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見えない家事、見えない私  作者: 櫻木サヱ
いつもの朝が重い

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6/28

誰も見てない夜

リビングの灯りを落とすと、家は一瞬で静寂に包まれた。

子どもは寝室で眠り、悠介はソファでスマホをいじる音だけが響く。

その音すら、私には遠く、冷たく感じられた。

一日の終わりなのに、胸の奥はずっしりと重い。


「……なんで、こうなるんだろう」

小さくつぶやく声に、誰も応えない。

今日も一日、私は家事をこなし、子どもに笑顔を向け、夫に“気遣い”をした。

なのに、目に見えるのは、ただの“家の中の存在”としての私だけ。

名前を呼ばれることも、感謝されることもなく、ただ動く影でしかない。


冷蔵庫の中を整理しながら、指先に残る微かな水の冷たさが、胸の奥の感覚に重なる。

夕飯を作るとき、悠介は「俺、手伝ったし」と言った。

その言葉を思い出すだけで、心がぎゅっと締めつけられる。

手伝う? 家の中の仕事は私の責任じゃないの?

夫婦は一緒に生きるんじゃなかったの?


深夜の台所で、洗った食器を拭きながら、涙がこぼれそうになる。

「こんなに頑張っても、誰も見てくれないんだ……」

小さな声でそう呟いた瞬間、自分の孤独が、まるで体を締め付ける重りのように感じられた。


悠介の寝息がリビングまで届く。

その音は、安らぎでも温もりでもなく、私の胸に冷たい現実として響く。

隣にいるのに、心は遠く、触れられない。

「手伝う」って言葉でごまかされる日々。

“ありがとう”の一言もない、空虚な夜。


キッチンの窓から外を見た。

月明かりだけが静かに照らす庭。

小さな影が揺れるように見えるのは、私の心の中の孤独そのものだった。

泣きたいのに、泣く場所もない。

声に出したら、子どもや夫を責めてしまいそうで、また押し込める。


深く息を吸い、台所の椅子に座る。

心の中で、自分自身に問いかける。

――このまま、ずっと私だけが孤独を背負うの?

――誰も見てくれないなら、頑張る意味はあるの?


涙が頬を伝い落ちる。

でもその涙さえ、誰にも気づかれない。

家族の幸せは、私の目の前で動いている。

だけどその中で、私はただ、空気のように漂っているだけだった。


夜が更ける。

冷たい風が窓の隙間から吹き込み、リビングの床をさらっていく。

その冷たさが、今日一日の重さを、余計に胸に押し付ける。

誰も見ていない夜の中で、私はただ、孤独に震えていた。


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