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見えない家事、見えない私  作者: 櫻木サヱ
独りになれないジレンマ

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16/28

逃げ場のない日常

朝の光が差し込む前、目が覚める。

布団の中でしばらく動けず、今日もまた長い一日が始まることを思うと、心が重く沈む。

洗濯、掃除、朝食の準備、子どもの世話、夫の身支度――

頭の中でルーティンが渦巻き、もうどこにも逃げ場はない。


子どもを抱き上げ、保育園へ向かう途中も、心は休まらない。

道ですれ違うママ友たちは笑顔で挨拶し、楽しそうに会話をしている。

私はその輪に入れず、笑顔を作るだけで精一杯だ。

「私も昔はあんなふうに笑えていたのに……」

小さなため息が、胸の奥で重く響く。


保育園に着くと、子どもは元気に駆け出す。

その姿に少し救われる気持ちがある反面、私は一瞬だけ訪れた自由の感覚に焦りを覚える。

独りになれる時間は、この瞬間だけ。

でも、すぐに帰宅しなければならない現実が、また私を縛る。


帰り道、スーパーで買い物をする間も、気持ちは休まらない。

「これも買わなきゃ、あれもやらなきゃ」

頭の中のリストが消えることはなく、体も心も休まる暇がない。

悠介が帰宅する前にすべて終わらせなければと、自分を追い立てるように動く。


家に戻ると、待っていたのは散らかったリビングと、無関心な夫の存在。

「手伝おうか?」の言葉はない。

無自覚な態度が、疲労と孤独に追い打ちをかける。

家族がいるのに、逃げ場はどこにもない。

誰にも理解されず、誰にも認められず、ただ日常が続く。


キッチンで作業を続けながら、美沙は心の中で願う。

――せめて、少しだけでも独りになれたら……

でも、現実は許さない。

母であり妻である限り、休むことも逃げることもできない。

この逃げ場のない日常が、今日も私を押しつぶすのだと、胸の奥で痛感する。

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