プロローグ、白銀の剣は狂犬注意報を受ける
6月末、梅雨と呼ばれる雨期が終わり本格的な夏日が始まった。
しかし、四季とは本当に煩わしい。
寒かったり暑かったりと忙しい、おまけに最近は異常気象のせいでその移り変わりが激しすぎると聞く。
なんだ、この国は?
この国は住みやすいと聞いていたが住み難いことこの上ない。
プルルルルッ!
と日本の気候を鬱陶しく感じていると黒電話が鳴った。
前任者の趣味とはいえ、なぜに黒電話なんだ?最初に見たときは使い方が分からなかったぞ?
「はい、シルヴィアです」
ディスプレイすらない旧時代の遺物なので相手が誰なのかすら分からない。
買い換えたい、いや買い換えるか。よし、買い換えよう。
「件の『狂犬』のことは聞いているか?」
「えぇ、聞いております」
『狂犬』とは最近、連続通り魔事件として世間を騒がせている犯人であり、私たち魔法少女を襲っている人間の呼称である。
犯人の狙いは不明。快楽殺人者の類ではないと推測されているが、犯行動機が分からない以上、また被害者が増える可能性は高い。
「今回はそのための対策本部を設置しようと思い、連絡した」
「了解しました、ただちにそちらに向かいます」
快楽殺人者などという迷惑な病気を持った異常者など、この私が駆逐してくれる。
誰も傷つかなくて良い優しい世界のために。




