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奴隷の恋  作者: ゆに
奴隷の恋
3/29

恐れていた未来

また、仲間が減っていく。茜の間、漆の間、藤の間……。

ルナはだんだん怖くなった。


次は誰?

紅の間のアデン?

焔の間のライアン?

白の間のユーリ?

それとも、わたし?







「……ルナ、最近元気ないね」

「ずっとあの調子だな」

「心配だわ……」

藍の間の皆が窓辺に腰掛けて外を見つめるルナを見て言った。

このところルナはずっと窓の外を見ている。話しかければちゃんとした返事は返ってくるが、1人の時はぼうっとする事が多くなった。そんなルナを皆心配しているのだ。

「ルナ」

ふとカルドが声をかけた。ルナはくるりとカルドに振り返ると、いつもの様に微笑んだ。

「どうしたの?」

「怖いのか?」

「……」

カルドには時々悟い所がある。皆が気づかないほどの変化も、カルドにだけは隠せない。

「……なんのこと?」

「お前、最近ずっと悲しい顔してる」

「私はいつも通りだよ」

本心を見抜かれても知らぬ存ぜぬを貫き通すルナに、カルドは意味あり気に見るだけで口をつぐんだ。

その時だった。


ガチャ……。


「ここは藍の間という部屋となっておりまして。 基本的に他より落ち着いた子が多いです」

知らぬ男と、その男に説明をするトーマ。

……買人か。

ルナは心の中でつぶやいた。だがたいした興味も湧かず、ルナは再び外に視線を戻す。

「……あの碧の髪の娘」

「はい?」

「あの窓辺に座る娘」

ルナは衝撃のあまり男に視線を向けられなかった。

確かに男は私を呼んだ。……買い取られる?

「ルナ」

トーマの声に、ゆっくりと振り返る。皆の視線が自分に集まっているのが感じられた。

「はい」

「こっちへおいで」

行きたくなくても何故か体が自然と男の元へ向かう。

「この子はもうじき15となる。教育していくならちょうど良い年頃かと」

「……」

トーマの声は男への意識によって頭から素通りした。深い深い、漆黒の瞳。ルナは吸い寄せられる様にその目を見つめていた。

「これにしよう。明日引き取りにくる」

「そんな……っ」

ミネルが後ろで悲痛の声をあげた。

「値段はどのくらいだ?」

ミネルの声なんて気にも止めず男はトーマに視線を変えた。体から少しだけ緊張がほどける。視線をそらされて気づいたが、男の目を見ている時息が止まっていた様だ。

「藍の間は質が良い。かなりの額になると」

「わかった。詳しい事は明日来るまでに決めていてくれ」

「ありがとうございます」

そう言うと男はもう一度ルナを見た。けれどそれは一瞬で、すぐにそらして外に出て行ってしまう。トーマも後に続き、扉を閉めた。

「ルナっ!」

意外な事に、駆け寄って来たのはカルドだ。

「カルド……」

「ルナ、お前っ。……っ、なんで……!!」

「カルド。私は大丈夫だから」

「じゃあ何で泣いてるんだよ!」

「……え?」

言われて頬を触ってみれば、手が濡れた。自分で気付かぬうちにルナは泣いていたのだ。

「私嫌よ! ルナがいなくなるなんて!」

「私も嫌だわ……っ」

「皆、ありがとう。私あの人に買われちゃうんだ。明日でおわりなんだね……」

「やだぁっ!」

次は自分かもしれないと少しの覚悟はあった。けれど、いざその身に起こってみれば、やはり、

「……辛い」

想像とは絶するものだった。


静かに泣くルナの肩に、カルドの手がそっとかかる。

「ルナ。ちょっといいか?」

ルナは大人しくカルドに従った。藍の間を出て庭に出る。日が落ちかけ空は美しい茜色だ。

「なぁ、ルナ。俺ルナが好きだ」

なんの前触れもなく言われた言葉にルナは面食らった。

「ずっと言わないでおこうと思ってた。でも、ルナがいなくなる前に言っておきたかったんだ」

「……カルド、私」

「わかってる。これは俺が伝えたくて伝えただけだから、気にしなくていい」

カルドは優しくルナを見た。カルドの顔に茜色の影がおり、美しい顔が際立つ。琥珀色の瞳が綺麗な赤に見えた。

「ルナがいなくなっても、俺はルナを忘れないよ。ルナが俺を忘れても、俺は忘れない。ルナは俺の初恋の人だから」

「私も忘れないよ! 忘れたりなんか絶対しない!」

「そうだな……」

ふ、とカルドがはにかんだ。するとポケットからチャラリと何かを取り出す。カルドはルナの首にそれをかけた。

「これ、つけてて」

「……綺麗」

それは輝く銀色で出来たひし形に近い石のネックレスだった。今は茜色の夕日に当たって不思議な色を作り出している。

「夜にこっそり抜け出してさ、街まで買いに行ったんだ。ほら、売店とかで物買うために渡されるお金でさ。まあ、見つかってすぐ引き戻されちゃったけど」

そういえば最近カルドは何も買わなかった。毎日買ってきていたお気に入りのお菓子でさえも。これを買う為にわざわざそうしていたのか。きっと買いに行くのにも見張りの監視を抜けれたのは奇跡だっただろうに。大変だったはずだ。見つかって帰った後もこってりしぼられたんだろうな。それを考えるとまたルナは涙が溢れてきた。

「……ありがとうっ」

「いいんだ。俺がそうしたかっただけ」

そう言ってまたはにかむカルド。ルナは涙を抑える事ができず、しばらく声を出して泣いた。ルナが泣き止むまで、カルドはずっとルナの背をさすっていてくれた。

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