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プロローグ、深蒼の氷は古代の夢を見る。

 また、この夢だ……。

 アタシは毎月、新月の夜に奇妙な夢を見る。

 あるかも知れない前世の記憶なのか、それとも深層心理の具現化なのか……。

 とりあえず言える事は、この夢はもう見飽きたってこと。


 中世ヨーロッパの古城のような所で独りぼっちのアタシは毎日のように黄昏ている。

 数百年も昔みたいなくせに仕事もなく、呆然としている。

 暇人だな、この女。それともどこぞのお嬢様なのか?

 まったくどういう設定なんだか……。

 しかし、その容姿には憧れる。

 ナチュラルな金髪に、蒼色の瞳、真っ赤なドレス、威厳のある姿でありながら、その表情は悲しみに満ちていた。


 そんなある日、2人のバカがやって来た。

 その2人はこの古城に似合わない東洋人、いや日本人だ。


 でも、現代風の軍服を着たその2人と出会ってからの記憶は存在しない。

 いつもここから先のことは忘れてしまう。

 夢だから忘れてしまうのは当然なのに、心が忘れるなって言っている気がする。

 けれど対称的に魂は忘れろと言っている気がする。

 どうやらアタシの心と魂じゃ魂の方が強いらしい。

 心だの魂だのとファンシーだ……って魔法少女の考えるセリフじゃないな。


「あぁ……朝か……」

 午前9時。しかし今日は土曜日、小学校は休みである。

 といっても、今日が平日でも学校なんて行く気はないんだけど。

 いや、待て、そういえば今日から夏休みじゃなかったか?

 ならこれから毎日この時間に起床しても何の問題もないは……それはそれで人間として問題だな。

 ダメ人間にならない内に精神面を鍛えなければ。


「おはようございます、母上」

 布団から起き上がり、居間に居る母上に挨拶をする。

「おはよう、蒼子。寝起きで悪いけどあなたにお客さんよ」

 客?こんな朝から人の家に突撃して来るような人間にはいますぐにでも出て行って欲しいかな。


「おー!エクセレント!!本当に『ワフク』を着ていマスよ!写真は!写真はオーケーデスか!?」

 知らない金髪蒼眼の白人が動物園のパンダか何か可愛い珍獣でも見つけたかのように騒ぎ出したので一発殴っておく。

「ゲボォ!」

 ……誰だ?この外国人は……?

 どことなく紅莉に似ている気がする。というか、この服って前に紅莉が着てなかった?


「あ、あはは……グッドモーニング、アオちゃん」

 どう考えてもバッドなモーニングに紅莉が愛想笑いをしながら挨拶してきた。

 なんなんだ?この展開は?

 意味が分からん……。

 だが、確実に分かるのは1人でも十分なはずのバカが2人もアタシの朝をぶち壊しに来たのだという事だ。

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