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見えない家事、見えない私  作者: 櫻木サヱ
独りになれないジレンマ

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19/29

心の避難

夜が更け、家の中が静まり返ると、心の奥にぽっかりと空いた空間が見える。

一日中、家事と育児、夫の無自覚な圧力に押し潰されてきた自分を、少しだけ休ませてあげられる時間。

「逃げたい……でも、逃げられない」

そのジレンマを抱えながら、美沙は小さくため息をつく。


ソファに座り、手元のスマホを開く。

SNSで流れる友人たちの楽しそうな投稿や、少し前に読みかけだった小説の一節に目を通す。

現実の重さはそこには届かず、心だけがほんの少し、自由になる。

「ここにいれば、誰にも邪魔されない」

そんなわずかな安心感が、疲れ切った心に小さな灯をともす。


でも、すぐに現実が頭をもたげる。

食器はまだ洗っていない、明日の準備も終わっていない、子どもが夜中に泣くかもしれない――

心の中で逃げ場を作っても、現実は決して許してくれない。

それでも、美沙はその瞬間だけ、心を別の世界に置くことを選ぶ。


少しだけ、窓の外の夜空を見上げる。

星の光は、遠く離れた別世界の象徴のようで、ほんのわずかながら自由を感じさせてくれる。

「ここにいれば、私の心は少しだけ生き返る」

独りになれない現実の中で、心だけは逃避する。

それが、自分を守る唯一の方法だと、美沙は知っている。


深呼吸をし、わずかな時間でも心を解放した後、再び現実に戻る。

孤独と責任に押し潰されそうな日々は続くけれど、心の逃避によって、ほんの少しだけ力を取り戻せた。

小さな灯は、明日もまた家族のために動くための支えになる。


美沙は目を閉じ、深く息を吐く。

孤独の中で生きる日々でも、心を逃がす場所さえあれば、まだ生きていける――

その思いを胸に、静かに夜を過ごすのだった。


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