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星の降る日、君に出会った  作者: 吉川 青
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一話 これまでの人生

この通学路を通るのも今日で最後か。一応そう思ってみたが、名残惜しさを微塵も感じないため、さっさと学校へと向かう。でも、今日は雨が降っているので、なかなか早くは歩けない。卒業式だというのに、気の利かない神だな。


思い返してみれば、中学校三年間で色々な経験をした。初めての定期テストや小学校よりも本格的な学校行事やいじめ。集団の力を思い知ったっけ。つい最近のことなのき、妙に懐かしい。あまり良い思い出がないけど。


いつもならもう少し中学生がいるはずの通学路。でも、今日は卒業式だから、一・二年生はもうとっくに登校しているのだろう。普段と違う光景に若干不安になるが、気にせずに歩く。こういう時にスマホがあると便利だろうが、私には買い与えられてないし、不必要なものだから、今日の日付などを確認するすべがない。



仕方なくそのまま歩き続けると、中学校が見えた。校門の前には家族や友達と写真を撮っている同級生の姿がある。

この雨の中ご苦労なことで。

と、皮肉に思いつつ、楽しそうな姿を横目に校舎のなかへと進んだ。



式は、若干雨の音で話し声が聞きにくいなどのことはあったものの、だいたい滞りなく進み、終わった。これで無事卒業だ。

短いようで長かった中学校三年間。これで義務教育は終了だ。私の長い人生も、今日で終わりにしてやる。


私は、別に死にたいわけではない。ただ、これから迎える人生を歩むくらいなら、死んでやるというだけだ。

私の親は異常だ。アイツらを親だと思いたくないほどに。

まず、私の母,父二人はとも頭が悪い。二人とも同じ偏差値の低い高校に入学し、ギリギリで卒業した。私は二人が高校生の時に出来た子供だ。

偏差値の低い高校に行く人が皆馬鹿だと言いたい訳ではない。色々な事情でその高校に行く人だっているだろう。でも、二人は頭が悪い正真正銘の馬鹿だ。

二人とも馬鹿だから、中絶という選択肢はなく、なんとなくで子供を産んだそうだ。

もちろん親、私の祖父母にあたる人達からは、猛反対されたらしい。そんな両親に嫌気がさして、二人は一緒に家を出たそうだ。


まぁこれは母にあたる女に聞いた話だから、どこまでが真実なのかわからない。どうせ、産むと言って聞かない二人に対して、痺れを切らして勘当されたのだろうと私は思っている。祖父母に会ったことがないので、真実を知る術がない。でも、勘当したのは正解だと思う。どうせ二人のことだ。それまで散々迷惑をかけてきたのだろうし。


そんな馬鹿な二人のもとに生まれた子供は、順調に育つはずもなく、悉く成長を邪魔された。ここまで生き延びることができたのも、奇跡のようなものだ。冗談抜きで。


そして今、二人は私のことを金としか思ってないようだ。私は高校には行けない。今時中卒となるのだ。その時点でかなりやばいのだが、その先がもっとやばい。夜の仕事をさせられる予定なのだ。そして、そこで得た給料を全額親である二人に渡さないといけない。………本当に馬鹿だ。アイツらは。

夜の仕事なんて、こんなちんちくりんには絶対向いてない。それに、この仕事の寿命は短い。二十代じゃなくなる頃には限界を迎えるだろう。その先稼げなくなったらどうするつもりなのだろう。本当に何も考えてないのだろう。


だから私は死ぬ。親の思い通りにならないように。

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