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出会い




「琴端君、ずっと好きでした」

「…ごめん。」

また…

こんなくだらねえ事で呼ばれたのかよ。

今月で五回目だ。

そりゃぁ、俺だって可愛いと思う女くらい居る。

でもトキメかないんだ。

どうしても好きになれねえ。

なんなら、今日告白してきた奴と付き合ったって構わない。

でもそれじゃ、駄目なんだ。

もっとトキメく相手じゃねえと好きになれない。

「…分かった。付き合わせちゃってごめんなさい。」

女は泣きそうな目で走って行った。

…俺はまた、女を泣かせた事になるんだろうか。

「…はぁ」

なんで女はいつも、屋上や体育館裏に呼び出すかな。


俺、琴端ことばし祐二ゆうじ

桜場中学二年の…いわゆる不良。いつでもどこでも一匹狼の俺は、授業になんか全くでない。

屋上で一人、いつも寝てた。

どうせ、何もする事ない。

今日も1日暇なトキを過ごすんだ。


屋上


皆は授業中で居ない。

静かな廊下。

追いかけてくる教師を無視し、俺は歩く。

扉を開けて広がる俺だけの空間。青々とした空が視界いっぱいに見える。

今日も風が心地いい。

それにしても暇だ。

俺は地面に寝っ転がった。

もくもくとしてる白い雲が青色の空を隠す。

…いつの間に寝てたんだろう。

風が俺を眠りの世界に連れ込んだんだ。

…このまま今日は過ごそう。

俺はそんなに眠くなかったはずだけど、爆睡していた。

ちょっと時間がたった頃、誰かの声がする。

「ねえ、ちょっと。」

…俺はひたすら無視する。

どうせ、生徒指導の女教師だろ。あいつ、いつも俺に目をつけてるからな。

まぶたを閉じて俺は女の声を聞いていた。

「ちょっと、聞いてるの?邪魔なんだけど。」

は?

こいつ、教師じゃねえのか?

俺はパチッと目を開け、起き上がった。

「やっと起きたし。…あのさ、屋上の入口で寝られても困るから。」

女はそれだけ言うと屋上の隅に歩いて行った。

…今何時だ。

11時25分。

まだ授業中のはず。

俺はちらっと女に目線を向ける。女は花柄の小さな袋を開けている所だった。

この女もサボリか。

女はパッチリした二重の目で、ちょっと茶色に近い黒の髪。

膝少し上のスカートにベージュのカーディガン。

さらさらの髪が風のせいで宙を舞う。

「お前…サボ((ぐぅうぅぅ))大きな音をたてて俺のお腹が鳴る。

一瞬にして、開いた口がふさがった。

女は驚いた顔で俺を眺める。

女は少ししてからクスッと笑って花柄の袋からお弁当箱をだした。

「これ、サンドイッチだけど食べる?」

俺は差し出されたサンドイッチを黙々と食べた。

…そういや俺、朝から食ってねぇわ。

すっかり忘れてた。

「お前が作ったのか?」

「うん?美味しくなかった?」

「…いや。上手い」

女は下を向いて髪をくるくるといじる。

「女が一人でサボりとか、珍しいよな。」

「……私、友達とかいらないから。」

女は俺を下から睨みつける。

「はっ。一匹狼装ってる女か。お前。」

「悪い?…それに私、お前って名前じゃないから。」

「だって俺、お前の名前知らねえし。」

「またお前って言った。」

「いや、だから…」

「…春川はるかわ美結みゆ

俺に名前を呼べと言うのか。

「春川…」

「何?」

「呼んでみただけ。」

こいつ…調子狂うな。

俺のキャラが崩れる。

「…名前。」

「は?」

「教えてよ、名前」

「ぁ…おお。…琴端 祐二」

「祐二君か。」

…俺って、こんな響きいい名前だったっけ。



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