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第16話、真紅の炎はまた燃え始めるpart2

 変身したシルヴィアはへし折ったはずの左腕を普通に動かしている。

 『創造つく』ったのか?左腕の骨を

決着ケリをつけさせてもらうぞッ!月宮紅莉ッ!!」


 シルヴィアが2本の剣を投げる。

 高速で円運動しながら飛んでくる剣を両手で捌く、だがそのスキを狙ったシルヴィアが長剣で斬りかかってくるはずだ。

 目がシルヴィアの動きを捉えるより速く、ヤツの思考回路を理解しなければいけない。

 引くことはできない、引けば確実にられるッ!

「白刃取りッ!」

 シルヴィアの動きを完全に読み、長剣を魔法障壁で挟む。

 たった2本の剣だ。軌道と策が読めれば、それに対応できないほどの物量ではない。

 シルヴィアに『破壊』されないうちにその剣を右にずらし、地面に叩きつける。

「なんだとッ!?」

 極限の戸惑いに襲われたシルヴィアの驚愕。

 アンタは、この月宮紅莉を舐めているんだ!!

 その程度の奇策で弄せるような雑魚なんかじゃないッ!


「剣士が剣を投げるのかよ?頭オカシイんじゃないのか!」

 脇腹を渾身の力を込めて蹴り飛ばす。

 蹴り飛ばされたシルヴィアは地面をバウンドする。

 1回、2回、そして3回目に地面と接地する瞬間を目掛けて拳で殴りかかる。

 だが、奴は地面を『破壊』して、穴を利用して遠くへ跳ぶ。

 体勢を整え、異次元から剣を取り出して構える。

「私は剣士などと名乗った覚えはない。私はただの一人の戦士だ、叶えたい願いを持った只の人間だ」

「私にだって叶えたい願いや望みがあるッ!その障害であるアンタは意地でもぶっ飛ばすッ!!」

「愚か者めッ!貴様をその蛮勇ごと切り刻んでくれるッ!!」


 シルヴィアが剣を一文字になぎ払い、剣から放たれた衝撃波が私との間合いを蹂躙しながら向かってくる。障壁で防ぐが、たやすく『破壊』され、その勢いに圧倒されてしまう。

「くっ!」

 いつの間にか背後に回られているシルヴィアが剣を振りかぶる。

「散れッ!!」

 圧倒されたまま『飛行』して、斬撃から逃れる。

「貴様の固有魔法の性質は今のでだいたい理解した。理解した以上、もはやブラウンほど脅威ではない」

「アンタやブラウン(あんなの)のチート能力と一緒にするなよッ!」

 例のごとく、いつの間にか装備していた左腕のマシンガンを発砲してくるシルヴィア。

 弾丸の嵐そのものはレイのものに比べて勢いはない、物理的に高速で推進するただの金属の塊だ。

 今の私なら撃ち落とせる!


 武器を杖に変え、魔法弾の弾幕を張る。

 その弾幕がマシンガンの弾丸を撃ち落とす。

「バカがッ!その程度の砲撃が通用するとでも思っているのかッ!」

 左手1本でマシンガンを構え、右手に長剣を持ったシルヴィアが前傾姿勢になった。

 おそらく、この暴風雨を防いだ私を次にあの剣で斬る算段だろう。

 でもね、こっちだって通用するなんて思ってないさ。

 あのブラウンにだって防がれた、ならシルヴィアも同様に防いでくるだろうって推理できる。

 そう、『同様に』ね。


「消し飛べッ!」

 マシンガンを投げ捨て、両手で長剣を大きく振りかぶり、そのまま振り下ろして弾幕を『破壊』し尽くす。鉄の塊である長剣の刀身が割れる、それほどの力を込め、シルヴィアは振り下ろした。

 そう、この瞬間を待っていたんだ!

 こっちの攻撃に対処する暇が存在しないスキだらけのこの瞬間をッ!!

超音速絶空衝撃拳スーパーソニックインパクト!!」

 武器を手甲に変え、超音速で突撃する。

 拳先に全エネルギーを込めてそのまま突き進む、空気の層をぶち抜く感覚が全身を襲う。

 ドス黒い紅が拳に宿る。これが私の今の私の全力全開、ゆえに一撃必倒でなければ困る。

 倒せ、敵を倒せ。守れ、友を守れ。

 気に食わないモノ全てを屠り、大切なモノ全てを救えッ!!!!


「貴様なんかに負けるわけにはいかない、そう誓ったからなッ!」

 剣を斜めに掲げ、守りの体勢のシルヴィアに躊躇なく殴打する。

 空気そのものを切り裂き、シルヴィアの魔法障壁も引き裂く。

 拳が剣にぶつかり、轟音のような衝撃音が周囲に広がる。

「アンタの誓いなんざ知るか!!私はアンタたちみたいな存在を認められないんだッ!!」

 防戦を強いられているシルヴィアが歯痒さのために舌打をしている。

 アンタの能力の特性はもう知ってる、攻撃に特化している分、防御に向いてないってね!!

「貫けぇぇえええ!!」

 剣にヒビが入り、もうすぐ粉砕できるところで、私を金色の光が襲った。


「ガフッ」

 何が起きたのか理解できない私の脳にかすれた声が入る。

「……ウチを舐めるな……」

 虫の息だと思っていたレイが狙撃銃で撃たれた。

 そしてそこをシルヴィアがつめ、顔面に膝が綺麗に入り、そして思いっきり蹴飛ばされた。



 はぁ……はぁ……

 クソ、もうすぐ勝てたのに……もうすぐ、このクソアマを屈服させられたのに……


「どうした?粋がっていたわりにはこの程度か」

「負けかけていた奴がそれを言うのか?」

「貴様が既存の測定基準の外側にいることは認めよう。だが、本気を出す前にこの様ではな」

 ヒビの入っている剣を異次元ポケットに収納した。

 やはり、このクソアマは奥の手か何かを残していたらしい。


 追い討ちのように腹部をサッカーのように蹴られる。

 蹴りも非常に重い、蹴り方が素人のそれじゃない。

「何が貴様をそこまでたらしめているのかは知らんが、調子に乗るなよ。その程度で何が出来る?何もできないではないか。なのに貴様は何がしたい?」

「わ、私は……ただ友達と何でもない普通の日常をバカみたいに楽しみたいだけなんだ……だから、その普通の日常をぶち壊すアンタらを認めないし許さない……絶対にッ!!」

 倒れていた私の胸倉をつかみ、シルヴィアが逆鱗に触れられたかのように切れた。



「『ただ友達と何でもない普通の日常をバカみたいに楽しみたいだけ』……だと?ふざけるな!!貴様は!!貴様は自分の願いがどれだけ贅沢なものなのか理解なんかしてないっ!!」

「何が気に食わないのか知らないけど、私はアンタみたいな鉄面皮に私のことが分かってたまる……」

「黙れ!!黙れだまれダマレ!!」

 私の言葉をさえぎって聞き分けの悪い子供の駄々のように騒ぎ出した。自分を着飾っていたのか、今までの高貴な女の姿などそこには消え失せている。


「貴様みたいな平和ボケした奴が一人前のように抗弁を垂れるなっ!」

「知ったことか、こっちにも譲れない理由がある!」

 杖をハンドガンくらいの大きさまで小さくし、叫んでいるシルヴィア目掛けて引き金(トリガー)を引いた。けれど、至近距離から放たれた超音速の真紅の槍はどんな理屈か超反応で斬り裂かれた。

 そしておの御礼とばかりに右ストレートが顔面を襲われる。

「学習能力がないのか?私の能力は『破壊』だ、純粋な競り合いなら私が負ける理屈は存在しない」

「それでも……たとえ負けると分かっていても一縷の望みにかけなきゃいけないときはある」

 負けられないんだよ、久遠が幸せになるためにはねッ!!


「さっき言ったな?『100人の他人』と『1人の大切な人間』、どちらか片方しか救えないならどちらを救うのかと」

「……それが?どうせアンタは『100人の他人』を救うんでしょ?」

「いや、私なら自分を犠牲にしてでも『100人の他人と1人の大切な人間』を救う方法を模索する」

「ふっ、なに?そのふざけた回答?そんなバカげた方法なんてあるわけないじゃん」

 失笑してしまう、どうやら平和ボケしているのはこのバカの方らしい。


「あるさ、例えなくても私は……」

「ちがう、根本からちがうんだよ」

「何を言っている?」

 私の言っている意味が全く分からないような平和ボケに私は丁寧に教えてやる。


「自分を犠牲にするだって?ばぁっかじゃないの?そんな人間なんて居る訳ないんだよ。人間ってのは誰しも自分が一番大事なんだ。例外なんて居ない、他人を救うなんてものは自分のため、自分だけのために生きてる。他人を救った自分に愉悦を感じているのであって、純粋な善意なんてこの世界にあるわけが無いんだ」

「それは貴様の理屈だ」

「へぇ?じゃあこれはなに?2人掛かりで私をボッコボコにして何が正義なの?どんな正義?アンタは私と同類じゃない、自分のために気に食わない敵を叩きのめすだけの野蛮なクズじゃないか。自覚しなよ?」

「戯言だな、負け惜しみ」

「ふん、そうだね、戯言だよ。アンタみたいなゴミに正義なんてあるわけがない、人の命を何とも思ってないようなアンタにはさ」

「貴様ぁぁあああ!!」

 今までは格下のバカの世迷言だと思っていたくせに、最後の一文を聞いたシルヴィアは再び逆鱗に触れられたように怒った。



「何が分かる!!貴様ごときに何が分かる!!?何も知らない貴様に何が分かると言うんだ!!」

「何も分んないさッ!!誰も、何も教えてくれないッ!!だったら自分で考えるしかないじゃないか!!」

「開き直るなッ!」

「じゃあどうしろって言うんだ!?目の前で傷ついている友達を指を咥えて黙ってみてろって言うの!?ざけんなッ!!そんなの耐えられるほど私は堕ちてないッ!!」

「それと貴様の行動に何の因果が存在すると言う!?機関に歯向かい、あそこに居る何百もの人間を殺そうとした貴様の行動に何の因果が存在する!?」


「それをアンタみたいなゴミに説明する道理はないと言っている!魔法少女を道具のようにしか使っていない人殺し集団の分際で!!」

「好き勝手に言うんじゃない!!人殺しと言うのは貴様の兄のような人間の事を指すんだよ!!」

「責任転嫁してんじゃねぇ!アンタがどれだけの大義名分を持ってるかなんて興味ない、だけどアンタらの存在は私は認められないんだ!!」

 我慢の限界だったのか、シルヴィアは渾身の力で私の顔をぶん殴った。

 殴られて怯むような紅莉さまではない、片手で私の胸倉を握っているシルヴィアの額に思いっきり頭突きしてやった。

 全力の頭突きが決まり、手が緩む。

 そのスキをついて、左ストレートをシルヴィアの顔面にお見舞いする。

 倍返しだッ!!


「貴様は傲慢なんだ!貴様は自分の行いが誰かに非難されるようなものが疑っていない!気にくわない!気にくわない、気にくわない気にくわない気にくわない!!」

 血反吐を吐きながらシルヴィアは喋る。喋るのをやめない、ヤツ自身が自分のやっていることに絶対的な正義を持っているからだろう。でもさ!

「アンタは違うのかよ!自分に力があるにもかかわらず、いやあるからこそ努力すれば手に入るに違いないと、傲慢だから確信しているんじゃないのか?けどね、弱者が欲しくて欲しくて欲しくてたまらないものは弱者はどれだけ頑張っても手に入らないんだ!」

 シルヴィアが殴りかかってくる。

 けど、そのパンチはただ感情のままに殴っているそこらの雑魚の拳と同じだった。

 それを避け、がら空きの鳩尾を膝で蹴り上げる。


 だが、シルヴィアは蹴り上げられながら、私の額をけり返しやがった。

「だから努力するんじゃないか、月宮紅莉!!手に入れるために努力をする、後一歩で手に入るかもしれないから永遠に努力し続けるのではないか!」

「違う!それはギャンブルで破産するバカと同じ理屈だ!努力ってのは対価でしかない!だけど、努力は人を、弱者を容赦なく裏切る。裏切らないなんて言えるのは裏切られたことがない強者だけが言えるんだ!アンタみたいななんでもできる強者に、弱者の気持ちなんて分かるわけないじゃないか!!」


「私だって弱者だ!力を行使するだけでは手に入らないものがあることを理解している哀れな弱者なんだよッ!!何一つ、本当に大切なものを失った、ただの弱者なんだよ!!」

 シルヴィアに先手を打たれる前に、こちらから殴りかかる。

 だが、シルヴィアはそれを拳で受けきる。

「詭弁なんだよ!!アンタのそれは!!」

「詭弁だと!?ふざけるな!!」

 シルヴィアの眉が微動した。

 その言葉はシルヴィアの予想外の反論だった。

 ヤツには確固たる意思がある、それそのものの否定など予想の範疇を上回ったはずだ。


「ふざけてなんかない!アンタは開き直ってるんだ!自分に力がないからと、弱者だからと開き直ってるだけなんだ!

 本当に開き直おっていないなら足掻くだろ!もがき苦しんでも足掻き続けるんじゃないの!!

 でもアンタは割り切って、全てを見捨てて、自分のために好きなことをやって、ダメだった時に言い訳をしている無能な政治家と大差ないじゃない!!アンタには力がある、なのにアンタはこんなバカなことをしているだけじゃないか!!」

「苦しんだんだよ!苦しんで苦しんでここに居る!!自分の無力さを痛感したからここに居るんだ!貴様のように自分に陶酔しているような女に非難されるような人生は送ってはいない!!」

 この時のシルヴィアの顔には微妙だが確かに涙があった。

 それが感情的になった副作用なのか、それとも本当に苦しい思い出があるのかなんてのは私が知る由も無い。けど、はっきり言える。こいつのそれは正当化するための言い訳だ!



「嘘だ!逃げたんじゃないの?逃げただけなんじゃないの!!辛い現実から逃げて、自分を守るための詭弁を並べて、自己防衛に徹しているだけなんじゃないの!!」

「だからそれは貴様が傲慢だからだと言っている!自分の判断が正しいと思っているからそんな発想になる!!」

 シルヴィアが裏拳を側面にしかけてきた。

 それを両腕で防いだけど、シルヴィアの膝が今度は私の顎を蹴り上げた。

 受身も取れず、無様に仰向けのまま地面に着地した。

 着地の衝撃が全身に流動し、痛覚神経のせいで極限の苦痛に襲われる。


 ま、マズイ……今ので頭がやられた……軽い脳震盪に……。

 力が出ない……。

「確かに私は傲慢かもしれないど、相対的にアンタが傲慢じゃない理由にはならないよ!」

「好き放題言うな!!私は弱い、力なんて無い、足掻くだけ足掻いた!!その結果がこれなんだ!!必死にもがいて苦しんで、万策を尽くしても失ったモノは……手に入らないモノはもう二度と手に入らない」

 そこには後悔の念があった。

 シルヴィアに何があったのかなんて知らない、同情するような過去があるのかもしれない。

 それでも、私は久遠のためにやらなきゃいけない事があるんだ!!


「私は手に入れたい、頑張っても手に入らないならどんなズルだろうとしてみせる!!諦めてたまるもんか!!」

「ズル……だと……?」

「そうさ、ズルさ。完全無欠のアンタじゃ一生できない発想だ。ズルなんてすれば他人から非難されると分かっている。それでも手に入れなきゃいけないものがあるならズルするしかないじゃないか!」

「貴様は……貴様はどれだけクズなのだ!!」

「どんな手段を使ってでも守りたい物がある!!そのためなら喜んでクズをと言う汚名を受け入れるっ!!」

 私の言葉を聞いたシルヴィアが私に背中を向けた。

 もう私が戦闘不能だと言うことはバレているみたい……。


「もはや、話は平行線だな」

 どうやらこれ以上の口論は無駄でしかないと察したらしい。

 けど、私はまだ倒れるわけには……いかない。

 なのに、体が全く動かない。

 根性で人体がどうにかなったら、医者なんて要らないよね……。


「貴様は月宮教官に、貴様の兄にに似ているな」

「そりゃ、私はお兄ちゃんの妹だから」

 こんな時に褒め言葉とは、シルヴィアは私のことが全く理解できていない。


 そしてシルヴィアは距離を取る。数メートル、数十メートル、そして百メートルほど距離を取った所でシルヴィアは歩くのを止めた。


「来い、全てを断ち切る我が聖剣よ」

 虚空から棺桶のような鞘を取り出し、それから巨大な剣を抜く。

 いや、『抜く』と言う表現が的確とは思えない。その動作を表現するなら『顕現』と言うべきだったかも知れない。

 その剣は勇ましく、気高く、猛々しく感じる。

 そして同時に恐怖し、畏怖する。もしかしたら無意識に恭敬していたかもしれない。

 

「『災禍を討滅する剣(ソードオブダモクレス)』」

 超長剣は光を纏い、その光はバベルの塔のような巨大な刃を形成する。

 天空すらも切り刻むほどえげつない白銀の剣が神の裁きのごとく君臨した。


「は、班長……?こんなの相手に『災禍を討滅する剣』を使うんですか……?いくら戦闘服を着ている状態だからって、確実に死にますよ……あの女を殺すんですか?」

 さきほどまで強がっていたレイがこちらの身を案じている。

 どうやらレイは私を本気で殺すつもりは無かったらしい。


「言ったはずだ、私はアレに引導を渡す。すでに言葉も交わしている。これ以上の会話をする理由はないに等しい」

「あなたは言った、手に入れたい世界があるって。それは、人を殺して手に入れるような世界なのですか?」

「ここで奴を殺すことで誰が救われるのかと言いたいのか?」

「……えぇ」


「人はいずれ死ぬ、それは魔法少女も例外ではない。月宮紅莉は覚悟を決めてここへ来た。何がアイツをそこまで駆り立てたのかは知らないが、こちらにも引けない理由くらいある。だから私は月宮紅莉を潰す、それだけだ」

「……でも、それでも」

「志半ばで死に果てるくらいなら、いっそ人の手で殺してやるのも『義』だとは思わないか?」

「……」

 シルヴィアの目には慈愛があった、けどその慈愛は人がして良いモノじゃない、朦朧とした意識下でもそれくらいは分かった。


「聞こえたか?月宮紅莉よ。これが最後だ、私は今ここで全力で貴様を殺す。だから選べ。ここで逃げるか、くたばるか」

 物騒な事を言ってやがる、けど、それでも私は……。

「……ふぁ」

「ふぁ?」


「Fuck you(お前がくたばれ)」

 アンタの指図なんて死んでも受けたくねぇッ!!

「そうか、ならば死ね」


 シルヴィアが剣に力を込める。

 白銀の極剣にシルヴィアの周りに浮遊していた光の粒子が凝縮していった。

 天高くそびえたっていた巨搭が百メートルくらいにまで圧縮されて行き、そして巨大な剣を精錬した。


 やはり体にはもう力が入らない、避けないといけないとのに……体が動かない……。

 腕を使ってなんとか動こうとするけど、それは電気信号で終わり、運動神経を使役してくれない。

 骨だけじゃなくて脊髄とかがイカれてるのかな?

 はっは、本当にこれじゃチェックメイトじゃないか……。


「終わりだ」

 シルヴィアが剣を振り下ろしたその瞬間、私は覚悟した。


 あぁ……ごめんね、お兄ちゃん。

 言う事聞かないダメな妹で……愛してるよ、永遠に。

 それに久遠……友達失格かな?私には力不足だったみたい……

 せめてトラウマが消えることを祈ってる……。



 そして、粒子で出来た刀身が私に近づいてくる中、黒衣を纏った猛獣が割って入り、剣を防いだ。

『                   』

 割り込んできた猛獣が何かを呟いている。

 何が起きたのか理解するよりも前に『彼女』の声が聞こえ、私は全てを理解する。

「ねぇ、アカリ。アタシたちって……まだ友達だよね?」

「うん!!」

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