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第8話、真紅の炎は空腹に負ける

 朝、学校をサボった後で私はななちゃんとマーちゃんと一緒に水族館に来た。

 ちなみに久遠は『お、お腹が空くから……』と言う理由で遠慮した。

 その気持ちは分かるよ!!マグロシャケウナギブリ……おっと、こんなことを考えているとななちゃんに『アンタは水槽を生簀いけすか何かと勘違いしてるの!!』と怒られそう。

「水族館って久しぶりだね」

「そうね、水族館って学校の遠足とかで来ないし」

「水族館か…………えっと、あと興味がある魚は」

「紅莉ちゃん、やっぱヒラメだよね」

「おぉ!そこは忘れてたよ、さすがマヤちゃん」

 Oh YEAH!!とハイタッチ。

「美味しいもんね」

「高級だもんね」

 あ、こんな会話をするとななちゃんが何か言ってきそう、というか言ってきた。

「寿司屋行け!」


「あ、クリオネだ」

「クリオネ……」

 この前にボッコボコにされた思い出があるから苦手意識がある。

 こいつらって可愛い顔してるくせに、捕食時はえげつない触手出すんだよ。

 なんで天使なんだか、こういうのは羊の皮を被った狼じゃないか。


「あら、意外。紅莉はこういうの好きじゃないの?」

「うーん、確かに『流氷の天使』と言う異名を持っている可愛らしい姿とは思うけど、捕食時のあの触手はちょっと」

「え?逆にそこが紅莉は好きそうだと思ってたけど?」

「ちょっと!不名誉すぎるよ!!」


「あ、ペンギン!ペンギンって可愛いよね♪」

「そういう君の方が可愛いよ、マーちゃん」

「えへへへ、紅莉ちゃん、ありがとう♪」

 うむ、可愛いな、この子は。

 アオちゃんならこうは行かないよ。きっと『そうだな、お前と違ってな』とかだろうし、ななちゃんなら『バカ言ってんじゃないわよ』と怒られるだろう。そして今から何か言われるぞ。


「なにナチュラルに口説いているのよ」

 はい、戴きました。ここまでがお約束ですね♪


「ところでさ、ペンギンって南極に生息してるんだよね?」

「えぇ、まさか知らなかったの?」

 こいつは、そこまでバカだったのか?と言いたそうなトーンで聞き返された。


「いやさ、なんで子ペンギンってあんな陰陽太極図を横から見たような顔をしているのか昔から疑問だったんだよ?」

「言われてみれば似てるわね」

「いんよう……たいいんきょくず……?」

 太極図のことを知らないマーちゃんにななちゃんが説明する。

「知らない?ほら白い勾玉みたいなのと黒い勾玉みたいなのが合わさってる中国とかの円形の図」

 ※☯←これのことです


「あぁ、あれかぁー、……あれってどういう意味なの?」

「宗教上の意味があると思うから詳しくは知らないけど、確か陰にも陽があり、陽にも陰がある。そして陰が極まれば陽になり、陽が極まれば陰になる。つまり、表があれば裏がある、表を極め過ぎると裏になってしまうとかで完全な善も悪もない、みたいな意味だと思うけど自信はないわ」

 ほうほう、そんな意味だったんだ。勉強になりました

 と、ななちゃんのトリビアをフライドポテトを齧りながら聞いた。

「アンタ……いつの間にそんなフライドポテトを買ったの?」

「ん?いや、さっき売店で売ってたから?あ、ななちゃんもどう?ついでにフィッシュサンドも買ったんだけど、これチョー美味しいよ。タルタルが絶品!」

「……ホント、フリーダムね、紅莉は」


「最後にイルカショーでも見に行かない」

「……イルカねぇ。イルカって漢字だと『海の豚』って書くよね?」

「えぇ、そうよ。それがどうした?」

「んでもってフグは『河の豚』って書くよね?」

「その通りだけど?」


「フグ美味しいよねー」

「「ねぇー」」

 ヘーイ!話が分かるマーちゃんと再びハイタッチ!

「そのハーモニングは何なの?二人っきりの世界か何かなの?」

 見飽きたと言いたいのか、それとも疎外感を感じて寂しいのか、叱られたっぽい。


「フグ刺しとかメッチャ美味しいと思わない?」

「思うけど、それがどうかしたの?」

「『河の豚』があんなに美味しいんだよ?きっと『海の豚』もとっても美味しいんだよ。クジラって美味しいらしいし、イルカとクジラの違いって大きさだけ見たいじゃん?」

「ホント、アンタって水族館を魚屋か寿司屋と勘違いしてない?」

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