの怪物を封じているとは、到底思えない。

俺達が子供の頃から聞かされていた話は出鱈目だったのか。


それでは、この森を覆う強靭な結界はいったい何だ?

謎は深まるばかりだな。


「それじゃあ。この森の結界はどうすれば解除出来るんだ?」

『森を出たいのか?』


「そりゃあな。ひたすら魔物を狩り続けて、力が上がるのも悪くないが。人間の生活に戻りたい」

『このままでは野生の獣。魔物と変わらぬか』

「そういうことだ」


***


『それであれば。お主に1つ依頼しよう』

「依頼?」


古代種の竜が、人間の俺に依頼?

違和感が半端ないが、聞くしかないだろう。


『この森の地下深くに広大なダンジョンがある』

「マジか!?」


魔の森にダンジョンだと?!


『目の色が変わったな』

「冒険者だからな。そりゃ変わる・・・ああ、冒険者は廃業していたか」


俺は冒険者の資格を失っていた。

強い魔物の討伐やレアアイテムを取得したところで、ギルドから報酬が出る訳でも無い。


しかし、ダンジョンと聞いたら、興奮して心が躍る。

俺は根っからの冒険者だったようだ。


『ダンジョンの最下層に我の秘宝が眠っている。それをここに持って来るのだ』

「そりゃまたでかい話だ。でも自分の宝だろう?自分で取りに行けないのか?」


もっともな質問をするが、拍子抜けする回答が返ってきた。


『この巨体故な。作った我が言うのも、間の抜けた話であるが』

「そりゃ、痛恨のミスだな。あんたも意外と抜けているのな」


熱心に作って忘れていた?そんな事があり得るのか?


『些細な事だ。最上層さえ朽ちればその下層は広い。しかし意外と頑丈でな。数千年経ってもなかなか朽ちぬ』

「恐ろしく悠長だな」


いやいや、気が長過ぎるだろう!

人間なら、文化が変わるレベルだぞ?


『竜とはそういう存在だ。最上層を崩壊させるのは造作も無いが、下層の魔物が溢れても面倒ゆえな。ダンジョンを修正するにも、我の竜珠が無ければ出来ぬ』

「竜珠?それはどんな形をしているんだ?」


元々、価値観が違う相手だったようだ。ここは素直に話を聞くべきだろう。

しかし、竜珠など聞いた事が無いな。


『黄金に輝く球体だ。人間がダンジョンコアと呼んでいる物だ』

「ダンジョンコア?!それってダンジョン踏破の証明になる代物じゃないか!あれってあんた等の持ち物だったのか?」


ギルドにダンジョンコアなんて持っていったら英雄扱いだぞ?

ちなみに、コアの所持者の名前はダンジョンに付く。

しかし、高難度ダンジョンの最深部にあるため、難易度も最難関の入手困難なレアアイテムだ。


『我は、自分の作ったダンジョンしか知らぬ。他のダンジョンに興味も無い』

「そうか、それで、その竜珠を取って来ればいいのか?」


『そうだ。だが、この魔の森にいる魔物は、そのダンジョンから溢れ出た雑魚に過ぎぬ』

「あれで雑魚なのか!?」


普通にAランクから、Sランクの魔物が闊歩しているが、あれが雑魚だと?


『危険度はこの森とは比較にならぬ。人間が勝手に格付けしている雑魚とは違う。我も頑張り過ぎたようだ』

「あんた。力の入れどころが色々間違っているな」


最早、どれだけの魔境か想像がつかないな。

しかし、このまま森で朽ち果てるのはごめんだ。


『ともあれ、竜珠が無ければ、この森の結界は解けぬ。結界は竜珠が発生源だ』

「森を出るには、その竜珠が無いと駄目か。それなら行くしか無いな」


俺は、さっそくダンジョンに向かう事にした。


***


驚いた事に、ダンジョンの入り口は、俺が住居として使っている洞窟だった。

俺は、なんちゅう所に住んでいたんだ。


ちなみに、古代種アースドラゴンには名前があった。

名をヴォルクスというらしい。

古代種だけあって、格好いい名前じゃないか。


そして、ヴォルクスが言うには、洞窟の奥に入り口があるらしい。

俺は洞窟の奥に行って、入り口を探した。


「しばらく住んでいたが。全然分からなかったな」


一か所だけ、洞窟に擬態している壁があり、そこが隠し通路になっていた。

これは、知っていなければ見つけられない細工だ。


そして、奥に下に通じる階段を見つけた。


(これが最上階だと!?)


ダンジョンを恐る恐る覗いてみると、すぐそこに、ダークキマイラが群れていた。

これでは、1匹が紛れて洞窟に出ても不思議ではないな。


他にも、冒険者ギルドでは、Sランクの中でも危険種と言われる魔物がそこいらに群れていた。

しかし。所詮は人間が勝手に格付けした相手だ。


というか、AランクだのSランクだの、危険種とか厄災級とか、

すべてが、アホらしくなってきた。


目の前で、Sランクとやらが雑魚の様に群れていて、

依頼主が厄災そのものという狂った状況だ。アホらしくもなるだろう。


ともあれ、人間の生活に戻るには、このダンジョンを踏破しなくてはならない。

俺は思い切ってダンジョンに挑む事を決意した。


***


ダンジョンには、モンスターハウスという現象がある。

それは雑魚モンスターが一か所に溜まっている状態を指すのだが。


目の前のモンスターハウスは、ダークキマイラとコカトリスとレイスがミックスされた地獄だ。

ここに来て、レイスという魔物と初めて相対する事になる。


レイスは幽体のモンスターで、この中では最も危険な魔物だ。

俺も見た事があるだけで戦った事は無い。Aランク当時は震えながら隠れてやりすごした相手だ。


その理由は、物理攻撃が効かない事が一つ。

そして、倒すなら魔法だが、聖属性以外の通りが悪く。闇属性に至っては吸収するという厄介極まりない相手だ。

加えて、触れただけで麻痺、最悪即死させてくる特殊攻撃。ブレイクを持つ。


しかし、レイスばかりに気を取られる訳にはいかない。

コカトリスは石化ブレスを吐く恐ろしい敵で、まともに喰らえば文字通り石の彫像と化す。ソロの俺は喰らったら即アウトだ。


ダークキマイラは物理攻撃の威力だけ見れば、この3体の中で一番高い。

特に頭部の牙の噛りつき、蛇の部分の猛毒は、まともに食らうと致命傷だ。


普通であれば、数十人の大パーティーを組んで1体を倒す規模の相手。


数十の化け物を相手に、人間1人が挑むなんて、あべこべにも程がある。

ヴォルクスの奴、頑張り過ぎじゃないか?


しかし、俺には夢がある。

それは、温かみのある、人間の生活を取り戻す事だ!

よって、こんな所で、躓くわけにはいかない!


「ヤケクソだ!やってやる!!」


俺は、自分を奮い立たせて、魔物の群れに突撃した。


***


結論から言おう。

尻尾を巻いて逃げてきた。


俺の悪い癖だな。変な所で思い切りがいい。いや良過ぎる。

認めよう。我ながら阿呆だ。


あんな地獄に、無策で突貫して勝てるワケが無いだろう。


という訳で、石化ブレスやレイスのブレイク、ダークキマイラの猛毒等々から命からがら避けまくったが、

それ以外の攻撃の滅多打ちで、洞窟の入り口近くの壁に叩きつけられた。

俺は、痛みを堪えて、なんとか入り口に転がり込んで、生き延びたというわけだ。


吹き飛ばされたのが、何も無い壁だったら死んでいたな。悪運だけはあるようだ。


「はあはあ・・・い、今のは流石に死んだと思った」


そして、ボロボロの身体で寝転がっていた所に、頭に直接声が届いた。


『情けない。最上階で躓くとは何事か』

「その声はヴォルクス!?」


あの樹からはかなり距離が離れている。

一体どうやって?


『洞窟とダンジョンが一体化した事で、我と繋がった』

「それは、また便利な事だ」


何でもありだな。流石に古代種だ。


『しかし、無様よのう』

「いやいや、アレに突撃するのは無謀じゃないか?」


流石に、人間が挑むダンジョンでは無い気がしてきたぞ?


『少しは頭を使え。お主、無謀に突撃しか能が無いのか?』

「うるさいわ!俺も今考えてるんだよ!」


いや、モンスターハウスに突撃したのは、確かに阿保だと思うけどな・・・

それを差し引いても、少し無茶じゃないか?


『ふむ。その武装では心許ないか』

「武装?ああ、確かにこの剣しか装備してないな」


剣以外は、ほとんど裸に近い。

数年も経てば、その辺に売っている服など、ボロ布になるのは当然だろう。


確かに装備らしき物は身に着けていないに等しい。

よくこんな格好でダークキマイラをソロで倒せたものだ。


『ダンジョンを注意深く探索してみよ。それなりに使える武具がある』

「使っていいのか?あんたのダンジョンなんだろ?」


流石に、持ち主が分かっていて荒らすのは気が引ける。

しかし、当の本人からの答えは、気が抜ける程に軽かった。


『許す。ダンジョンにある物は何でも勝手に使え。そしてもっと楽しませよ。ではな』

「ああ、分かった。ん?楽しませる?」


言いたい事を言って、ヴォルクスからの念話?は一方的に切られた。


「楽しませるって何だよ!」


文句を言いに行きたいところだが、今は森の外に出る事が最優先だ。

というか、そもそも、ヴォルクスの痛恨のミスが原因じゃねぇか!


よし、開き直った!

こうなったら、ダンジョン内の武具とやらを根こそぎ掻っ攫ってやる。

それでダンジョン攻略だ!

やっとダンジョンが登場しました。

まだ最上層ですが、進行は早めに行きます。

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