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強制参加

 心美が目的を告げ、ユキは相変わらずにこにこと嬉しそうにしている。

 まだグレイシアに行くという旨を告げただけなのだが、凍り付いたように固まったアオバ達の姿を見て心美は申し訳ないと思いつつも、これはもう決定事項なのだという諦めを覚えていた。


 スカーはいつも通りと言ってしまえばそれまでだが、アオバは己の置かれる環境への不安などで顔を青くしている。


「雪の国って言うからには寒いんだよね。そんなに暖かそうな服を買ってきてるからかなり……。そんなところにボクを連れていっても役に立たないよ。ましてやドラゴンなんて……」


「私もそれは分かっています。あなたが万全な状態を保てないことも……。その上であなたの存在が必要となるかもしれない」


 アオバの特性は植物のそれと何ら変わらない。

 暑すぎたり寒すぎたりする環境は彼女にとっては毒なのだ。

 それでも彼女の存在を必要とするのは、心美自身の自己評価によるものだ。


「ドラゴンと戦えるかもしれないと心躍らせているユキには申し訳ありませんが、あくまでも戦闘はサブプランです。メインは戦闘無しでいく事を考えてます。戦わないに越したことはありませんからね」


(え~。何で~?)


「フロストドラゴンに限らず、ドラゴンという種族は一定期間で牙や鱗が生え変わるみたいなので、運よく時期が合えば何事もなく入手できるかもしれません。


「だったらボクは――――」


「言ったでしょう? あくまでもそれはメインプランにすぎません。メインが確実ならそれに越したことはありませんが、楽観はできません。だからこそサブプランがあるんですよ」


 戦闘狂になりつつあるユキと違って、ある程度戦うことも視野に入れているとはいえ心美の根底にあるものは何も変わっていない。

 安全第一、戦闘行為というものを避けられるのなら避けるに越したことはない。


 フロストドラゴンの牙と鱗の入手に関しても、これらの情報を得て真っ先に組んだのは、戦闘行為を避けた上で、目的の物を回収してさっさととんずらしてしまうメインプランだ。

 だが、それが滞りなく遂行される保証はない。

 そうなってしまったらユキの望む状態、すなわち戦闘が起こるということも考えられる。


 そうなったときのサブプランにはアオバが必要不可欠になる、心美はそう考えている。


「本当だったらお留守番させてあげたい気持ちは山々だけれど、何が起こるか分からない以上あなたという戦力は置いていけないわ」


「そこまで言うなら分かりましたよー。その代わりボクの働きには期待しないでよね」


「ええ、いてくれるだけでも助かります」


 たとえ万全な状態でなくとも、いるといないでは戦力が大きく変わる。

 そのため万が一の保険として彼女を置いていくわけにはいかない。

 その考えを真剣な目で語る心美に、自分の事情で不参加にすることはできないのだと観念した。


 しかしアオバは置かれる環境が環境なのだから普段のような働きはできないと保険をかける。

 心美はそれで構わないと微笑んで、グレイシアへ全員強制参加とするのだった。


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