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ローリスクノーリターン→ハイリスクハイリターン?

「ユキ、スカー。最後の材料を探すのは少し遠出になる予定だけどあなたたちはどうしますか? 私と一緒に来るか、ここでお留守番するか。私は一緒に来てほしいと思っていますが……無理強いするつもりはないので選んでください」


(私はもちろん行くよ! お留守番なんてつまんないもん!)


(私も行こうかな……。皆行くならついてく……)


 心美はユキとスカーに同行の有無を尋ねる。

 ユキは聞くまでもなく参加。

 スカーは自分だけ留守番になるくらいならといった判断だ。


(確か見つけないといけないのはあと一つだったよね? 何だっけ?)


「はい、いい質問ですねユキちゃん。我々が探さないといけないのは通称宝石の薔薇。ジュエルローズです。そのまんまですね」


(あー、なんかキラキラしてたやつだよね)


(私は知らない……けどなんか好きそう……)


 一度心美と一緒に図鑑を見て軽くではあるが確認済みのユキは、思い出して抜けたような声を上げる。

 一方その時まだ心美のペットの仲間入りを果たしていないスカーは存じてないが、その名前の響きから本能的に好感が持てるのか目を輝かせた。


(でも何で遠出するの? あの森に全部あるって言ってなかったっけ?)


「全部あるとは言ってませんよ。取れる可能性があるだけです。そして、あの森でジュエルローズを見つけられる可能性はゼロではありませんが限りなく低いですね」


 心美がルミナスの心を読んで森で取れる物を確認した際にそこにジュエルローズも並べられていた。

 しかし、それは客星草やポルテモ草などの必ず分布しているものと違って、運が良ければお目にかかれるかもしれないという意味合いでだ。


 ルミナスも可能性はあるとだけ口にしたが必ず見つけられるとは明言していない。

 これまでにも千里眼を多用して広範囲を見てきたがそれらしきものはまだ見ておらず、自分の力にそこそこの自信が生まれ始めている心美は、その力を以てして見つかる可能性は限りなく低いだろうと踏んでいる。


「そもそもジュエルローズは特定の場所でしか咲かないと噂される幻の花です。それがなぜかあのあたりの森でも見かけることが稀にあるというだけで、必ずしも咲くというわけではない。なら、その特定の場所に取りに行く方がいいでしょう?」


(おおー、確かに! 今なら割とすいすい移動できるもんね)


(でも……変じゃない? 取れる場所が決まってるのに何で幻なの? 場所が分かってるならたくさんの取られて売られてんるじゃないの?)


「スカーの疑問は尤もですね。場所が割れているなら人が訪れて採取し、市場に流通するはず。私もそう思ってました」


 特定の場所に咲くという性質を持つジュエルローズの資料を閲覧して、心美も花がなる場所を知っている。

 それと同時に、スカーが抱いた疑念も同様に感じていたが、詳しい説明を読んでその疑問は解消された。


「ジュエルローズの咲く所は安全地帯らしいのですが、そこに至るまでは非常に危険なようです。同じ森、同じ大自然とはいえあなたたちを拾った森とは大違いです」


 ジュエルローズは小さな薔薇園のような美しく綺麗な地帯に花を咲かせる。

 それだけならば多くの人がそこを訪れて宝石の薔薇を手にして帰って行くだろう。


 それができないから幻の名を冠する。

 人々が気軽に訪れることのできない理由がそこにはあった。


「人を餌にする食人植物の巣……とでも言いましょうか。そこへ到達することがそもそも困難。仮にジュエルローズを手にできたとして、無事に帰れなければ何の意味もない。だから大抵の人は可能性は低いけど安全な方に賭ける」


 食人植物の巣。

 その言葉を聞いてユキとスカーはその表情を青ざめさせた。


(そんな危ないところ行くのやめようよ!)


(やっぱ行くのやめようかな……?)


 そんな危険なところに赴こうとしている心美を止めたいと声を上げるユキ。

 一度はついていくと言ったものの、このような話を聞かされて気持ちが変わりかけているスカー。


 しかし、心美も無策でこのようなことを言っている訳ではない。

 ハイリスクハイリターンを選択するだけの自信があっての事だ。


「ユキとスカーの力が必要です。とても頼りにしています。だから私と……私の瞳を信じてください。いざとなったら切り札も使いますので……」


 心美の強い意志。用意された切り札。

 そして寄せられる信頼。


 それらの要素が一度傾いた気持ちの天秤を強引に引き戻す。


(分かったよ。危なくなったら私がまた助けてあげる)


(……やむなし)


「二人とも、ありがとうございます」


 心美がこうして二人に共に来てほしいと思うのは、頼りにしているから。

 ただ、ジュエルローズの咲く安全地帯まで千里眼テレポートするだけなら単独行動でも構わないのに、心美はそれをためらった。

 協力が必要だと感じた。


 心美にとってこれは依頼。頼まれごと。

 期限の指定はないがなるべく早めにやり遂げたいこと。


 仮に一人でやらなければいけないとしても、心美はそのまま敢行しただろう。

 だからこそ二人の協力をこぎつけることができて、心底安心したのだった。


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