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星の降る日、君に出会った  作者: 吉川 青
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三話 さよなら

中学入学したあたりからずっと考えていた。どうやってで死のうかなと。


自殺したいと言って、多くの人は反対するだろう。これから楽しいことが待っているからと言って。でも、そんな保証はどこにもない。私にはこの先の人生に光があるとは思えない。ただひたすらに暗黒の世界があるのだろう。

そう思うなら、やっぱりクソみたいな人生を終わらせるしかない。


ということで、死に方を研究することにした。



ベタに屋上から飛び降りようかとも思ったけど、飛び降りたあとのことを考えると、結構悲惨だし、リスクが大きい。もしも死ねなかったら一生自由に動けない体になって地獄を味わうだろうし、死ねても死ねなくてもそこら中に血が飛び散るだろう。リアルな血の海が見れる。もしもそれを見て、トラウマになる人がいたらと考えると、胸が痛くなる。自分はどうでもいいけど、無関係に人にあまり迷惑をかけたくないからやめておいた。


刃物で自分の腹か心臓を刺して死のうかとも思ったけど、いくら慣れているとはいえ、痛いのは嫌いだし、何より最後は出来るだけ楽に死にたい。それに、部屋とかに血が散乱するのを想像すると、後片付けが面倒だと思うし、なんだか申し訳ない。誰が掃除するのかわからないが。あの二人ならともかく、警察の人とかが処理をするのなら、出来るだけライトな死に方の方がいいだろう。ということで、この案も潰れた。


他にも色々と思いついたが、ギリギリまで悩んだ挙句、入水でいくことにした。本当は睡眠薬多量摂取あたりにしておこうかとも思ったけど、睡眠薬を沢山用意するのが面倒だし、自殺と思われたくない。何より、この手段で死ぬのは、大好きな寝ることに対しての侮辱みたいなものかなと思った。

丁度私は泳げないし、雨の日なら滑って川に落ちてそのまま流されてしまったという完璧な流れが作り出せるだろう。それなら事故死で片付けられるかもしれないし、他の死に方に比べれば、比較的後処理も楽だろう。死体を見つけ出すのは大変そうだが、血の海よりはマシだ。


ということで、めでたく私の死に方が決定した。遅れた時間を取り戻すかのように足早に学校近くの川へと向かう。別に海でもよかったのだけど、海まで行くのにはここからだと歩いたら一時間はかかってしまう。わざわざそんな所に行くのも不自然極まりない。よって、川が選ばれた。

まぁその川は結構大きいし、今は雨が降っているので水位も高くなっているだろう。水泳選手ならともかく、カナヅチの私には絶対脱出できない迷路のようなものだろう。

地面がぬかるんでいたため、滑って川に落ち、流れが速かったため、川から出られずに、そのまま帰らぬ人になった。そんな自然な流れで行けるだろう。警察も事故と処理してくれるだろうし、報道でも雨が強い日は川などに近づくなと注意喚起が行われるだろう。

少しでも事故死が減るといいな。



そんなことを考えている内に、目的地に着いた。

川は思惑通り水位がいつもよりも高くなっている。これはちょっと予想してなかったけど、今日の川はいつも以上にゴミが流されているような気がする。昨日下見に来た時は、水が少しだけ濁っている程度でゴミなどはほとんど流れてなかったのに。やっぱり私にはゴミを近づける力があるのだろう。

流石に抵抗があって一度は足を止めたものの、私自身ゴミみたいな存在だし、別にいいかと思い直して、また歩き出すことが出来た。


よかった。思い直すことが出来て。ここで死ななかったら本当にゴミになってしまう。それだけは絶対阻止しなければ。と、思ってみて、ふと不思議に思う。私自身ゴミみたいな存在だと自覚しているのに、なんで本当のゴミになりたくないのだろうか。ほんの少しだけ違和感を感じたが、もうどうでもよくなった。


川へと近づき、ただ添えられてるだけのようなロープに手をかける。体を前に倒して、後は手を離して軽く地面を蹴るだけだ。それで、私は開放されるんだ。そう思うと心が軽い。同時に少しだけ怖い。でも、我慢しなくちゃ。あともう少しだから。


最後に、正直者が報われない世界にさよならをして、水面へと向かった。


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