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ぶつからなきゃ分からない事もある。

 さて、改めて依頼の内容と魔銃の説明を終えた。キョウカにとっては二度目だが、復習にはちょうど良いだろう。

 早速、今から魔銃を作らないといけないわけで、お手本のつもりで、ノブカツが魔銃を作る。


「よく見とけよ、お前ら」


 そう言うと、まずは材料。魔法を放つ以上、その魔銃自体も魔法に強い素材を使わないといけない。その上、ムーブイーターは麻痺のみとはいえ、雷属性の魔法を使っている。つまり、雷に強い素材を使わないといけない。


「まず、部品の型取りだが……まず銃身の内部はサンダーバードの骨を使う」


 近くの箱からそれを取り出し、机の上に置いた。ナイフを取り出し、細めの茶色い骨を、まずはハンドガン用の長さに切断する。


「で、これを縦にパックリ割って、銃口にするため、空洞になるように掘る。指切らないように注意しろよ」


 今度は彫刻刀を取り出し、空洞になるようにガリガリと削る。

 半円で内側が削れ、半分になった銃口が完成した。


「で、この溝の部分。ここに魔法語を削る。詠唱する文は『対象者的行動(被弾者の動きよ)雷鳴麻痺(雷の裁きで静止しろ)』な」

「え、こ、このせまいところに、それをほるんですか……?」

「そういう事。それも、魔力を込めてな」


 そう言うと、ノブカツは彫刻刀を置き、人差し指と中指を揃えて立てる。その先端に、魔力を集中させた。


「『刻魔言(刻まれし呪文よ)我的言霊従者(我が言葉に乗り)条件反射(合図に応じて魔を放て)』」


 さらに魔法を唱えながら、指先から微妙に出ている魔力の刃で、骨に文字が刻まれて行く。


「ふぅ……終わったら、銃口を閉じる。糊は俺がブレンドした雷魔法用のもん使う」


 近くにある器に手を伸ばし、ペタペタと塗りたくると、接着面をピッタリ接合した。


「これで銃口終わりな」

「す、すごいさぎょうですね……」

「別の呪文で、別の呪文を彫るだけでも大変ですよねこれ」

「そうだな。この後は、銃口を包む型が必要になるんだけど、一先ずこれが出来ないと魔銃にならないから。この後に、魔力をグリップ部分に溜め込んで、他のパーツと組み合わせて形作るのが基本な。……ま、これやるにはお前ら二人とも魔法がまともに使えないと話にならないわけだが」


 別の魔法で別の魔法の文言を彫る所が最難関だ。何より恐ろしいのが、目の前の男は、それを汗一つかかずにやってみせた事だろう。


「そんなわけで、キョウカ。お前は引き続き魔法の修行」

「は、はい! ……え、キョウだけ、ですか……?」

「サイゾウはまず店の掃除と雑用」

「ええっ⁉︎」

「フッ」


 その指示を聞いて、キョウカは勝ち誇ったようにほくそ笑み、サイゾウは驚いたような声を漏らす。やはり、先輩と後輩、ということだろうか?


「一時間経ったら、今度はキョウカと交代。雑用はキョウカがやって、サイゾウは魔銃造り」

「よっしゃ! 了解です!」

「な、なんでですかー⁉︎」


 今度は逆だった。後輩が次のステージに行っているのを見て、あんぐりと口を開けるキョウカと、それをドヤ顔で見下ろすサイゾウ。もちろん、喧嘩になった。


「むー! ムカつく! せんぱいをたてなさい!」

「後輩より能力がない先輩を?」

「むっきー!」

「お、やるか?」

「落ち着いたらちゃんと、仕事しろよお前ら。あと、喧嘩に刃物は使わないように」


 忠告だけして止めもしないノブカツは、立ち上がるとギャンブル場に向かった。


 ×××


「おいおい、良いのかよコラ。店空けてこんなとこにいて」


 賭場では、ノブカツが情報屋のアランとブラックジャックをしていた。


「良いんだよ。それより……こう、何? 今日こそ勝てる気がするからな

「お二人様、覚悟はよろしいですか?」

「「スタンド」」


 直後、元締めが出したのは17。逆にノブカツは20、アランは16だ。


「ああああ‼︎ ま、マジかコラ⁉︎」

「っしゃオラァッ‼︎ 見たか? 言ったべ? 今日は俺ついてんだよ」

「お見事。では、次のゲームに移らせていただきます」


 コインの移動をスイスイっと動かし、新しくトランプが配られる。


「でもよ、子供だけなんだろ? 強盗とか来たらやべーんじゃねーのかコラ」

「平気だろ。片方はそれなりに頭もグルグル回るし、戦うだけの力は持ってるから」

「まぁそうかもしんねーけどよ……」

「いかが致します?」

「「ヒット」」


 一々、ハモらないとブラックジャックも出来ないのかこいつら、とディーラーは思いながら、二人にカードを渡す。


「けど、ガキの喧嘩も侮れねーぞ。何せ、何をしでかすかわかんねーんだコラ。前に冒険者見習いやってた時も、俺とお前で喧嘩してリーダーの肛門に木刀刺しちゃったじゃん」

「ああ、あったなそんな事。てか何でそうなったんだっけ?」

「覚えてねえよコラ」

「いかが致します?」

「「ヒッタンド」」

「え?」

「あ、俺がヒット」

「俺がスタンド」


 別々の指示がハモり、二人のセリフがブレンドしてしまったが、言い直す。

 二人は昔、同じ冒険者パーティに所属していた。ガキの頃から見習いとして参加し、徐々に力をつけていき、主力にまでのし上がった。


「ま、あいつらにそんな気概ねえから安心しろよ。キョウカは一週間前に比べて、不思議と気性が荒くなったけど、それでもまだまだ大人しい方だ」

「不思議と、ねぇ……誰の影響だろうなコラ」

「ノブカツ様、スタンドでよろしいので?」

「よろしいですよ」


 ディーラーは20。アランも20。しかし、ノブカツは21だ。


「オラァッ‼︎ やっぱ俺今日きてるわ! いや、むしろ俺が行っちゃってんのかな? 幸運の女神の膝枕へ!」

「いーなー畜生! 俺は幸運の女神のおっぱいに行きたいコラ!」

「じゃあ、私はお尻で。次のゲームに参りましょう」


 シャッフルし、カードを配るディーラーを前にして、さらに話を続けた。


「でも、あのキョウカって子……俺の見立てだと、かなりのお転婆だぞコラ」

「ああ?」

「コラ、例の兄貴が攫われたって話」

「コラ、を、ほら、みたいに言ってんじゃねーよ」

「あれもあの子が行きたいって言ったんだろ?」

「まぁな」

「そういうのって、よっぽど行動力がないと無理だろコラ。それこそ、殴り合いになっても一歩も引かない度胸と力が」


 配られたトランプに目を通す。


「お二人様、いかが致しますか?」

「「ヒット」」


 カードをもらいつつ、また会話に戻った。


「まぁな。結構、負けん気も強いし、命のやり取りになるようなことになったら心配だが」

「だろ?」

「でも、基本的には二人とも良い奴だし、大丈夫だろ」


 キョウカだって、基本的には他人のために動ける子だし、サイゾウは自分の被弾より巻き込んだ店を気遣える奴だ。平気だと思う。


「俺は、基本的に喧嘩は推奨派なんだよ。平和主義とか言って、ガキの喧嘩を止める奴もいるけどな」

「と言うと?」

「殴り合いでも言い合いでも、基本的には本音でぶつかんないと何も解決しないからな。……俺達もそうだったろ?」

「……まぁな」

「お二方?」

「「ヒット」」


 今でこそ二人でギャンブルをしているが、昔はよく喧嘩をしたものだ。プライドが高い奴ほど、喧嘩の数は多くなる。

 何度もぶつかり合った。何度もお互いの顔面を殴った。命が危ないとなれば、パーティメンバーの誰かが仲裁に入ったが、その結果、こうして未だに関係が繋がっている。


「ま、何とかなるだろ。店をダメにするような奴らじゃないし」

「……そうかよ」

「お二方?」

「「スタンド」」


 ディーラーは19、ノブカツは19、そしてアランは23。


「うがー! クソー‼︎」

「っしゃ、マジで今日の俺強い!」

「おめでとうございます。さ、次のゲームは参りましょう」


 その言葉が出るということは、そろそろディーラーが本気を出してくる頃だ。最初だけ勝たせて、後から大負けさせる常套手段。……逆にここまで負けているアランがすごいのだが。

 さて、これからどうするか。もちろん勝負だ。どうせやるなら、強い時の相手に勝たないと意味がない。


「さ、次行くぞオラァッ‼︎」

「行くぜコラ!」

「地獄に行ったらどうです?」

「ばーか、今度こそ勝つんだよ俺は!」

「地獄行きになるのはディーラーの方だ!」

「いえ、あなたです」


 ノブカツの肩に添えられた手に力が入る。徐々にミシミシと軋む音がする。


「んだよ。ってぇな……あ」

「ふふ、良いご身分ですね?」

「げっ……ゆ、ユリエ……」

「お、リエ。久しぶりだなコラ」

「わっ……あ、あああアランさん……! ご無沙汰、しております……!」


 相変わらずヤンキーだの何だのが大好きなユリユリ姉妹の妹は、そのヤンキーまんまな見た目をしているアランにゾッコンだった。


「あの、アランさんはもう……冒険者はなさらないんですか?」

「あん? ……あーどうだろうなコラ。まぁ、気が向いたらやる事もあるかもだが……今は、そいつを放っておけねえからな」


 その視線の先にはノブカツがいる。


「なんだよ、放っておけねえって。俺のこと好きなの?」

「気持ち悪ぃこと言ってんなまじ殺すぞコラ」

「ほんとマジブチ殺しますよ、クソカツさん」

「クシカツみたいに言うんじゃねえよ……」


 なので、なんだかんだ親友のように毎度、アランと喧嘩をするノブカツが割と嫌いだった。その上、ノブカツは最近、天使のような幼女も従業員にしている。本当に自分好みの子ばかり取られて、正直、腹立たしかった。


「で、なんか用か?」

「そ、そうだ。あなた、また子供達を置いてこんな所で……大変ですよ? あなたのお店」

「はぁ?」

「見てもらった方が早いでしょう。早く来なさい」

「ああ、これ終わったらね。今、すごく調子良いの」


 直後、ドシュッとノブカツの背中に黄色いビームが突き刺さる。言うまでもなく、ムーブイーターだ。

 ドシャッと身体の力が抜けるノブカツの身体を、ユリエは担ぎ上げた。


「持って来て正解でしたね」

「て、てへぇ……ひほほ、ふぁひゅう……」


 舌が痺れて上手く喋れないので訳すと「て、テメェ……人の、魔銃……」である。

 その情けない男の姿を見ながら、アランは笑いながら言った。


「おいおい、こんな美人に運んでもらえるなんて幸せもんだなお前コラ」

「ふぁふぁへ(黙れ)」

「も、もう……美人だなんて……う、嬉しいけどやめてください、アランさん……」

「事実だ。またなんか情報欲しけりゃ、うちに来なよコラ」

「は、はい。お邪魔させていただきます……!」


 それだけ言って、ダメ男を担いだまま賭場を出て行った。


 ×××


「おいおい……またスゲェ暴れたなオイ……」


 店の中はかなり荒れていた。理由は、お互いに育ちの悪さの指摘から始まり、意地の張り合いになり、取っ組み合いとなったそうだ。

 とうとう魔力を使っての喧嘩に発展する……と、なった時に、仕事をサボってキョウカを愛でに来た双子のうち、ユリノが止めてユリエはノブカツを呼びに来たらしい。


「全く……お前らなんでそんな初対面で仲悪くなれるんだよ。バカの世界チャンピオンなの? それとも意地を張らないと死んじゃう生き物なの?」


 そう言うノブカツは、うつ伏せに薙ぎ倒されている上に、背中をユリノとユリエに踏み付けられていた。

 思わずその姿を見て、サイゾウは引き気味に聞いた。


「あの……ノブカツさんに何か恨みでもあるんですか?」

「借金、子供の世話、店のものを差し押さえさせないための面倒な裏工作」

「数え切れない程」

「な、なるほど……」


 そのサイゾウの視線が、徐々に軽蔑に近いものへと変わって行く。

 だが、その子供二人も正座させられているので人のことは言えない。


「まったく……あなたがちゃんと見ていないからです」

「保護者なんでしょう?」

「うるせえ。別に、俺ぁこいつらが暴れたことに関しちゃ怒ってねえよ。少ししか」

「怒ってるんじゃないですか」

「あなたにも責任があることをお忘れなく」

「だから、うるせえ」


 そう言いつつノブカツはとりあえず解放される。普通、少なくとも一時間は動きを止められるムーブイーターを受けてこうも早くピンピンしている回復の速さ普通ではない。

 首をコキコキ鳴らしながら、二人に言った。


「ま、やっちまったもんは仕方ねえ。幸い、機材に異常はねえみてえだし、大した怪我もないみたいだし」

「魔力も使い始めてましたけどね」


 そればっかりは、本当にギリギリセーフだったと言えるだろう。一々、嫌味に反応することもなく、正座している二人を見下ろした。


「……にしても、お前らもう少し加減ってもんを知ってると思ってたが」

「「だ、だってこの人が!」」

「はい。反省の色も無しね」


 お互いを指さす二人だが、その一言で手を引っ込める。しかし、その表情はやはりお互いが気に食わないようだ。

 ちゃんと見ていなかったノブカツも悪いが、一番悪いのは、やはり物を壊すほどの喧嘩を始めた二人である。

 一先ず、店内を見渡す。ざっと見たところ、被害を受けたのは材料だけのようだ。


「どうするんですか? 言っておくけど、ギルドは責任持ちませんよ」

「分かってる。責任を取るのが子を預かってる大人の仕事だろ。勿論、教育も兼ねてな」


 そう言うと、ノブカツは二人を真っ直ぐ見据えて言った。


「店にある武器、好きなもん持っていって良い。お前らがダメにした素材、自分達で採ってこい」

「「「「え……?」」」」


 まさかの罰則に、四人とも声を漏らすしかなかった。



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