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『21 新天地』

貴族になった後の話

俺は、陛下より、男爵位を頂いた。

そして、自分の館に戻ると、曙光の幹部による、総出の出迎えがあった。


「「「ルクス様!男爵への叙勲、おめでとうございます!!!」」」


流石に、裏社会の情報網だ。耳が早いな。

とはいえ、今の俺は非常に気分がいい。


「うむ。お前達の祝辞を喜んで受け取ろう。魔の森の手前一帯を皇帝陛下より賜った。

 そこで、森の傍に屋敷を一つ建ててもらいたい」

「流石はルクス様。あの森を領土として切り取る算段ですね。畏まりました」


曙光には、あの森がすでに無害である事を知らせている。

俺が一声かければ、準備も滞りなく進む事だろう。


「胡蝶班がいち早く情報を掴んで、あの土地周辺に街を建設するための資材確保を進めております」

「流石、闇商人に精通しているな。素晴らしい働きだ。それでこそ曙光だ」

「恐れ入ります。それでは、本格的に計画を始動させます」

「励め。期待しているぞ」

「ははっ!」


曙光の連中も、洗練されてきた。

裏社会の情報網の速さだけではなく、内容を吟味し、すでに動いていたか。

俺の先手を打つとは、実に頼もしくなった。


そして、下手な兵隊よりも、一人一人が精鋭となった曙光だ。

そのまま、自分の領内の兵士として迎え入れれば、

俺に、絶対の忠誠を持った、精強な軍隊が完成する。

領地はグラッセ王国と隣接しているからな。防衛力はあるに越した事は無い。


あとは、一般の領民が増えていけば、完成された領地に仕上がるだろうが、

一番の問題は、ここだろう。

空白地だけあって、人口が殆どゼロだ。


とはいえ、曙光を使って、無理矢理、民を連れて来るのは、論外だ。

それでは、黒鷲の時代とやり方が変わらん。

暗部に頭を痛めていた陛下も、それを望んでいないだろう。


「魔の森周辺に、集落は無いのか?」

「点在しておりますが、教養の無い者達となります」


「野盗の類か? 」

「いえ、普通に暮らしている者が多いかと。襲うまでの獲物がいないので、野盗の数は逆に少ない事を確認しております」

「成程な、餌にすらならん連中か。その者達は飢えているのか?」

「かなり、危機的状況かと」


どの組織にも属さず、無知な難民か。逆に都合がいいな。


「その連中に炊き出しを与えよう。まずは健康な体になってもらう」

「ルクス様は、その者達を領民として迎え入れると?」

「そうだ。曙光で固めると、陛下から警戒されるからな。曙光には領地の開発で働いてもらうが、何も無い所から領地を開拓している体を見せねばならん」

「承知しました」


「次は、炊き出しで寄ってくる、野盗が現れるかもしれんが・・・」

「炊き出しは餓狼班を中心で行います。曙光の部隊を襲う、愚か者はいないと思われますが?」

「それもそうだな。いらない心配だった」


曙光の大元は、帝国東部の闇の4大勢力。

ならず者達にとって、曙光の名前は、まさに恐怖の代名詞だろう。

喧嘩を売るという事は、惨たらしく皆殺しにしてくださいと、土下座でお願いしている様な物だ。

曙光の勢力圏で、野盗など生まれるはずも無かったな。

新領地の治安は、曙光に任せていいだろう。


あとは、この地に民や商人が住みたくなる魅力が欲しい。

貴族の趣向品に使われる、特産品辺りがいいかもしれないな。


魔の森には、手付かずの資源。希少な鉱物や植物が自然に群生している。

魔物も多くいるが、曙光の若手の実戦訓練に丁度いいだろう。

そして、魅力のある特産物を商人に売り込んで、流通を地道に増やすのがベストといった所か。


あとは、胡蝶の幹部、アメリアとミーアで、内容を詰めてもらう事にした。

俺は、商才など皆無だからな。特産物の相場や、世間で流行する趣向品の知識が少ない。

ここは専門家に相談するのが一番だ。


そして、プランを考慮した結果、

大筋は問題無いが、やはり人口が少ない事が問題という結論になり、

まずは、人の流通を促す為に、近隣諸侯との街道整備を優先する事になった。


手始めに、領地が隣接する事になる、ラモラック伯爵に挨拶するのがいいだろう。

体調を崩して、静養されているというのも、以前から心配していた。

見舞いも兼ねて、訪問させてもらうとしよう。


***


俺は、お見舞いも兼ねて、ラモラック伯爵の館を訪ねた。


伯爵は、精神的な疲れが溜まっていただけで、今は回復されたとの事だった。

安心した俺は、陛下から男爵位を賜った事を、二人に伝えた。


「なんと!ルクス殿が男爵に叙勲されたと?!陛下も思い切った事をしたものだ!」

「おめでとう御座います!ルクス様!」

「ありがとう。ティナ」


ラモラック伯爵とティナは、俺の出世を大いに喜んでくれた。

さて、ここからが本題だ。


「そして、陛下より、領地として、魔の森周辺を拝領しました」

「ま、魔の森だと?!それは空白地も同然ではないか!陛下は何をお考えになっておいでなのだ?」

「なんて酷い!」

「ご心配には及びません。これは私が自ら陛下に進言したのです」


「自ら、あの様な不毛の土地を?ルクス殿の考えが分からないな。どういう事かね?」

「はい・・・誰もいない場所を、自ら進言されるなんて・・・」


「私は、ラモラック伯爵とティナを信頼しています。公にすると影響が大きい話ですが、

 実は魔の森の結界はすでに解けております」

「な、何と!?あの結界が!」

「それは本当ですか!?」


「間違いありません。何より私自身が、帝国に来る前に、魔の森に入って確かめました。

 あの結界は見た目は派手ですが、機能は完全に停止しています」

「君が、魔の森に入った?一流の冒険者すら、誰一人生還しないと言われた森から・・・とても信じがたい話だ」

「私は、ルクス様の言葉を信じます」

「ティナ?」


「出会った時のルクス様のお力は、信じられない程に苛烈な物でした。

 魔の森から生還したと言われても、不思議ではありません。むしろ納得しました」

「あの時は、野蛮で恥ずかしい姿を見せてしまいました」


出会った時の事を思い出したのか、ティナの頬が赤く染まる。

かくいう、俺も少しむず痒い。


「いえ、私の方こそ、恥ずかしい物をお見せしてしまいました」

「いえ、大変立派な物でした」

「あう・・・」


「ティナ?顔をそこまで赤くして・・・二人共、いったい何の話かね?」


俺はティナと出会った時の事を、詳細に伯爵に伝えた。

そういえば、あの時のティナはヴォルクスから貰った服を着ていたか。

ならず者に襲われた事は伝わっていたが、詳細は伝わっていなかったらしい。


「成程、ティナはすでにルクス殿に下着姿を見られていたと」

「成り行き上ですが。不可抗力ですよ?私は、あの時のティナには、服を貸す時以外は指一本触れていません」

「はい、私を助けて頂いたばかりか、肌を隠すために、あのような高価な服を貸してくださいました」


「我が娘ながら、ティナは身持ちが固い子だ。特に男性への免疫が薄い。今までも他家からの縁談をすべて断っているくらいでね」

「お、お父様・・・それは」


「私が過保護に育て過ぎたようだ。最近、領内の治安も良くなって、ティナの嫁ぎ先で頭を悩ませていたが、ティナはルクス殿に、自然に心を開いているようだね」

「はい。自分でも不思議ですが、自然に話せる殿方です。初めは命の恩人だからとも思いましたが、その事を差し置いても、一緒にいて安心出来る男性です」

「ティナのような、美しい女性にそう言っていただけると、嬉しい限りです」

「そ、そのような・・・美しいなんて・・・照れてしまいます」


「成程、どう見てもティナは、ルクス殿に夢中に見える」

「お、お父様・・・そんな・・・」

「ティナは、他の貴族からも、容姿を褒めらた所は何度もあったよ。しかし、今の様な反応は見るのは初めてだ」

「そ、そうだったでしょうか?」

「近頃、上の空だったが、ルクス殿が帝都に行っていた時と、時期が重なるかな?」

「そ、その話は、ここでは止めて下さい!」


「ルクス殿も、無事に貴族の仲間入りを果たした。どうだろう。ティナを嫁に貰ってくれないか?」

「伯爵殿?」

「お父様!?いきなり何を言うのですか!」


「ずっと考えていた事だよ。ティナもルクス殿に嫁ぐのであれば、幸せではないかな?」

「私などで良ければ、これ以上に嬉しい事はありませんが。ルクス様のお気持ちもあります」


ティナは、自己評価が低いと思う。

伯爵令嬢でこの美貌であれば、逆に思いあがる女性の方が多いだろう。


ティナは慎ましくて、可愛らしく、侍女など、平民にも自然に接する優しさを持っている。

この辺りは父親に似たのだろう。


そして、気丈で貴族の娘としての誇りを持っている。

何より、女性として完成された身体・・・すべて俺好みだ。


非の打ち所がないな。俺もティナに惚れている。


「私の様な、成り上がりの男爵で良ければ、喜んでティナを妻に迎えたいと思います」


俺は、はっきりと答えた。

だが、俺の問題は山積みだ、浮かれてばかりもいられない。

何より、俺を信頼してくれた2人へ、自分の誠意を見せる必要がある。


「しかし、領地はまだ空白の状態。街並みを整えるには、2か月はかかりましょう。

この度の領地開発が成功して、ティナを迎え入れる準備が整った時、改めて私からティナに婚姻を申し込ませて頂きたいと思います」


「はい!ルクス様は、必ず成功すると信じてます!でも、あまり待たせないで下さいね」

「ルクス殿の誠実な態度を見て、心から安心したよ。私も、ルクス殿の領地開拓の成功を祈っている」

「有難う御座います」


こうして、俺は、ティナと許嫁の関係となった。

勿論、本来の目的の、ラモラック領との街道整備についての話も、しっかりと通す事が出来た。

浮かれて、忘れかける所だったが、ティナを妻に迎える為にも、領地開拓を急がなければならなくなった。


***


さて、大きな目標が出来た!

新たな領地が出来れば、後に、今住んでいる、ラモラックの街の館から引っ越す事になる。

今住んでいる、俺の屋敷は別邸、兼、曙光の拠点として使うとしよう。

ラモラック伯爵が、義理の父上になれば、何かと来る機会は多いだろう。


各地に散らばっている曙光には、他の領地を監視、そして治安維持を継続してもらう。

隣接する貴族で、最大勢力のバイデル侯爵は俺を神と崇めている状態。

そして、第2勢力のラモラック伯爵とは血縁となる予定だ。


俺は帝国の地図を広げた。

いつの間にか。帝国領の東部は、殆どが俺の息がかかっている感じになっている。


しかし、帝都より西側の領地は、俺も良く知らない。

この土地には、大貴族のエリック公爵が西側に広大な領地を持っている。

曙光の構成員も、西には、あえて入れないようにしている。


恐らく暗部の対抗勢力がいると思うが、俺は帝国を陰から支配する気など、さらさら無い。

もっとも、自分の領地の開発で手一杯なので、しばらくは内政に努めるとしよう。


***


そして、1ヶ月後


ティナとの仲も進展しており、今では貴族の振る舞い等を教えてもらっている。


例のダンジョンで、過去に、光の神龍アストラに、礼節を叩き込まれたが、

地下に閉じこもっている神龍だけあって、基礎は出来ているが、形式が恐ろしく古いらしい。

という訳で、ティナに帝国貴族の振る舞いや、流行り廃り等を学んでいた。


そして、曙光から、ついに俺の屋敷が完成し、街の基礎が整ったとの知らせを受けた。


俺は、初めて新しい領地の屋敷を視察したのだが、

曙光が全霊を込めて作り上げた、街並みを見て唖然とした。


「流石に気合を入れすぎだろう。どこの宮廷だ?」

「ルクス様と奥方様がご入居される街と屋敷です。相応の物を用意しなければなりません」

「いや、明らかにやり過ぎだ。謀反を疑われるレベルだぞ?」


俺の目の前には、立派な館に、大きな河を引いた美しい街並みが広がっていた。

一言で言えば王宮と庭園だ。

それ程に、この街の景観は洗練されていた。


そして、一際目を引く、巨大な建物が先程から気になって仕方なかった。


「あの、街外れにある、物々しい建物は何だ?」

「ルクス様を称える神殿です!」

「それは今すぐ止めろ!陛下と教会を敵に回す事になる!」

「はっ!それでは、あの建物はいかがいたしましょうか?」

「神殿というより、まるで要塞だな。グラッセ王国の方向にあるなら、いざという時の防壁に使えるだろう」

「それでは、大型の武器を配備して、曙光が駐屯出来る要塞に変更致します」

「そうしてくれ」


こいつ等は何を作っているんだ!俺の神殿とか、普通に引くわ!

あと、そこいら中にある、俺の銅像もやめろ!!


ティナを迎え入れる前に、街の進捗具合を視察に来て正解だった。

こんな物が完成した街をティナが見たら、間違いなく卒倒する。

曙光の認識も、いくつか、軌道修正が必要だった。


「それで、肝心の一般市民はどうだ?」

「周辺の村に炊き出しを行い、健康な状態となった者を招き入れております。仕事は山ほどありますので、出来る物を順次割り振っております」

「では、教養面のフォローを始めるとするか」

「勝手ながら、既に、塾を作り、若年から年寄りまで、一般教養を教えています」

「うむ。その働きは評価する。良いと思った事は進んでやって構わん。だが、単独行動は控えろ。必ず幹部の指示を仰げ」

「はっ!」


自分で考えて、実行する事は結構だが、間違った事を仕出かす可能性もあるからな。

第3者で責任のある立場の人間のチェックを通せば、事故は防げるだろう。


「進捗を聞く限り、万事抜かりないな。いい働きだ、これからも期待しているぞ」

「はっ!有難き幸せ!」


行き過ぎた信仰に釘をさして、

部下の成長に満足した俺は、館に戻った。


***


そして、さらに1ヶ月後。


俺は新しい街をイーリスと名付けた。


王国からの防壁にもなる街だ。

防御や守護を司る、水神龍イーリスから名を借りた。


『神龍の私の名前を、人間の街の名前に使う?相変わらず、突拍子も無い事を考え付くわね。別に構わないわよ』

と、外ならぬイーリスから、有難い許可も貰っている。


街の形も、様になって来た。

魔の森で採れる、上質の薬草と、ミスリル鉱石、貴族の趣向品に必要な香辛料など、

魅力的な特産物で、商人の誘致に成功し、交通量も増えてきている。


俺も、自分も街が、栄える姿を見て、感無量となった。


***


その後、俺は早速、ティナを新しい街に案内した。


本当は、ラモラック伯爵も連れて来る予定だったが、

「ティナにすべて任せるよ。自分の目で見て決めなさい」

と言って、気を聞かせてくれた。


そして、イーリスの街並みを見て、ティナは驚いていた。


「あの荒れた荒野だった土地がこんなにも綺麗な街に・・・凄いです!ルクス様!

とても素敵な街です!私、とても気に入りました!」

「ティナが喜んでくれて何よりだ」

「はい、私は幸せです。あなた」


ティナは、屋敷と街並みを見てご満悦だった。

仕草すべてが愛らしい。

ティナのような、美しい女性を妻に迎えられる俺も幸せ者だ。


そして、いい女と結ばれたいという、俺の生前からの願いがここに成就された。

精一杯の愛情を、ティナに注いであげよう。


そして、数日後、ティナは正式に俺の妻となった。

嫁確保

そろそろ邪魔な、あの国が動きます

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