寒かった二学期
「うう、寒っ!」
僕は、冬休み前の最後の登校日が終わり、帰ろうと校舎から出ていくと、前から僕を呼ぶ声が聞こえた。
「祐。一緒に帰ろ~」
そう言って校門で待っていたらしい、幼馴染の美樹がこちらに走ってくる。
「いいけど、なんで校門?」
「うーん、なんとなく、かな。とりあえず帰ろ」
「行きたいところでもあったのか?」
「なんとなくだって。いいから帰るよ」
「お、おう」
そう言って、美樹が先立って歩く姿を見て、僕は違和感を覚えた。
「あれ?美樹。手袋どうした?」
「いや。うーん、えーっと、なくしちゃった」
美樹が少し考えて笑いながら僕の質問に答える。
「この寒い時になんでまた」
「ほんとにね、う~さむ」
そう言って美樹が手に息を吐いて温めようとする。
その姿を見て僕は脳内会議を始めた。
(これって、手を繋げるチャンスなんじゃないか?)
(いや、でも嫌がられて、気まずくなるのも嫌だし)
(でもこんなチャンス滅多にないぞ?)
よし行くぞ。ここでやらなきゃ男じゃない。
僕が決死の覚悟で美樹の手を取ろうとしたとき、美樹が振り返り僕の方にに顔を膨らませながら近づいてくる。
「な、何怒ってんだよ。俺が悪かったて」
訳も分からず謝る僕の言葉を、聞いている素振りもなく、近づいてくる美樹の迫力に、目を閉じると、手に優しい温もりを感じて僕は目を開ける。
「…え?」
目を開けると、美樹が顔を膨らましたまま僕の手を握っていた。
「もう、意気地なし。いつまで待たせるのよ」
そう言うと、彼女は顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
「握っといて、今更照れるなよ」
「祐が遅いのが悪いんでしょ!」
「まあ、うん。ごめん」
その言葉を最後に数分にも感じられる静寂が僕達を包む。少しして、僕は重い口を開き言葉を放った。
「…帰るか」
「うん」
さっきまで寒かったのが嘘のように。熱くなった顔を隠しながら僕達は帰っていった。
明けましておめでとうございます。このペースであげていけたらなーって思ってます。
作業時間1時間半