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姉と妹

さて、ベッキー・ベティの今日の作戦が始まった。

指揮を執るのはもちろんココロ。

遠く離れた狙撃位置から、無線を使って前衛組に指示をする。


……よし、私の痺れ爆弾も、上手く活用してくれたみたい。


戦闘要員でもない私が何故こんなところにいるのかって?

それは……ギルドマスターとして戦況を把握するためであって……。

妹のココロが心配だとか、そういうことは……あるんだけれど。


私はオペラグラスを持ってココロ、チオリの後衛組と、ユイ、ステイシーの前衛組を交互に観る。


戦況は順調だった。そう、安全地帯といわれる後衛組のココロとチオリの元にヘビ型モンスター、クロコダイルスネイクが接近するまでは……。


「ココロさん!危ない!」

チオリが叫んだときにはもう遅かった。クロコダイルスネイクは、伏せた姿勢で狙撃をしていたココロの脚に襲い掛かった。……危ない!!!

「え!?きゃあ!!痛い!!助けて!!助けて姉さん!!」



「え……」

チオリは茫然とした顔をしていた。それはココロも同じだった。

「え、さっきのモンスターは!?てか、なんでアピーがここにいるの!?」

「……魔法地雷。今頃クロコダイルスネイクさんは、魔法世界のどこかに転送されたわね」

「アピー!!なんで……アピーは前線に出られないんじゃ……はっ!チオリは攻撃を続けて!」

「はい!ココロさん」

「私だってこれくらいは出来るのよ。それに「助けて姉さん」なんて呼ばれたら助けないわけないじゃない」

ココロは顔を真っ赤にした。

「さ、攻撃に戻りなさい」

「はい……」



今回の作戦は大成功。私たちベッキー・ベティは、大量のマッシュルームピッグの殲滅に成功した。

「みんな今日はお疲れ様でした!今回の功績は、ベッキー・ベティとしてもとても大きなものとなったわ!本当にありがとう!」

「マスターの痺れ爆弾のお陰ですよ!」ユイがにこにこしながら言う。

「まあ、うちのギルドは少数精鋭。強いですからね」出前のピザを頬張りながらステイシーが言った。

「このポテトスナックもおいし~」相変わらず呑気なのはチオリだ。

だがココロはずっと黙っていた。


「アピー、あのさ、ちょっと話あるんだけど。外いい?」

「あらココロちゃん。どうしたの?」



私はココロに外に呼び出された。

「なんで……なんでさ……あんなことしたの」

「それはココロちゃんが……」

「あー!もう!そうじゃなくて!それは忘れて!」

きっと「姉さん助けて」と言ってしまったことを恥じているのだろう。


「あのね。ココロ。私ね、ココロが生まれてきてくれたとき、すっごく嬉しかったの」

「…………」ココロは私の顔を見なかった。

「私たちの家ってさ、まあ、ああいう感じだったじゃない?ココロも想像つく歳にはなったかと思うんだけど、ネグレクトされていたのはココロだけじゃなかったの。幼い頃の私は、いつも独りだった」

「……だから?」

「だから、妹ができて私はすごく嬉しかった。育児を全て任せられたって、全然苦痛じゃなかった」

「今更そんな話出してきて、許してもらおうなんて思うつもり?」

「ううん。許してもらえるなんて思ってない。だけどね、純粋に、嬉しかったのよ。ココロが、ココロという存在が、私の近くにいてくれる。それだけで嬉しかったの」

「……っじゃあどうしていなくなったんだよ!!」

「ごめんね。あのときは、私も精神的に不安定だった。謝っても謝り切れない」

「……ちょ、ちょっと!土下座なんてやめてよ!」

「でもね、またこうして、ココロと一緒にいられることが、私は、本当に嬉しくて……命に代えても守りたいって……そう思ったの」


「……別に自分の身くらい自分で守れるようになったよ」

「ふふっ。そうだったわね。ココロはびっくりするくらい強くなった」


「……で、でもさ、今日のことは、ありがとな、姉さん」


おわり

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