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#10 秘密の矛盾点


ピポンッ ピポンッ ピポンッ


何だようるさいなあ........


ピポンッ ピポンッ ピポンッ


邪魔をしないでくれよ........


ピポンッ ピポンッ ピポンッ


俺は地球を守る心優しき宇宙人じゃないんだからそんな音で呼ばれたって行かないよ......


ピポンッ ピポンッ ピポンッ


もう分かったよ...... 行けばいいんだろ?

今回は特別だぞ?





ピポンッピポンッピポンッピポンッ!


目を閉じたまま手を頭上に這わせていき、お目当ての感触を見つけた瞬間、彼の手は乱雑にその固く冷たい物体を何の躊躇もなく思い切り叩いた。

ピポンッピポガッッ! ・・・・・・・


半分しか開こうとしない眼を顔をしかめながら無理やりこじ開けると、カーテンから差す朧げな黄色い光と、その光に照らされる何かのキャラクターと赤で基調された午前6時を示すアナログ時計が彼の目に映った。

「もう朝か.......」

疲れの取れない体をゴロンと仰向けに変えると、左手首にピッタリくっ付いている白いブレスレットを彼はぼんやりと眺めた。

「俺、TOAに入学したんだよな.......」

彼はベッドから身を起こすと、いつも以上にボサボサしている頭を乱暴に掻きむしり、もう一度自分の左手を見つめた。

「一週間も経ったっていうのに全く実感が湧かないなあ......」

ベッドから腰を上げるとカーテンを丁寧に開く、さっきまで微かだった光がその濃さをます。

「ひい〜、今日もいい天気ですなあ〜」

青い空に申し訳程度に雲が浮かぶ。彼の特別な時間が今日も再び始まりだすのだ。

彼はまだ慣れない不思議な世界へ行く準備の為に、自分の部屋を後にした。


彼の名前は桑場屋武蔵(クワバヤムサシ)、約1週間前に今この世界で最も特殊な学園、タイム・オペレート・アカデミア — 通称TOA(ティー・オー・エー)の高等部に彼は正式に入学した15歳の少し風変わりな少年である。

TOAとは日本で唯一の時間操作者(タイム・オペレーター)養成機関である。

幼い頃から特別な人間になりたかった彼は、この学園に入れた事を心の底から喜んでいた。

しかし、彼の高校生活は彼の想像を遥かに超えて異常な物だった。

ある事情で彼は学園の周りの人達から矛盾点(パラドックス)と呼ばれ、学年最強の能力者との殴り合いも入学してたった1週間で経験してしまっていた。

彼はその特別な毎日を嬉しいと思う反面、これからの高校生活に少なからず不安を感じ始めていた。

なぜなら彼には他の時間操作者(タイム・オペレーター)の卵達とは違い、ある秘密を隠しながら学園生活を過ごす必要があったからだ。


「武蔵〜!今から洗面所貸し切るから使うなら早くして〜!」

「ぬ?了解〜」

リビングに着いた桑場屋武蔵に向かって、女性にしても小柄な人物が話しかける。

その人物は上半身にはパーカーを羽織り、下半身は下着一枚でソファーに腰掛け、新しい新聞紙を眺めていた。

「母さん........ その格好寒くないの?」

「うん。ちょっと暑いくらい」

そう答える女性 — 桑場屋知沙(クワバヤチサ)はまだ高校生と言っても通じそうな童顔を彼に向ける。

「ほーいほい、そうですか〜っと」

「おいコラ武蔵、母親に向かって何だその人を小馬鹿にした態度は」

桑場屋武蔵は冷蔵庫から牛乳ビンを取り出し、ゴクゴクと飲むと、ポツリと呟いた。

「............ アラフォー」

「殺す」

知沙は小さな体に似合った軽快な動きでソファーから跳ね飛ぶと、桑場屋武蔵に対してジャンピングコブラツイストを仕掛けた。

「ぐほぉぉぉっっ!!!痛いっ!ちょ痛いっすマジで!!!本当すんませんしたっ!!!!自分が悪かったっす!!!!」

床で喚きながらジタバタする彼を見ても、知沙は無表情のまま締め付けを強める。

「帰りにプリン買って来るから許してええええ!!!!!」

「全くしょうがないなあ〜、今回はこのくらいで勘弁してやろう〜」

顔を真っ赤にして叫んでやっと彼は解放された。そして知沙は何事も無かったかのように立ち上がり、洗面所の方へ歩き去って行く。

「あ、ルーソンのプレミアムプリンじゃなかったらエルボーね」

一瞬立ち止まると床に死んだように転がる彼に笑顔で振り向き、彼女はそう付け加えてからまた消えて行った。

「.......... 体中が痛いよ。助けてママ........」

桑場屋武蔵は自分の独り言が酷く矛盾したものだと気づかない程朝から衰弱してしまった。











「ぬあ〜、いつでも月曜日は憂鬱だなあ.....」

桑場屋武蔵はTOAへと続く坂道を歩いていた、両脇には一面の緑しか視界に入らず、彼の前にも後ろにもほんの少しの人影しか見当らない。車両も一切通らないこの幅広の道には静寂しか存在しなかった。

TOAは東京西端の山奥に忽然と現れる広大な空間に拠している。この場所から通学時間が1時間以上の者は学生寮に入る事を義務付けられていて、さらに学園の敷地外での時間操作は一部の例外達を除いて原則禁じられているため、自宅から学園に通う彼のような生徒はかなりの少数派なのである。

「地味に遠く感じるなあ、やっぱ俺も寮に入ればよかったかな」

坂がジワジワと両足に疲れを蓄積させるのを感じて、彼は少し後悔し始めていた。

TOAは国が直接運営している実験的な学園のため、授業料や寮の家賃、その他の学園生活にかかる費用は全額免除されている。この学園に入るために人々が払わなくてはいけなかったのは受験料だけだったのだ。なので彼には寮に入るという選択肢もあった。

しかし彼はその選択肢は選ばなかった。だがこの事に特に深い意味は無い。ただ彼は事前に大多数の生徒が寮に入るという事を知っていたため、その事実に対して彼の天邪鬼が反応しただけである。


「着いたあ〜」

駅の改札のような一風変わった校門を彼が通り抜けると、大きな時計塔が憮然と立ちはだかった。

何の気なしに時計塔の上の方を眺めていると、彼の右手が唐突に振動した。

ピリリリリッ ピリリリリッ

「あれ?メールだ。こんな時間に誰だよ」

控えめな高音と震えを彼の右手の腕時計が放つのを止めると、彼は時計の1番下の横長のボタンを押した。

すると、ビュウンという電子音を出しながら時計の画面の上にホログラムが出現する。

彼の腕時計は<ポスト・クロック>と呼ばれるメール機能のついた腕時計だった。

そして彼を立ち止まり、メールの内容を読もうとした。すると彼はメールの差出人の欄の名前を見て思いっ切り怪訝な顔をする。

「俺いつあの人にメアド教えたっけ........」


『差出人:右々木楓(ウウギカエデ)(タイム・オペレート・アカデミア副校長兼抑止力統括管理担当)

宛先:武蔵君

(件名なし)

おはようございます武蔵君。

この学園での生活には勿論まだ慣れていないと思います。

そして君は特別な存在なので、これから先の学園生活について色々話しておきたい事があります。なのでこのメールを見たら直ぐに副校長室まで来て下さい。

君は生真面目だと思うので腕時計をし忘れる事もないでしょう、橋本先生には話してありますので、朝のHR(ホームルーム)に間に合う必要はありません。直ぐに来て下さい。』


「マジかよ......」

桑場屋武蔵はホログラムを消すとまた歩を進め始め、今見たメッセージの意味について考察を開始する。

右々木と橋本はこの学園で彼の秘密を知る数少ない者達である。

その右々木が彼の担任でもある橋本に話をつけてまで彼を呼び出しているのだ。重要な用件なのは彼にも直ぐに分かった。

「この学園では俺に平穏は無いんだな....!」

桑場屋武蔵には嬉しさと憂鬱がごちゃ混ぜになった複雑な感情が湧き上がってきていた。


でも俺あの変人副校長苦手なんだよなあ...... というかあの人抑止力なんちゃら担当なんていう肩書き持ってたのか.......


彼は今の所人生で一度しか入った事のないTOA副校長室の風景を思い出す。


って事はまあ金曜のアレ(・・)の事だろうなあ..... 副校長ならあいつより詳しくあの後の事を知ってるかもしれないし、よし!いっちょ行きますかっ!


彼は心の中で気分を無理やり盛り上げると、歩く足を早めた。











コンコンコン

「失礼しま〜す」

全くひと気のないTOA特別教員校舎に辿り着いた桑場屋武蔵は、やや緊張した面持ちで副校長室の扉をノックする。

ガチャ

扉を開き中に入るとそこには部屋の両端に本棚が計2つと奥の方に大きな窓が1つ、そして部屋のど真ん中に赤茶の大きなソファーがどっしりとあるだけという、あり得ないほど簡素で味気ない風景が広がっていた。それにソファーの下の絨毯の色は黒くこれまた面白味が無い。

そしてそのソファーの所に背中を預け、頭を下にし、上のへりの部分に足を乗せながら分厚い本を熟読しているスーツ姿の人物がいた。背中がグニャリと曲がっていてとても苦しそうな体勢に彼は見えたがその人物は至って平気そうだ。

「すいませ〜ん?副校長?桑場屋ですけど?」

その声を聞いたその人物は読んでいた本を静かに閉じ、緩慢な動きでソファーにちゃんと掛け直した。

「すいません武蔵君。君が来た事には気づいていたのですが、つい夢中になってしまって」

その人物は心底申し訳そうな表情をし、軽く頭を下げた。

「え?あ、まあそれはいいですよ。それで何の用なんですか?右々木副校長?」

サラサラの黒髪に少し垂れ下がった二重の瞳、白くシミ1つない肌にまだ少し幼さの残る顔の輪郭、そしてミステリアスな独特の雰囲気を纏う右々木に彼はぎこちなくも質問をする。

「はい、今日話して置きたいのは君の特別な能力と金曜日の事です」

「やっぱりそれですか....... やっぱ副校長も知ってたんですね、俺と行方(ナメカタ)との事」


まあそれ以外ないよな.......


「ええ、勿論。苳也(トオヤ)君に武蔵君を<制裁>するよう頼んだのはこの私ですから」

「はっ!?それどういう事ですかっ!?」

思わぬ返答に彼は驚きのあまり声を張り上げた。

だがそんな彼に対して右々木は一切表情を変える事なく、一心に彼の目を見つめ続ける。

「あまり気を悪くしないで下さい、武蔵君。君の能力を確かめる為に必要な事だったのです。その所為で君が酷く傷を負ったのは知っています。でも必要な事だったのです」

「........... 詳しく理由を教えて貰えるんですよね?」

彼は目の前の表情も変えず、要領を得ない遠回しな言葉を続ける右々木に少し苛立ちを覚え始めていた。


こいつの差し金だったのかよ........!!


「はい、勿論です。私が確かめたかったのは武蔵君の能力の危険性です。君の力は野放ししていいものなのか、それとも隠すべきものなのか。それを私は確認したかったのです」


危険性........?俺の能力はそんなにイレギュラーなものなのか?俺がボロボロにならなくちゃ確認できないほど?


「..........で?どうだったんですか?確認作業は」

「単刀直入に言って危険です。君はこの能力をなるべく隠すべきです」


おお.....!凄い!あいつ(・・・)の言ってた通り俺の能力はどうやら人にペラペラ喋れるものではないらしい。


「なので金曜日の事も、君の能力の事も他言無用です」

難しい顔のまま沈黙する桑場屋武蔵に右々木はどんどん言葉を重ねていく。

「因みに、今言った事をもう既に誰かに話しましたか?」

「あ、え〜と、同じクラスの倉落(クラオチ)には言ってしまいました.........」

はっとした彼は若干申し訳そうに答えた。だが右々木は特に気にする様子もなく足を組みかえた。

「.........そうですか。まあ優人(ユウト)君なら心配はないでしょう。彼はああ見えて気が利く子ですから」

ここで右々木は始めて笑い、桑場屋武蔵から視線を外した。

「さて、これで話は終わりです。教室に戻って構いません。きっと武蔵君は君の特別性からこの学園では少し不自由な生活を送るかもしれません。でも、私ができる限りサポートしますので心配しないでください」

右々木は笑顔を崩さぬまま立ち上がって言った。

「え?あ、はい.... 分かりました。じゃあ戻ります」

話の終了の宣言を受けた彼はそそくさと退出しようとする。


こりゃ俺の能力の事完全(・・)に分かってるみたいだな......


「武蔵君!この先君の周りには危険な連中が寄って来るかもしれない。その時は必ず君の信頼出来る人達に頼って下さい!」

桑場屋武蔵が扉を開け、もう半分体を部屋の外に出していた所で右々木が大きく呼びかけた。

「.........りょ、了解です」

困ったような笑顔で彼は右々木の最後の言葉に返答をすると、廊下に姿を消した。



「これから忙しくなりそうですね.........」

右々木はソファーの下からペットボトルのミルクティーを取り出すと一気にそれを半分飲み、煌めく窓の外の景色に視線を移した。











キーンコーン カーンコーン

「眠い、だるい、疲れた」

1時間目の授業を遅刻した桑場屋武蔵だったが、特に担当の先生に怒られる事もなく自然と教室に入る事が出来た。そしてあっと言う間に時間は過ぎていき、1時間目の現代文の授業は終わり、休み時間になったのだった。

「お〜いクワ!おはようっ!」

すると待ってましたとばかりに彼の1つ前の席の生徒が彼の方に振り返り、わざとらしいほど陽気に声を掛ける。

「へーいへい、おはようおはよう」

彼は目の前の明るめの茶髪で首にゴムのような銀色のネックレスを付けた少年に倦怠感満載の声を浴びせかける。

「何だよクワ元気ねぇなぁ〜。まだ金曜のダメージが残ってんのか?」

「あ〜、まあな、全身筋肉痛なのはきっと金曜のせいだな....... ってあれ!?俺、お前に金曜の事は話してないよな!?!?」

「はっはっは、俺は何でも知ってるのさ!」

彼の目の前の少年 — 倉落優人、彼のこの学園で1番最初に出来た友人へ驚きと困惑の混じった視線を送る。


おいおい....... 何で倉落が知ってんだ?

確かに倉落はこの学園で唯一俺の秘密を知ってる生徒だけど、まあ行方も気づいた可能性もあるが、とにかく金曜の事を知ってるのは俺の知るかぎりじゃ岡月(オカヅキ)とあの変人副校長一派だけのはずだ.........

なのに何でこいつが!?もしかして.......


「........... 岡月から聞いたのか?実はそれに関してちょっと話が.....」

左隣の空っぽの席を見ながら彼は倉落に声のボリュームを少し落として話を続ける。

「え?まぁそうだけど、俺もあの日色々あってな....... ちょっと廊下に行こうぜ。」

倉落は少しニヒルな笑みを浮かべると、桑場屋武蔵を廊下に促した。






「・・・という訳で俺はお前と行方の件は全て知っていま〜す!」

「....... まじで!?」

桑場屋武蔵は倉落から、倉落も実は金曜日に生徒会という組織の1人と衝突したことや、そして倉落がボコボコにされた事や、その生徒会が金曜の戦いの後処理をした事、それらの話を岡月と別の生徒会の人物から聞いた事を語り聞かせられた。


土曜日に岡月にもっと聞いておけば良かった!全然関係無い話ばっかしてた気がする......


「で、クワの話は何だよ?」

廊下の壁に寄り掛かって大きく息を吐く桑場屋武蔵に合わせ、倉落も隣に寄り掛かって尋ねた。

「いや実は俺の能力の事副校長は知ってるんだけど・・・」

「はっ!?!?何であの人が知ってんの!?やっぱ行方戦でバレたのか!?」

「うお!?食いつきよすぎだろ!!ちと落ち着けや!!」

彼は顔をグイっと近づけてきた倉落を押しやると、体の前で腕を組んで話を仕切り直す。

「おほんっ!えーっと..... 実は俺の能力は入学初日に副校長と橋本にはバレてんだよね........ まあ俺の方からバラしたんだけど」

「そうだったのか...... あの副校長は変人で有名だからなあ〜。凄い色々気になるけどまぁいいや、先続けて?」

ここで倉落も腕を組み始め、何やら思案げな表情に変わる。

「その副校長が今日俺に、能力と行方の件は他の誰にも言うなって言ってきたんだよ。それで少し朝は遅れたんだよ」

「ふ〜んそっか、やっぱ秘密にしとくべき事だったのか......... それで生徒会の奴らはいいとして岡月さんは大丈夫か?口止めしなくて?」

「え?そんな事言われてもなあ〜....... 今日は岡月休みか?それとも保健室?」

廊下に彼ら2人を除いて人影はまるでない、この階には彼らの所属する1–E組の教室しかHC(ホームクラス)は存在しないのがその事の主な理由であろう。

「今日は休みだってよ〜。まあ岡月さんもズタボロだったからな」

「そっか、確かに土曜日も何かおかしかったしなあ〜」


キーンコーン カーンコーン


もう聞き慣れた鐘の音が2人の鼓膜に響く、2人の紫色のネクタイをした少年が目を合わせる。

「ま、とにかく一回戻るか、クワ」

「ん、そだな」

そして廊下には誰もいなくなった。











購買遠くね?


その後特に不自然な出来事も起きずに午前の授業が終わり昼食の時間となったが、桑場屋武蔵は弁当を忘れてしまっていたので購買に向かってのどかな道を歩いている途中であった。


いや〜、授業難し過ぎだろ。ベクトルやべえな..... 何だあれ..... 相当演習積まなくちゃなあ〜。


暖かな春の光に当てられて、上の空で彼は道をノソノソ歩いていた。

すると、ふと、道の先に何かのシルエットがあるのが彼には分かった。

「ん?誰だあれ?」

彼は立ち止まると、前方のシルエットに目を凝らした。

どうやら、その人物はスカートを履いている事から女性であることが分かり、大股で彼に向かって歩いて近いてきている様だった。

そして紫色のネクタイをしている事から同学年である事も分かる — この学園では学年毎にネクタイの色が違っていて、現時点で最高学年の高等部第2学年から中等部第1学年まで赤、紫、黄、青、緑の順で色が指定されている。ネクタイは原則的に外す事は許されていない。


おいおい何だ!?何か俺にようか?知り合いなのかな?


その女性の歩行速度は彼の想像以上に速く、圧倒的威圧感を漂わせている事も分かった。

そしてその女性はあっという間に彼の目の前に到着し、足を止めた。

「あの〜、何か用ですか.......?」


綺麗だ......


ダークブラウンの艶やかなセミロングの髪に、紅く色気のある唇。

身長は約165cm程で、高校1年生にしては豊満なバスト、モデルの様なスタイルの良さ。

彼女は見るもの全てを魅了する美貌と雰囲気を持ち合わせていた。

だが、桑場屋武蔵にはそれ以上にその女性から感じ取れるものがあった。


怒り、憎しみ、嫉妬、嫌悪、彼を貫くその光無き眼にありとあらゆる負の感情が宿されているのだ。


ん?どう見ても知らない人なのに、何か凄い嫌われてる気がする........

いやいや!そんな初対面でこんなに嫌われる訳ないだ・・・


「ねぇ、貴方に死んで欲しいんだけど?」


その女性の冷たく、低く、聞くものを拒絶する声が彼の耳に届いても、彼の脳はそれを言葉として認知しない。

丁度太陽は雲の影に隠れたが、彼の体からは冷たい汗が噴き出し始めていた。


そしてその女性の胸には決然と『御前崎友里香(オマエザキユリカ)』と刻まれたバッジが付いている。



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