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心を読む、見る側の自覚

 あれから数日。

 ルミナスの時間があるときに文字の読み書きを習う心美だったが、努力の結果が実り文字が読めるようになった。


 書く方面はこれまでに扱うことのなかった全く知識にない文字ということもあり少し苦戦しているが、読みの方はほぼ完璧になったと言っても過言ではない。

 これも言語を学ぶ上での十分な下地があった賜物だろう。


「お疲れさまでした。もう少し時間がかかると思っていましたがココミさんが頑張ってくれたので予想より早く終わりました」


「ルミナスさんの教え方がよかったからですよ」


「そう言ってもらえると嬉しいです」


「これでようやく借りてきた本も読めそうです」


「そういえば文字が読めないことが発覚したのは読書をしようとしたからでしたね。読み書きができないままでは不便でしょうから、この機に習得できて良かったですね」


 話すことも聞くこともできる。心を読むこともできる。


 それでも書く、読むと言った技能はこれから必要になってくる。

 一人ではどうにもできなかったかもしれないことだが、レヴィン家に保護されている間に問題を解決できたのは心美にとって喜ばしいことだろう。


「本当にありがとうございました。このお礼はいつか必ずさせて頂きますので」


「あ、それなら一つお聞きしてもいいですか?」


「はい、何でしょう? 私にお答えできるなら……」


「では……ニアさんと何かありました?」


 困った事があれば頼ってほしいとの言葉があったとはいえ、ルミナスも時間を割いて教えてくれていた。

 そのお礼に何かと思ったが現状返せるものがない心美は、再度お礼を口にして必ず恩を返す旨を伝える。

 だが、ルミナスはその場で一つ質問をすることでその権利を使った。


「ニア……というのはあの時私の部屋に服を持ってきてくれた獣人のメイドさんですか……。何かあったかと言われたら何もないと思いますが」


「そうですか。少し前から思いつめた様子でして……こう言ってしまうと申し訳ないのですが、ココミさんと何かあったのではないかと」


 心美はその名を聞いて今着ているドレスをひらりと揺らす。

 ニアは初めて見た獣人。とても驚いたためよく覚えている。

 しかしそのメイドの少女の様子がおかしく、その原因が心美との邂逅にあるのではないか。暗にそう言われている。


「ニアさんと会ったのはオリバーさんとお話しする前に呼びに来て案内してもらった時だけです。それ以外では会っていません」


「そう……ですか」


「ですが歩いている途中で気になることを言っていたような……」


 心美は記憶の引き出しを開け、あの時の会話を思い出す。

 会話が無くなる直前、ニアは何を言ってどんな反応を示したのかを探す。


(あの時は踏み込むべきではないと心を見るのを止めたけど……もしかしたらその先に求めているものがあるのかもしれないわね。それにどちらかというと私は見る側……こんな風に見られるのは嫌、だから……!)


 心美自身ニアに後ろめたいことをしたということはないが、こうしてルミナスに疑いの目を向けられているのも心苦しい。

 それならばニアが抱えているものを暴いて、取っ払ってしまおう。

 そう決めた心美は今後の方針を固める。


「ルミナスさん、私はニアさんと話してみようと思います。それで彼女が思い悩む原因を突き止められるなら、私は力を惜しみません」


 力を惜しまない。それはただ尽力するという意味ではなく文字通りの意味で。

 そんな強い意志を前にルミナスはこれ以上をかける言葉を持ち合わせておらず、黙って頷くのみだった。


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