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Moon  作者: まりす
2/6

下弦の月

下弦の月は夜に見るよりも、朝方に見ることが多くなる。

夜空を支配する満月も好きだけれど、朝方の陽の光に儚く浮かぶ下弦の月も捨てがたい気がする。


夜明けが来る時間が少しずつ早くなるこの季節に、いつもより少し早く目が覚めたわたしはそっとベッドを抜け出す。

彼を起こさないように…。


ベランダに出て、空を見上げるとぼんやりと輝く白い月。


…なんでこんなことになってるんだろう?

自分から吐き出される息は白い水蒸気となり、空気に拡散されていく。


あの日出会った少年は、何故かうちにいる。

いや、変なことはしてないよ?

手を出したら犯罪でしょ?

どう見たって10代だろうから。

…って誰に言い訳してるんだかね…。


あの日「帰れないんだ」と言った彼をうちに連れて来てしまったのは、彼の瞳がとても澄んでいたからだと思う。

彼をうちに連れて来ることに、抵抗はなかった。下心なんてものもなかった。

ただ純粋に、彼の瞳に吸い込まれ、その澄んだ瞳の奥にある何かを知りたかったんだと思う。


部屋にたどり着き、薄汚れていた彼に暖かいお風呂と食事を提供する。

食事といっても、コンビニのお弁当だけどね。


改めて小綺麗になった彼を見ると、案外美少年だったことに気付いた。

案外ってのも失礼か…。

でも、ふと思い出せばガードレールに腰掛けていた彼も綺麗だったな。


「ねえ、名前聞いてもいい?」

桂月かづき

と一言だけ答えた。

「いい名前ね」

そう言うと、「そう?」と小さく微笑む。


「お姉さんの名前は?」

桂月は微笑んだままの顔で、問いかけてくる。

「ん?柚衣ゆえよ」

「ふ~ん…」

わたしの名前を聞き、何回か頷く動作をすると、

「ゆえって中国語で『月』のことだよね?俺とお姉さんって月でつながってるんだね?」

桂月は聞くというより、断言のような口調で同意を求めてくる。

「ん~そうかなあ…?」

曖昧に答えるわたしに嫌な顔など見せず、ただにっこりと桂月は微笑んだ。


それから約1週間。

わたしたちはあまり多くを語らなかった。

まだ10代であろう彼が何故ここにいるのかさえ聞いていない。

そういえば、桂月の年齢さえも聞いてない。

でも、そんなこと関係ないと思っていた。


今まで一人だった空間に、何の違和感もなく溶け込んでいる桂月がとても自然だったから。

例え同じベッドに寝てても、まるで抱き合うような形で寝ていたとしても、二人でいることがとても自然で当たり前だった。


でも、さすがに1週間はやばいかな…。

その間、彼が家族に連絡を取る姿を見たことがない。

いや、もしかしたらわたしが仕事に行ってる間に連絡してるのかもしれないけど。


「おはよう。柚衣さん」

思考を遮るように、ベランダの戸が開き、桂月が顔を出す。


「おはよう」と挨拶を返すと、桂月はわたしの横に立つ。

二人が吐く息は白く色付き、やがて空気に溶けていく。

頭上には下弦の月。


前話投稿してから季節が逆なことに気付きました…orz

まあ、ご愛敬ってことで(笑)

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