プロローグ
不思議道具の方の息抜きのための作品ですので更新は遅いです。
『あれ……?ここはどこだ?』
俺は初めての海外旅行にドキドキしていたのに、乗っていた飛行機が墜落して死んだはず……
なのに何故こんなにも緑豊かな森にいるんだ?
いや待て、落ち着くんだ俺。もしかしたら助け出された後でこの森に放り出された可能性も……いやないか、そんなことする意味が。
『しかしこれからどうすれば良いのだろうか。まあいい、冷静になって考えれば何とかなるだろう。我が■■家の家訓も「どんな時でも冷静であれ」だからな。』
あれ……?
おかしい、何故我が家の名前が出てこない。ま、まさか、俺の名前も?
『俺の名前は確か■■■■╾╾』
もう間違いなかった。俺は名前が思い出せなくなっていた。いや、まるで自分の中から消えてしまったかの様だ。
『な、何で?何で名前が……あれ?』
さらに気づいたことがあった。自分の体を見ると、体が半透明になっていたのだ。
『ま、まさか……俺、幽霊になっちゃったのか……?』
俺は衝撃の事実にしばし呆然としていた╾╾
●
『クソ、なんでこうなった……』
俺は悪態をつきながらも森の中を進んでいた。ちなみに歩いている訳ではなく、ふよふよ浮かびながらだ。
あの後なんとか冷静さを取り戻し、自分の体を検証してみた。どうやらこの体は半透明なだけでなく、物体を透過することができるようだ。また、何故か複雑な模様が織り込まれたローブのような服を着ていた。さらにもう一つ気になることがあった。
『何なんだ?この光の粒子は』
そう、何故か俺の視界には光の粒子のようなモノが見えるのだ。これは一体何なんだろうか?
『とりあえず人里に向かうか。でも受け入れてもらえないような気もするが……』
それ以前に今の俺のことが見える人がいるかどうかもわからんが。
そうして森を進んでいると、川が見えてきた。
『水か」
俺はその川の水に試しに触れてみた。しかし、思った通りすり抜けてしまう。
『やっぱり触れないか……こんな綺麗な水なんだからさぞ冷たくて気持ちいいんだろうな……』
そう思っていたその時╾╾
キュゥゥン……!
『え!?なんだ!?』
俺の体が水の中に吸い込まれていく。そして……
『こ、これは……!』
俺は川の水と一体化していた。
●
『まさかこんなことができるとは』
俺は川の水を動かしながらそう呟いた。
どうやら俺は何かに宿ることができるようだ。あの後水に宿ってしまった俺は慌てて元に戻ろうとした所、すぐ出ることができた。そして俺は試しに近くの草や土にも入ろうとしてみた。結果は予想通りだった。その対象に宿り、それを動かすことができた。
今俺は再び水に宿り、水を動かしてみている。
『ああ、こうして一体化してみると水ってのは優しい感じがするな』
俺はしばしまったりした後、また移動を開始した。
『なんか暗くなってきたな』
再び森を探索している内に辺りは暗くなってきた。だけど何故か俺は眠くならなかった。
『俺……本当に人間じゃなくなったんだな……』
物をすり抜けること、変なモノが見えること、物に憑依できること等、明らかに超自然的な現象が起きてしまってはもう自分が人間とは別の何かになってしまったのだと認めるしかない。
『なんでこうなっちゃったのかな……』
そう思うが説明なんてしようがなかった。だけどあの飛行機事故で俺は本来死んでいた可能性が高い以上、こうして存在できるだけありがたいかもしれない。でもできれば人間として存在したかった。
そう思いながらも進んでいく内に大きな木を見つけた。
『この木に宿ってみようかな』
試しに木に触れ、宿ることを念じると、木の中に吸い込まれる感じがし、そして俺は木と同化していた。
『寝てみるか』
俺は木の中で寝ることにした。不思議な事に眠くはならないのに寝たいと思うと眠れるのだ。人間としての感覚を失くしたくない俺はせめて擬似的でもいいから眠っておこうと思ったのだ。
そうして俺は木の中で眠ることとなった╾╾