表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見えない家事、見えない私  作者: 櫻木サヱ
名前を呼ばれない日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/29

涙の夜

子どもが眠りにつき、家の中が静まり返る。

リビングの電気を消し、ただ暗闇に包まれると、今日一日の重さが一気に押し寄せた。

朝から晩まで、ずっと走り続けた心と体。

夫の無自覚な言葉、態度、そしてパワハラのような小さな圧力――

それらが、一日の疲労とともに胸の中で渦を巻く。


「もう……限界かも……」

小さくつぶやく声とともに、涙がこぼれた。

頬を伝う温かい液体が、静かなリビングに落ちる音だけが響く。

泣くことすら我慢してきた日々。

でも今夜は、もう止められなかった。


悠介はソファでスマホをいじり、子どもは夢の中。

家の中にいるはずなのに、誰も私を見ていない。

誰も、私の疲れも孤独も、理解してくれない。

それでも泣きながら、美沙は少しずつ、自分の感情を解放していく。


涙が止まった後、深く息を吐く。

まだ、明日も家事があり、育児があり、夫の無自覚さに向き合わなければならない。

でも今夜は、静かに涙を流したことで、少しだけ心が軽くなった。

自分の存在を誰も認めなくても、自分だけは自分を抱きしめられる――

その小さな感覚が、ほんのわずかな救いだった。


美沙はキッチンの椅子に腰を下ろし、手のひらで涙をぬぐう。

「今日も、よく頑張ったね……」

心の中で自分に語りかける。

夫は変わらない。

でも、私の心は、少しだけ強くなった。

明日もまた、同じ日常が待っているとしても、

私はこの家で、家族のために動き続ける。


夜の静けさの中、涙に濡れた頬をさすりながら、美沙は小さく微笑む。

孤独で、疲れて、報われない日々。

それでも、今日の涙は、明日を生きるためのわずかな力になったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ