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#07 最強の矛盾点

ドゴォオ!!!

「え?何だ今の音?」

高等部第3学年校舎の入り口の前に辿り着いた桑場屋武蔵は、すぐ近くから聞こえてきた轟音に、思わず身を強張らせた。


校舎の横の奥からみたいだな......


恐る恐る慎重に音のした方へ忍び寄っていく桑場屋武蔵、そしてゆっくりと音の元凶を確かめるべく奥を覗き込む。

「ん!?あいつは!?!?」

彼の視線の先には行方の背中の姿があった。そして行方の足元には何か人間のようなものが倒れている。

「おいおい... 誰か既に狩られてんんじゃん....」

その瞬間、行方が足元に転がる生徒らしきものを蹴り飛ばした。

「あいつ鬼だな....」


凄い帰りたくなってきた..... 超恐いんだけど....


桑場屋武蔵が蹴られた人物に同情しながら目を凝らすと、どうやらその人物は女生徒らしきことがわかった。


あいつマジかよ.... 女の子にも手を出すのか!噂以上のクソ野郎みたいだな...!

あの子も可哀想に.... いったい何やらかしたんだよ。全く触らぬ神に祟りなしって言うのに.... まぁ俺は触って無いのに祟られたけどねっ!!!

というかあの女の子どっか見たような...?...!!


そこで彼は戦慄の事実に気づく。

「.....岡月!?」


何であいつが...!?あいつを傷つけない為にここに来たのに!?


桑場屋武蔵の足が自然と行方と岡月の元へ近づいて行く。


俺の勇気と行動無駄じゃねえかっ!!あいつ何してくれてんの!!??


何故か彼は激しく怒っていた。理由は岡月にあると本人は思い込んでいる。

「ど畜生...!」

そしてさらに彼は足を進める。

が、そこで足に何かが当たる感触がしたと思うと、突然彼の耳にけたたましい音が飛び込んできた。


カンッカランコロンッ!


ってあ.....................


彼は呆然と優雅に地面をカラカラとローリングしていく空き缶を眺めた。


やっべぇぇぇぇっっっっっ!!!!!!

何でこんな所に空き缶落ちてるんだよぉぉぉぉっっっっっ!!!!!!!

カモンシンガポールっっっっ!!!


行方の方を向くのが怖ろしくて、桑場屋武蔵はひたすらに空き缶を眺め続ける。


やばい....!俺の不意打ちワンパン顎下右ストレート作戦がっ....!

いやまだ諦めるなっ....!まだ行方は気づいていない可能性もまだゼロじゃな・・・


「オイ、誰だお前?」


いわけないですよねえっっっっ!!!!


桑場屋武蔵はあまりの危機感に何故か笑ってしまっていた。あまりの顔の引き攣りに脳が緊急処置を施したのだ。


さて.... どうする?この距離で時を止められて、俺の能力がバレたら最後.... 真っ向勝負になる....!そしたら一巻の終わり....!!


「オイ、聞こえてんだろ?誰だって聞いてんだよ。笑ってねぇで答えろ」

全身から邪悪なオーラを惜しげも無く醸し出し、行方は黙ったままの男を睨みつける。


ま、まずい....!何か知らんが怒ってるぞ....


桑場屋は冷や汗を全身にかく。

「桑場屋..... 武蔵だ......!」


取り敢えず名を名乗っておこう....

今にも襲いかかってきそうで怖いし.....


「桑場屋.....?そうかお前が........」

さっきまで不機嫌そうに怒気をみなぎらせていた行方が、急に打って変わって楽しそうに笑い出した。

「ヒャハハハハッ!!今日は最高の日だぜ!まさか1日で全部楽しめちまうとはなぁ!?」


何だコイツ!?いきなり元気になった!?!?ちょっとヤバイ奴....?


桑場屋武蔵は不審な視線を行方に送り、少し後ずさる。

「何でここに来たのかとかはどうでもいい.... さっさと始めようぜ?訳あり君?」


おっとこの雰囲気.... 本格的に始まりそうだな....!

覚悟を決めろ俺!行くぞ!!!


「ワンパン顎下右ストレートぉぉぉ!」

桑場屋武蔵は彼に向かって歩き出そうとする行方を認めると思い切り走り出した。










「こっちに何の用があるんだ?」

倉落は崎山と寮の前で別れを告げてから、きた道を引き返して桑場屋武蔵を探しにいった。彼は最初から桑場屋武蔵の違和感に気づいていたのだった。

だから一度桑場屋武蔵とあっさり別れてから、その後違和感について改めて確認するつもりだったのだ。

そして、校舎から出て何処かに向かう桑場屋武蔵を発見してそのまま後をつけてきたのだった。


案の定あいつ怪しい行動とってやがるぜ...!


慎重に十分距離をとって桑場屋武蔵を尾行してきた倉落は、桑場屋武蔵が進んで行った道を見据えると、深まる謎に首を傾げた。


こっちには高等部第3学年校舎と特別教員校舎くらいしかないはずだけど....?


「まぁ、行けばわかるか」

倉落は道を曲がらずに、変わった友人の辿った道をなぞっていった。

しかし、倉落の尾行は思わぬ形で終了することとなる。

道の端の植え込みの林の中から突如何者かが倉落の前に立ちはだかったからだ。

「ここから先は今、立ち入り禁止よ。早急に立ち去るか、此処で死になさい、負け犬の倉落優人」

感情を感じさせない声色で冷たくそう言い放つ人物に倉落は見覚えがあった。

「........御前崎、何でお前がここに...?」

倉落は混乱した表情で目の前に立ち塞がる女生徒を見つめる。

「それを貴方に言う必要性はないわ。早く立ち去るか死ぬか、選びなさい」

御前崎は間髪いれず表情を変えずに抑揚のない声で言う。


ちっ....!相変わらず口悪りぃなこいつ...!!こんなに友達がいない理由がわかりやすい奴もいないぜ.....!


倉落は憎々しげに御前崎を睨みつける。

セミロングの髪に筋の通った鼻、形の良い眉で切れ長だが黒目の大きい瞳。

御前崎は誰もが綺麗と認めざるを得ない美貌に持ち主だったが、彼女の周りに漂う人を寄せ付けない雰囲気は全てのものを拒絶していた。

「こっちに俺の友達がいるはずなんだ。立ち入り禁止ならちょっとそいつを探してきてもらっていいか?」

倉落の言葉に御前崎は少し意外だと言わんばかりの顔をすると、人を見下したような笑みを浮かべた。

「桑場屋武蔵の事なら心配いらないわ、彼はこちらで保護するわ。元気な姿であなたの元に返還出来るかは保証できないけど」

倉落は御前崎の言葉に衝撃を受け、そして必然とある考えに支配され、声を荒げた。

「おい!それどういう事だ!?まさか、クワは<制裁>されてんじゃねぇだろうな!?」

倉落は少し歩み寄ると、怒りに満ち溢れた視線を御前崎に注ぐ。

「残念ね、それは言えない約束なの。後、それ以上近づいたたら殺すわ」

御前崎は空気を凍らせるように顔を再び無表情に戻すと言葉を言い放つ。


クソ....!何でクワが<制裁>の対象になってんだ?しかも御前崎(コイツ)がいるって事はまず<制裁>を行ってるのは行方だろう....

マズイな.... クワの特別な能力がバレるのは間違いない......!

いや逆か!?能力がバレたから確認も込めて始末されかかってんのか...!?

どっちにしろクワはピンチだ!クソ!友達がピンチだってのに、俺は何も出来ねぇのかっ!!


「さっきから黙ったまま動かないけど、どうしたの?まさか本当に死にたいの?」

御前崎が逆に倉落との距離を詰めていく。


こいつをどうにかして、クワを助けに行くしかないか.....

でも俺にそんなこと出来んのか?相手は生徒会....普通にやったらまずボコられる...

そもそも行方の所に行けたとして、それで何か変わるのか?


ザッ ザッ ザッ


迫り来る御前崎に少しずつ倉落は後ずさっていく。そして小さく目をつぶった。


俺は変われるのか?


『お前は一生負け犬さ、大切な物すら何一つ守れない』

昔、紫色のブレスレットをした少年に言われた言葉を倉落は思い出す。


俺は変わる。


閉じていた瞳を開くと、倉落は後ずさりをするのを止めた。











突如走り出したボサボサ頭の少年に行方は少し驚き、一瞬体が硬直した。


ア?何だコイツ?この俺に正面突破だと?

あの金髪女みてぇな能力封じが出来るタイプか.....?それとも赤髪みたいな領域を.....?


行方は自分に何の間合いもおかず突っ込んでくる相手は時間操作者(タイム・オペレーター)では初めてだったため、どう対処すべきか若干の思考を必要とした。


チッ.... 取り敢えず様子見だな.....


行方は馬鹿正直に突撃してくる桑場屋武蔵を傍観するのを止め、岡月の居る方へ体の向きを変えて走り出した。

そしてそのまま岡月を飛び越え、校舎の壁に向かって全力疾走する。

タンッ、と壁にぶつかる寸前に行方は大きく跳んだ。そして壁の窓ガラスに飛び蹴りをかます。

パリィンという甲高い音と共に、砕け散った窓ガラスの破片が宙を舞い、行方の体がキラキラと輝く透明の刃に包まれる。

ガラスの破片は行方から見て桑場屋武蔵側以外を残して地面に落ちていった。

そして、空中に静止したままキラキラと輝く凶器を目にして桑場屋武蔵の足が止まる。

そんな桑場屋武蔵を横目に見ながら行方は目にも留まらぬ速さで時を奪われたガラスの破片に蹴りを繰り出しながら着地した。


「サァ?お手並み拝見といこうか?」


行方が立ち上がり桑場屋武蔵を見据えると、それを合図にしていたかのようにガラス破片達は、1人の男に襲いかかっていった。






「おいおいマジかよ!?」


桑場屋武蔵は突如自分に向かって飛んで来たガラスの刃を目前にして体が完全に硬直していた。


やばい....!避けないと......!!!


桑場屋武蔵は迫り来る刃から逃げようと横に体を投げ出そうとするが、もう刃は目前にまで迫っていた。


不味い...!!死ぬ....!!!


だがそう思ったその瞬間、カチッ、という音が頭の中で聞こえたかと思うと彼は急に世界がスローになったように感じた。


あれ...?何だこれ......?


ズザサッ!!!

そして次の瞬間には桑場屋武蔵は大きく横に飛び退いていて、飛んで来たガラスの破片を全て避けきっていた。


「はっ....はぁ...... 避けれたのか?」


自分の体に傷が一つも無いことを確認してから、桑場屋武蔵は前を向いた。

すると視界に入ったのは、彼に向かって凄まじい速度で走って来る行方の姿だった。


「ん!?」


行方の顔は不気味にも無表情だった。






避けた....?あれを躱したのは褒めてやれるが... 問題はそこじゃない.....

何故躱したのか(・・・・・・・)、そこが疑問だ.....

俺の想定している桑場屋の実力ならあの程度の攻撃、無理をして避ける必要は無いはずだ、普通に時を止めればいいだけだからな....

コイツまさか....!?


行方は走りながら自分の最も怖れていた事態に想像が及び、全身に戦慄が走るのを感じとった。


ただの雑魚....?


しゃがみ込む桑場屋武蔵に自分の蹴りが簡単に通るのを見て、行方の想像は確信に変わっていく。


「ふざけるなよ.....!」


メキッ、と行方の拳が浮遊する桑場屋武蔵の腹にめり込む音がする。


「ぐはっ!」


大袈裟に飛ばされた桑場屋武蔵は地面を転がり跳ねていく。

わざと桑場屋武蔵に立ち上がる時間を与えてから行方は桑場屋武蔵の懐に飛び込み、すかさず連続攻撃を叩き込む。


「ぐほっ!!!」


桑場屋武蔵の口から血と唾液が混じった液体が飛び散っていく。


何が気をつけて下さい.... だ!


行方は辛うじてまだ倒れずに立ったままの桑場屋武蔵の足を思い切り刈り取る。

グルン、と桑場屋武蔵は回転し逆さまになる。


散々期待させといてコレかよ......!!


足元に来た桑場屋武蔵の頭を同じように蹴飛ばし回転を加速させる行方。

そして、トンッ、と行方は立っていた位置から真上に軽く跳ぶ。


獅子風車(シシフウシャ)


行方は空中で強引に体を捻り、回し蹴りを回転する桑場屋武蔵のど真ん中にぶち込んだ。


ドザザザッ!

地面を2、3回バウンドしてから桑場屋武蔵は屍の様に動かなくなった。


「悪いな、お前には俺のストレス発散用サンドバッグになってもらうぜ」


怒りを体に漲らせながら、行方は更なる暴力を加えるべく遠くに吹っ飛んだ桑場屋武蔵に近づくいて行く。

だが、数歩進んだ所で行方の動きが急にビタッと完全停止した。

そして約2秒後、行方はゆっくりと校舎側を振り向き、地面に座り込んでいる少女を見つめた。


「ヘェ?驚いたな....? お前、入学して一週間も経たない内に人間の時を止められるようになったのか?しかもこの距離で?」


ニヤリと意地悪く笑うと、行方は歩く方向を変えた。


「でもその能力を今使うって事は、先に殺して欲しいって事でいいんだよなぁ?」


行方の邪悪なオーラがいっそう濃くなっていく。

まだ空は赤いままだった。






はぁ.... はぁ..... 体中が痛い.... 呼吸をするのも苦しい.......

これは本気で死ぬかも......


桑場屋武蔵は目の前の地面が赤黒く染まっている理由が分かっていた。


やっぱり俺は特別にはなれないんだ........


自分の耳に邪悪な足音が近づく音が彼に聞こえてきた。


俺みたいな一般人がこんな学園に入るからこんな事になるんだ.... 身の程知らずもいいとこだったってわけだ......


しかし足音が急に止むと、足音がどんどん遠ざかっていく。

だがそんな事は今の彼にとってはどうでもいい情報だった。


俺はいつも最後にはこうやって地面に這いつくばってきた.......

俺はそういう運命なんだ.....


誰かが言葉を発した様にも思えたが、彼にはもうその言葉を聞き取ることすらままならない。


『お前、才能無いよ』


これまで幾度となく言われてきた言葉を彼はまたも思い出す。

しかし、そこで彼の眼に小さな光が宿った。


「そんなこと...ない.....!」


俺はまた諦めるのか?違うだろ?

やっと見つけた正真正銘自分だけの才能...!

これまで捨てたら俺はきっと一生後悔する...!


気づくと彼は立ち上がっていた。

誰かが何かを叫ぶ声がする、そしてその雄叫びと同時に桑場屋武蔵は走り出した。










「ふーん、やるじゃない?」


御前崎は攻撃をひたすら避ける倉落に賞賛の声をあげる。


「まぁ、避けるので精いっぱいって感じだけど」


くそっ!只の高校生かよ本当にっ!!

俺も運動神経はいい方のはずなのに...!

こいつの動きについていくのでいっぱいいっぱいだぜっ!!!


「お前のっ....!能力はっ...!知ってるからな!」


御前崎の突き、蹴り、全てを寸での所で躱す倉落。


「でも、そろそろ限界じゃない?」


御前崎は着ていたブレザーを倉落に向かってヒラリと投げる。

倉落の視界から一瞬、御前崎の姿が消える。


「しまった!!」


倉落の死角から御前崎の拳が繰り出される。

それでも倉落は驚異的な反射神経ですかさず避けようと試みた。

だが、避けきることは叶わず御前崎の拳が倉落の顔をかすった。


やられた.....!


その瞬間倉落の体が避けたままの状態で動かなくなる。


「ご愁傷様」


そして無防備な倉落の腹に思い切り御前崎は拳を殴り込む。


「うっっ!!」


こいつの能力は触れた物の時を一瞬で止める力....!


後ろに吹っ飛ばされた倉落に御前崎が追い打ちをかける。


こいつの能力は持続時間が短いはず....!

でもその代わりに確かこいつのインターバルは極端に短い....!!


御前崎が立ち上がろうとする倉落を軽くつま先で触ると、再び倉落の体が微動だにしなくなる。


「立ち上がる事は許さないわ」


御前崎は倉落の胸を力強く踏みつける。

踏みつけてから1秒後くらいに倉落の体が地面に叩きつけられる。


「がはっっ!!」


こいつマジで強い....!こりゃ無理だわ....!

調子乗った事考えてたけど、こりゃどうしようもない....

一緒に死のうぜクワ.....


苦痛に顔を歪める倉落を見下ろしながら御前崎は満足そうに微笑む。


「あら、もう終わり?仲間を見捨てて逃げ出さなかった事は褒めてあげる。でも、その程度の力じゃ何も守れないわよ?」


本当にその通りだよ.......


倉落は体中の力が抜けていくのを感じた。


ズズッ、ザザッ、ザッ、ピー

『戦闘が終わりました。現場に向かって下さい。友里香さん』

突如鼓膜に響き渡る透明感のある声に御前崎は倉落から視線を外す。

「はい、今から向かいます」

御前崎は足元の倉落を再び一瞥した。

「あなたのお友達の所にそろそろ行かなくちゃいけないから。あなたは負け犬らしくそこに転がってなさい」

御前崎はグッタリしたまま動かない倉落から足を退けると、踵を返し歩き去っていった。

「ゴメン、クワ.... お前を守れなかった.....」

倉落の頬を撫でる風は冷たかった。











......私はまた負けるの....?


目の前の足が少し後ろに引かれた時、そう岡月は思った。

しかし何処からともなく空き缶が転がる音がすると、彼女の敵はそちらに気を取られた様だった。


......誰?


彼女もその音がする方へ目を向ける。するとそこには見覚えのある人影があった。

そして、その影は自分の知っている名前を口にした。


.....何で?


桑場屋武蔵と名乗る影はどうやら自分を苦しめた男と戦うつもりらしかった。


.....どうしてこの場所に?


岡月は意識が朦朧としすぎて幻覚を見だしたのかと思った。


.....どうしてこんな幻覚をみるんだろう?


だが、彼女は目に映る映像が幻覚ではないという事を、ガラスの破片が知り合いの名を語る影を襲う瞬間に思わず体を起こしてしまった時に強く自覚した。


桑場屋君が苳也と戦ってる....!


そしてその後彼女の目の前で繰り広げられたのは、幼馴染の彼女のクラスメイトに対する一方的な暴力だった。


.....嘘、.....何でこんな事に?


完全に力尽きた様に見える桑場屋武蔵に歩み寄っていく行方。



もう止めてっ!!!



その瞬間、岡月は能力を発動させ、行方の時を止めていた。

そして数秒が経ち、ゆっくりと行方は彼女の方を向いた。


これでいい..... あの人は関係無い.....


岡月は自分に向かって来る行方の姿を確認すると、満足気に微笑んだ。











「オイ、岡月。その能力、インターバルはどんくらいなんだ?笑ってねぇで答えろよ?」

行方は不適に笑う岡月の方へ歩いて行く。

しかし、またもや彼は数歩進んだ所で足を止めなくてはならなくなった。

「行方苳也ぁぁぁっっっっ!!!!」

後ろで何者かが叫び声をあげ、そして走り出していたからだ。


ア?まだ立てたのかよ?


「何でどいつもこいつもそんなに早く死にたがるのかねぇ.....」

行方は面倒臭そうに溜め息を吐く。

「ワンパンッッ!」

行方は声の主の方を気怠そうに振り返る。

「お前には期待してたんだけどなぁ......」

制服が血や土で汚れた男が行方に迫っていく。

「顎下ぁぁっっっ!!」

行方は向かって来る男をじっと見据える。

「でも、もう、お前、いいや」

そして、桑場屋武蔵が行方に拳を振り上げながら飛びかかった。

「死ねよ」

しかしその瞬間、桑場屋武蔵の動きが空中で止まった。

「望み通りお前か・・・・」

だが止まったのは本当にその瞬間だけだった。




「右ストレートォォォッッッッ!!!!!」




凄まじい大きさの声が行方の鼓膜を揺らす。

そして、行方が喋り終わる前に彼の顔面、特に顎の下の方から何かの衝撃が伝わった。


ア?何でコイツまだ喋れるん・・・・


だが行方の痛覚が脳に痛みを告げる前に彼の意識は遮断されてしまった。






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