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お疲れ様の小休止

少し短めです

 限界を超え、壁を破り、突き進んだ先に見えた景色。

 ジュエルローズだけでなく、色とりどりの薔薇が咲き誇る薔薇園。


「こんな遠くにあったなんて……道理でほとんどの人が到達できないわけです」


 心美は仰向けに転がり、両手両足を大の字に投げ出して天を仰いだ。

 限界の壁を突き破った心美の瞳がどれほどの距離を移動したのかは正確には分からない。

 しかし、心美はまるでジェットコースターに乗っているのではないかと錯覚するほどの視界の移り変わりを体感した。


 そう感じるほどの速さで視点を動かしてようやく見つけた薔薇の園。

 よほど多を相手取る長期戦闘に自信のある者たちか、心美と同様に逃走において絶対の自信がある者でなければたどり着くことは無いと言わしめるその秘境ぶり、ジュエルローズの希少性に合点がいく。


「ユキ、スカー。お疲れさまです。あなたたちがいてくれたおかげで本当に助かりました」


 心美が明確な危険に身をさらして、これまでにない過酷な状況で立ち回ったのはこれが初めてだ。

 どれだけ冷静を装っても本当は怖かった。とても心細かった。


 準備も念入りに行った。しっかり下調べもして自分の力を最大限活かせるように計画し臨んだ。

 それでも想定外の出来事に苦しめられた。

 こればかりは経験がものをいうが、やや見通しが甘かったと言わざるを得ない。


 だが、傍には仲間がいたから折れずにここまでこれた。

 一人だけならきっとここに到達することはなかっただろう。


「ああ、瞳が開いていないのですか。これではあなたたちがなんて言っているのか分かりませんね。……ふふ、くすぐったいですよ」


 心美はこの厳しい試練を共に乗り越えた仲間に改めて感謝の気持ちを伝えるが、二匹のペットから聞こえてくるのは鳴き声のみ。

 心が見えていないことに気付き瞳を確認してみると、力なく閉じ赤く汚れた瞳の球がぐったりと転がっていた。


 これまで己の意思で開閉できていた瞳がまったく動かせず、心を読めなければ何と言っているか分からないと自嘲気味に嗤うと、ユキとスカーが心美の身体に擦り寄り始めた。

 もぞもぞと動く彼女らの柔らかい体毛が心美の腕や足にくすぐりを与える。


(お疲れ様)

(……頑張ったね)


「っ? ありがとう」


 ユキとスカーは心美に伝わらなくても、彼女をいたわる言葉を心に浮かべていた。

 相変わらず開くことのない瞳。

 たとえ届いていなくとも構わないと思っていたが、心美はそれが分かっているかのように顔を綻ばせている。


「疲れましたね……なんだか瞼も重たくなってきましたし。身体を動かすのも億劫なので少し休むとしましょうか」


 極度の緊張状態から解放され、蓄積された肉体と精神の疲労は一気に押し寄せる。

 力を酷使して閉じた瞳のように、心美の顔にある二つの瞳もゆっくりと閉じた。

 やがて規則正しい寝息を立て始めた心美に二匹も続く。

 ユキは心美のお腹に座り、スカーは心美の左脇を枕にするように丸くなる。


 激しい逃走劇を繰り広げた彼女達は、仲睦まじく安息を謳歌するのだった。


ココミちゃんのペット達のポジショニングは私のリアルペットのお猫様が一緒に寝てくれる時に陣取る場所を参考にさせて頂きました

特に脇を枕にしてすぴーすぴー言うのがめっちゃかわいくて……!

皆様のペットの添い寝ポジション、感想でお待ちしてます……!

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