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見えない家事、見えない私  作者: 櫻木サヱ
揺れる朝と選択の時

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29/57

揺れる朝

薄明かりのキッチンで、美沙はいつものようにコーヒーを淹れていた。

湯気がゆっくり立ち上り、朝の冷たい空気をほんの少し和らげる。

でも胸の奥は、昨夜の言葉のせいでざわついていた。

「…悪かった、少しは、わかる気がする」

悠介のぎこちない謝罪が、まだ耳に残っている。


普段なら何気なく流す言葉だが、昨日の夜は違った。

リビングの電球が切れかけたように、微かに揺れる光の中で、彼の目が少しだけ真剣に見えたのだ。

美沙はカップを握る手に力を込めながら、胸の奥にわずかな動揺を覚える。

その一方で、警戒心も消えない。

「また裏切られるかもしれない…」

心のどこかで、弱さを見せる自分を責めた。


階段を下りてきた子どもたちが、元気に「ママおはよー!」と声を弾ませる。

微笑みながら抱き上げる美沙の手は、少しだけ震えていた。

目の前で飛び跳ねる子どもたちに安堵しながらも、胸の奥には重さが残る。

悠介は寝ぼけたまま、洗濯物を取り込もうと立ち上がる。

小さな手つきでタオルを畳み、食卓に置くパンを整える。

無言のままではあるが、彼の行動には昨日とは違う意思が垣間見えた。


「今日は、できる範囲で手伝うから…」

悠介の声は控えめだ。

それでも、普段の彼の無関心さを考えれば、確かな変化だと感じられた。

美沙はその言葉を聞きながら、手元の荷物に目を落とす。

子どもたちの着替えやお弁当の準備が並んだまま、手が止まる。

心の奥で何かが揺れる。

「このまま続けるべきか」「一人で歩くべきか」

答えはまだ見えない。


朝の光が窓から差し込み、カーテンがひらりと揺れる。

冷たい風が部屋の空気を撹拌し、子どもたちの笑い声と混ざり合う。

美沙は深く息を吸い、胸の奥の違和感に向き合う。

昨日の夜、悠介がふと笑った瞬間の無神経さも、頭をよぎる。

洗濯物を畳む手にわずかな力を入れ、微かに震える指先に、心の迷いが表れていた。


朝食の準備を終え、子どもたちを席に着かせる。

美沙は手を止めて、ふと悠介の顔を見た。

普段の無関心さは消え、わずかに真剣な眼差しがある。

しかし、その目にはまだ、変わりきれない部分が残っている。

その微妙な距離感に、美沙の胸は締め付けられる。


食卓で子どもたちが嬉しそうに笑う中、悠介はぎこちなくパンを切る。

美沙は微笑みを返すが、心の奥はまだ揺れている。

「今日、何かが変わるかもしれない」

でも同時に、「変わらないかもしれない」とも思う。

小さな光と影が交差する朝。

選択はまだ先にあるのに、重く、確かな予感だけが胸を満たす。


美沙はカップを置き、深く息を吐く。

手元の皿と並んだ食卓を見つめながら、心の中で二つの道を思い描く。

胸の奥で囁く声――

「一人で生きたほうが楽かもしれない」

「でも、まだ希望は消えていない」


そして、目の前にあるのは、二つの小さな行動の選択。

どちらを手に取るかで、これからの朝の空気は変わる。

•悠介に向かって「昨日のこと、本当に反省してるの?」と問いかける → Bへ

•そっと自分の荷物をまとめて、家を出る準備をする → Aへ

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