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第5話、いと美しき白銀の剣

 私の名前はシルヴィア・リリィ・アルジェント、誕生日は2月22日の10歳であり日本の小学生ならば5年生に該当する、ちなみに職業は学者。

 日本の法律には労働基準法と言うものがあるだけど、物事には例外がつき物、そして私はその例外。

 我が祖国、アルジェント皇国では飛び級が認められており、私はすでに大学を卒業済みであるため、初等教育を受ける理由などは存在しない。大切な事なのでもう一度言ってく、私はすでに大学を卒業済みである。

 そんな私の専門は文化人類学、日本の文明に興味があったためこの日本にやってきたのと言うわけ。


 10月30日、私は同じ班のメンバーと共にMWのモンスター討伐に行き、無事遂行した。

 だけど、班員の1人であるクロが班長である紫苑と私に愚痴る。


「ったく……2人が強過ぎてアタシの出番がないじゃん?せっかくシルフィーにもらったこのアサルトライフルが全然使えないよ……えっと、これなんて名前だっけ?」

 手に持ったアサルトライフルを嘗め回すように見ながら名前を尋ねてきた。

 どうやら自分の出番がなかったのが気に食わなかったみたい。

 紫苑は月宮教官に状況を報告しているみたいだし、私が説明しよう。


「ニーラルルツ。我がアルジェント皇国の次世代ライフルだよ」

「ニーララルツ?」

「違う、ニーラルルツだ」

「そうだった、そうだった、このにぃららるるつ?が全然活躍できてないじゃんか」

「せめてもっとカッコよく発音しないかな……」

 しかも微妙に間違っているし。

「カッコよくねぇ……くっくっく、この我が愛銃、ニーララルツが血を欲しておるわ」

 今度は間違えずに言えたのだが、1つ年上のクロが非常にアホっぽいことを言い出した。

 何言ってんの?こいつ。


 紫苑が通信を終わったみたいだから紫苑に尋ねてみる。

「おぉーい、紫苑!このアホが何を言っているのか通訳して欲しいのだけど」

「記憶しておいてくれ、一部のバカな日本人はこんなことを言いたがるんだ」

「ちょっと!?アタシなんかを日本人代表にしないでよ!!」

 アホやバカの部分を否定しないところを見ると、どうやらバカなのは自覚しているらしい。


「んじゃあ、仕事も終わったし2人とも帰ろうか」

 いつものようにクロの発言を無視して紫苑は帰路につこうとした。

 無論、私とクロも同行する(がクロはふくれっ面のまま、フォローしない辺りクズだな)。


 今日はクロの提案で『鍋パ』と呼ばれる日本特有のホームパーティが行なわれるみたいで、私たちはクロのアパートに帰ってきた。『帰ってきた』と表現したのは私がクロと同居してる、簡単に言えばルームシェアというわけ。ちなみにクロは天涯孤独?なようで1人暮らしであった。


「ぐつぐつ煮込むよ、鍋ちゃんちゃん♪どんどん煮込むよ、鍋ちゃんちゃん♪うぃ~~~っしゅうぅぅぅうう♪」

 何やら謎の歌を歌いながらちゃんこ鍋の用意をしだすクロ。

 調理中にこの謎の歌を歌うくせはどうにかして欲しい……。 


 待っている間、暇なのでテレビをつけてみる。

『今日は人気急上昇中のデビルズパークにやってきました!明日のハロウィンに向けて賑わっていますね、デビルズパークは本来クリスマスよりもこのようなダークなイベントが人気だったと言う事で書入れ時だといわれています。どうですか支配人さん?ハロウィンイベントの方は?』

『いやぁ~、おかげさまで盛況のようです。最近はハロウィンが日本でも有名になってきているのは我々としてもプラスで本当にありがたい限りですね。今年は例年以上に力を入れているので他県からのお客様が来てもらう事を目標にしています』

 テレビで街中がハロウィンの話題で賑わっていると言っていた、そこで私は紫苑になぜ仏教の文化が多い日本でハロウィンが行なわれることになったのか質問することにした。


「ねぇ紫苑?なんで日本ってのはキリスト教の国じゃないのにハロウィンと言うキリスト教の祭りをするの?クリスマスもだけど仏教のイベント以外もやりたがるような」

「日本人ってのは他国の文明を侵略することで今の進展していった国なんだ。仏教の影響が強いけど、今の時代に仏教徒はかなり少ないと思う。クリスマスはチキンを食べて恋人と過ごしたりするだけだったり、サンタからプレゼントをもらったりで欧米?の過ごし方とは全然違うことになってるだろうね。バレンタインもお菓子会社の陰謀でなぜか女子から男子へチョコを渡すだけの日になったりで、ハロウィンもコスプレして騒ぐ日みたいになってるから」

「それマジ?日本人ってどうかしてるんじゃない?」

 明かされる驚愕の事実。日本人と言うのは変わっているとは思っていたけど、ここまで自由な感性の持ち主だったなんて……。

「合ってるんだけど、合ってるんだけどそれを異国人に言うことじゃないよ……」

 ちゃんこ鍋の準備を終えて、鍋つかみを装備してからテーブルに鍋を持ってきながらクロは溜息を孕んだトーンで言う。


「日本人なんてバレンタインデーに対してのお礼としてホワイトデーも作り出したりしてるからね、無宗教ゆえに節操がない。和洋折衷とはよく言ったものさね」

「あれ?ホワイトデーって日本発祥なの?」

 ガスコンロに火をつけながらクロが紫苑の説明に対して質問した。

「らしいよ、ネットにはそう書いてあった」

「ソースはネットかよ!!」

 クロの突っ込みを無視して紫苑はジャスミン茶を飲む、ザ・マイペース。


 数分後、鍋が煮立ってくる。

「クロさんや、鍋はまだですかな」

 紫苑がクロに聞いた、気になるくらいならネギでも食べてみればいいのに。

「もう良いんじゃない?シルフィー、よそってあげる」

「ありがとう」

 礼を良い取り皿をクロに渡した、けどその間に紫苑が迅速に鶏と野菜を注いだ。

 相変わらず手つきが早い人。


「そういえばだけど、日本って七面鳥ターキーは食べないの?そういえば食べているところを見たことないけど?」

 日本人がクリスマスに七面鳥を食べるという話は見た聞いたことはないし、そもそも売っていることすら怪しい。

「鳥肉と言ったら日本はチキンが一般的だね。七面鳥を育てている人って日本には居ないんじゃないかな?感謝祭も日本にはないし」

「なのにクリスマスは祝うんだ……日本人ってミーハーすぎる……」

 なんて野蛮なんだ、ドンチャン騒ぎがしたいだけの民族なのかな?日本人ってのは。

「それは日本人も自覚してるから……チキンのが安価で美味いし別に良くない?」

 ほれ、と言いながら鍋の取り皿に鶏肉を入れてきた。

 確かに日本の鍋は美味しい、しかし釈然としない自分も居る。


「ちなみに、サンタクロースと言えばあの赤い服で有名だが、あの赤い服は某清涼飲料会社が流行らせたというのが一般的に知られてる」

「うっそ!?マジで!?サンタが赤い服なのって王様のローブみたいなマントみたいなアレがレッドカーペットみたいな赤い色だからじゃないの!?アタシ、ずっとそう思ってたよ!!」

 自分の今までの常識が勘違いだと知って恥ずかしさの余りか聞いてもない情報を暴露し出した。

「中途半端に賢しいとこういう間違った情報を真実だと信じるわけだね……嘆かわしい」

「侮辱したよね!?今、さらっとアタシのことを侮辱したよね、シルフィー!?」

「被害妄想だよ」

 クロの怒声を流しながら紫苑への質問を続ける。


「それはそうと、やっぱり日本って変わってるよね。聞いた話だとクリスマスよりも日本の正月ってのの方が似てるんでしょ?」

「らしいね、向こうのクリスマスって親戚とかが集まってクリスマスカードとかを書いたりするんだろ?正月の1週間前にそんな似たようなイベントはしたがらないってわけ」

「なるほど、日本人は他国の文化をリスペクトしないで自分達が盛り上がりたいってわけなんだ」

「そういうこと、宗教というモノに無頓着だからね。大抵の日本人は『自分さえ良ければ全て良し』と言う考えで生きてる。

 宗教とは関係ないけど、カレーライスを発明したのも日本人らしい。イギリス海軍がカレーにパンをつけていたのを『もっとトロミをつけてご飯で食べた方が美味いんじゃね?』とアレンジした結果、日本で大人気の料理の一つになったらしい、諸説あるらしいからこれが正しいとは限らないけど」

「国民的人気料理すら他国からのアレンジってわけなんだ……」

 日本人のミーハーっぷりにドン引きしていると、雰囲気ブレイクしたかったらしくクロが物申す。


「こらこらー、まるで日本がパクることしか脳がないみたいに思われるからそろそろ止めなさい。うんちくやトリビアを言いたいなら外国人に受けそうな寿司や天麩羅、すき焼きで」

「そうは言うけど、日本の文化の原点は『発展』だと思うんだけどなぁ~。

 じゃあすき焼きで1つ、もともと仏教の考えが強かった日本じゃ昔は動物を殺すことが許されてなかったらしく、明治まで牛を食べられなかったんだってさ。なお、現在の主流のすき焼きはすき煮だと非難する声が耐えず、厳密にはすき鍋や牛鍋と言われてる。補足として言うとすき焼きは関西の方の言葉らしい」

「動物を殺すことは禁止されてたって言ったけど、日本料理には鶏を使ったのも多いみたいだけど?」

「わたしはそういうのに詳しくないから知らない。しかしながら鹿や猪は古代から食べられてたらしいし弥生時代の頃には畜産は始まってたと考える学者も居るそうだから鶏肉は例外だったんじゃない?家畜と狩猟は別物と都合いいように考えてたって説もあるからね」

 若干、適当なニュアンスで紫苑は言い出した。後半の文章に入った頃には鍋の汁を飲みながらなのである、この人に礼儀作法を求めるのはバカバカしいので諦めている。

「シルフィー、所詮は太古の時代の人間だよ?そんなに深く考えずに美味い物を美味いと感じながら食べれば良いと思うよ」

 クロ、それは短絡的過ぎませんかね……?



「そんなことより、2人とも明日の予定は?」

 クロによる唐突の話題変換である。

「暇だけど?」

「空ける事はできる」

 紫苑と私が答える。クロのことだ、嫌な予感しかしない。


「ハロウィンパーティに行かない?」

「「ハロウィンパーティ?」」

「うん、最近人気のデビルズパークって言う遊園地で明日限定のパーティ企画があるんだって。それで仮装した小学生は入場料が無料になるんだって。だから一緒に行こうよ」

 今、テレビで宣伝していた遊園地に行きたいみたい。

「別に良いけど」

 紫苑は行っても良いと答えた。けれど、私はそんなに甘くはない。

「興味ないよ、そういうのを楽しむために私は日本に来たわけじゃ……」

「ちなみにハロウィン限定のスイーツもたくさん用意されてるんだって」

 ガタッ!

「何をしているんだ2人とも!?仮装の準備はもうできているのか!?」

 甘い物には甘い、それが私の流儀である。


「ふふっ、チョロい」

「何が目的なのかは知らないけど、あまり年下の異邦人を虐めるなよ、クロ?」

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