第一話
村へ行きます。
ドスッ、ドスッ
……ん?何だ、何の音だ?
木に憑依して寝ていた俺は何かの音に気づき目を覚ました。そうして確認をしようとした次の瞬間╾╾
メリメリメリ、ドーンッ!
『おおう!?』
╾╾俺の宿っていた木は横へ向かって盛大に倒れた──
『な、なにが起きたんだ……?!』
すると木に何かが近寄ってきた。
人だ。
いかにも木こりといった感じの男が近寄ってきていた。
『木こりだと、もしかしてこの木を伐採に来たのか?』
そうしている間にも他の木こりたちがやってきて、この木を運び始めた。
『もしかしてこのまま村行きか?ある意味ラッキーかもしれん。人里へ行けるな』
そうして俺は木に宿ったまま木こりたちに運ばれていった。
●
着いた先は予想通り村だった。ただ、住民の衣服などを見るといかにも昔ながらという感じの服装だった。
『もしやここは異世界か……?だとすると余計わからないな、なんで俺は異世界で幽霊になっていたのだろうか?』
そんな事を考えている内に俺の宿った木はどこかの家へ運ばれていった。
その家に着いた俺は他の材木と一緒の場所に置かれた。
そのまま一晩そこで過ごした。途中、この家の持ち主と思しき子どもが材木で遊んでいるのを見たが。
次の日、俺の宿った木を体格のいい男が加工に来た。この時俺は木を切られたら俺は消滅するのでは?という危惧を抱いたが、それなら伐採の時点で死んでいるだろうということに気づいたので大人しくしていた。結果は予想通り、薪にされたが別に俺は消滅しなかった。薪の一つに意志が宿るという感じでなんともなかったのだ。
どうやら俺は宿っているといってもあくまで憑依なので宿っている物がどうなっても俺自体には影響がないようだ。
その後、薪は暖炉にくべられ、燃やされた。もちろん俺はなんの影響もなく、そのまま薪の外へ出た。
そうして村を探索してみた所、やはりというか俺の存在を誰も認識していなかった。村人の鼻先まで行っても気づかれない。まあ、幽霊だからしょうがないか。
そうして探索していると、屈強な男たちが剣を持って訓練をしていた。村の自警団だろうか?とても熱心だ。そうして訓練が終わった後、皆それぞれ家に帰っていった。俺はその内の一人の後をつけていってみた。
その家は平均的な家だった。男が家に入ると、若い女性が迎えていた。中々の美人だな。このリア充め。男は奥さんと思しき女性と何か話しをした後、食事をしていた。その後、二人とも同じ寝床で寝ていた。おおう、ラブラブだねえ~。単に寝床が少ないだけかもしれんが。
次の日、男は弓と短剣を持って出かけていた。俺は後を追いかけてみると、森の中で何かを探していた。そして視界の先にイノシシを見つけると、弓を使う準備をし始めた。もしや猟師なのだろうか?
そうして男は遠くの方にいたイノシシ目掛け、弓を撃った。
ドスッ!
矢は見事にイノシシに突き刺さり、イノシシはのたうちまわっていたが、男はそのイノシシにさらに矢を放ち、そうしてイノシシは絶命した。
その時、俺の視界にある光景が飛び込んできた。
死んだイノシシの体から例の光の粒子が飛び出て、霧散していったのだ。
╾╾あの粒子、魂なのか?╾╾
そう思ったがそれだとこの世界に粒子が充満している意味が解らない。それだと世界中に死んだ魂が常時存在していることになる。ならあれはなんなのだろうか……
思考している間にも男はイノシシの血抜きを終え、帰ろうとしていた。
『いけない、見失う』
とりあえずこの事についてはまた今度考えるとしよう。今の俺には時間だけはたっぷりあるしな。
粒子の謎はまたいずれ。