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8話

ブザー音が鳴り、シン側のコートからサーブが放たれて、打った者はコートから離れる

高く上がって雷姫側のコートに入る

ボールは運ばれて、雷姫の頭上に上がる

雷姫が飛びシン側のコートへと打ち、バッと音が鳴り、床にボールが叩き込まれる、周りから、感心する息が漏れる

シンは動かずに腰を低くしボールがシンの少し横を通過するのを目だけで見ていた

再びボールがサーブを打つ者に渡る

「娘さん、高く飛び上がるわね」

ラフな格好の女性は目を細めながらそう言う

「ジッと見てたわね、あの子」

和服姿の女性は自分の娘ではなくシンの方を見ていた、そのシンが左右に揺れ始める、その姿を知っている者から少し声が上がるもすぐに静かになる

シン側のコートからサーブが放たれて、雷姫側のコートにボールが渡る、雷姫の頭上に上がり雷姫が打つまでは同じ展開、ボールの着弾点にはシンがいてボールと接触、ボールは鬼の子の頭上に柔らかく上がり、シンの小さい身体は後ろに吹っ飛ばされ1回転して足を少し滑らして止まり手を前の床に置いた瞬間にダッシュする、鬼の子の手が届く所に来た時に高く飛び上がる、1番高く飛び上がった所に鬼の子からの速いボールがシンの左上にあり、シンはもう腕を振っていた

ドッ!

ボールを打つ音と床に当たる音が同時に聞こえた気がする、雷姫側の誰も動けず、シンが床で前回りして立ち上がり「ヨシッ!」という声、ボールが跳ねる音が響いて、オー!という歓声と拍手が鳴り響いた

和服姿の女性とラフな格好の女性は座っていた椅子から身を乗り出して見ていた

「娘が言ってたのはコレなの?」

「打たれる前に着弾点まで移動してたわ」

2人ともフッ〜と息をはいて

「あの高さはないわよ」

「あの高さから打ち込めるものなの」

サーブを打つ者がボールを持つと2人は喋るのをやめてジッと見始めた


6人は満足していた

何も喋る事もなく、携帯で動画を撮っている

シンの姿をアップで追う者

引きで全体を撮る者

ボールを追う者

後で編集していい感じで共有するらしい

6人は無言で撮り続ける

周りの事なんか気にせずに


鬼の子とエルフの子は面白がっていた

要求するボールの微調整が終わったら、やる事が無いと思ったら、イタズラで速くしても少し高くしても全部対応する、なので今はボールを上げた後、雷姫側のコートに注目してる

(アレをどうやって取るか)

(あの速さと変化に対応できるのかしら)

シンは右と左でボールが変化する

左手で打つと、とにかく速いまっすぐが飛んでくる、右手で打つと変な落ち方をする、ネットを超えたあたりで変化し始める、あの速度で変化するから左手で打つボールが取れるようになったら右手で打つボールには反応出来ないだろう

(前回やられたのはコレが大きいな)

(コレを何とかすればいけるのかしら)

そんな事を思いながら10点を超え始めた

もうすぐ終わりかぁなんて2人とも思い始めていた矢先に事件が起きた



全部否定された気分になる

勝負したかった、前回は連戦と緊張で万全ではなかった、今は絶好調、何としてでも今までのようにしてやりたかった

初めて喧嘩を売った、動画で見た喧嘩の売り方がこんなんだった気がする、お母様が見ている前で、関係ない、私を見ていないから

勝てばいい、打ち込んだ、また簡単に上げられる、返されたカウンター、走り込んでくる時の目付き、息を飲んでしまう、高い、何それ、知らない、かなわない

この繰り返し、そんなはずある訳がない!


雷姫が飛び上がった時、頭頂部の左右に角が生えて青く光っていた

怒号が聞こえたが、シンの周りは雷が走り、雷姫は青白く光っていた

ギョッ!

空気が裂ける音が響いて、シンが吹っ飛んだ、手首と肘の間から煙が上がっていたが1回転して、足から着地して手を前の床に着いた、吹っ飛んだ距離は今までの倍近く、髪の先端が顔の前にある、ダッシュした

ボールは鬼の子の上に上がっていた、シンの方を見ており気づいていなかった、シンが構えてダッシュしたあたりで、ボールの存在を探し見つけた時には、シンは倍の助走を終えて、速い、飛ぶ所だった、焦って間に合えと思いっきりボールを押し出した、怒声が響き渡った時には遅かった

鬼の子はシンを狙撃した



シンはゆっくり考えていた

(なんかこの感じ、いつだっけ?水?水!)

バッと目を開けて、大きく息を吸う

3回程大きく息を吸って吐いてを繰り返して、呼吸ができる事に安心する

「落ち着いて、大丈夫だから」

声の方を見ると白衣を来たドレッドヘアー、目が真っ赤の女性だった

「吸って、吐いて」

シンは言われた通りに繰り返す

「私の種族はわかる?」

「‥‥ゴーゴン族」

シンの目の前に指を持って来る

「3本です」

「うん、まぁオッケーかな、気分は?」

「ちょっと最悪で」

「どうして?ムカムカするとか?」

「溺れる夢を見たんで」

ゴーゴン族の女性は、アハっと笑って

「はい、正常!小さいのに頑丈ね、両親に感謝しなさいよ」

ゴーゴン族の女性はシンのベットの横にある椅子から立ち上がって

「話せそう?」

「たぶん」

「ありがたいわ、さっきからうるさくて」

ゴーゴン族の女性はドアの方へ歩いて行く

シンは目で追うと時計が目に入る、昼の2時過ぎ‥‥ドアがガラッと開いて、鬼の子が涙を流しながらダッシュしてくる、寝ているシンの足あたりにガバッと抱きついて

「ごめんなさい!嫌いになんないでぇ!」

「ウッサイ!」

鬼の子はビクッとすると黙ってヒックヒックと涙を流す

ドア方向を見ると知った顔と知らない顔がゾロゾロ入って来る

ラフな格好の女性が鬼の子の頭に手を乗せて

「この子の母親です、この度は申し訳ありません」

頭を下げて来る

「私が飛んでから何が起こったの?そっから記憶がないんだけど」

鬼の子がビクッとなり、ボロボロと涙を流す

ラフな格好の女性が鬼の子の頭を撫でながら

語ってくれた



結界が破綻した、中学生ならまだしも正直アレを小学生レベルでどうにか出来るとは思わなかった

麒麟族の天才児が青白く光り、我を忘れてボールを打とうとしている、角まで出るなんて、横で和服姿の女性が呆気に取られ

「やめなさい!」

叫ぶのが精一杯だった

打ち込まれた先は人族の子だ、最悪は‥‥

信じられなかった

彼女は吹っ飛び、ボールがさっきと同じ軌道に上がってる

今までの距離より長いが着地の仕方が一緒で、正直ゾッとした、ありえないものを見た感覚だった、走り出す、倍の距離を走る為、加速は充分だけど何をする気?打つ気なの?

娘がボールを見失って、明らかに焦って間に合わそ‥‥

「バカ!やめなさい!」

鬼の子が結界の無い中打ち出したボールはシンの顔面あたりを真っ直ぐに撃ち抜き

「アゴンッ!」

変な声を上げ、空中で2回転して、シンはネットに突き刺さった

エルフの子が受け取った為に落下はしなかったけど失神しており、保健室に直行

あとは、雷姫と鬼の子はさんざんに絞られて、結界の確認、修復で

現在に至る


「本当にこの馬鹿娘が申し訳ないわね」

「いえ、そんな」

シンはそんな事が起こっていたのかと言う気持ちで自分の腕を見る

よく見れば少し焦げ跡があるけど、全然わからないし、顔は何ともない、左の二の腕が痛いくらいだ

「褒めていいのかはわからないけど、ほとんど勢いを殺していたから腕の傷は大した事はないらしいよ、ウチの娘がやった方が重症よ、たまたま腕が顔との間に入ったからいいものの」

鬼の子の頭をポンポンしながらラフな格好の女性は真剣な面持ちで言うと

ドアから和服姿の女性が入って来た

その後ろには目が真っ赤になり、泣いた跡が残ったままの雷姫が入って来た

「この度は娘が申し訳ない事をしました」

深々と頭を下げて謝罪し、雷姫も頭を下げる

「いえ、そんな事は」

シンは恐縮するが

「天才児とおだてられ、感情をコントロールすることを怠った者が起こした不始末です」

和服姿の女性は後ろに立っていた雷姫の腕を掴みシンの方に出す

「この度は申し訳ありませんでした」

シンは周りを見渡してから

「聞いたら悪い事だったら、ごめんなさい」

「何でも聞いてください」

和服姿の女性は答えるとピシッしなさいと雷姫に喝を入れる

「アレって何なの?」

雷姫は視線を上げてシンに一瞬だけ目を合わせて、また下を見て答える

「種族によって色々あるけど‥小学生のうちから種族特性の力が出し入れ出きる者がいるの、私は麒麟族の原種、力ある種族と呼ばれているの」

「アレって、すごいの?バリバリってヤツ」

コクンと雷姫は頷く

「今回は油断したけど、次は完璧に取るからね」

「えっ」

雷姫が顔をあげて声を出した

雷姫だけではなくそこにいた全員がシンを見てる

「油断ってどういうこと?教えてもらえる?」

少し怒気が滲んでるかもしれない答えにシンは

「見惚れちゃたのよ、だって綺麗じゃなかった!バリバリって青くて白くて!だから、一瞬さぁ反応が遅れたのよね」

寝転がりながら天井に両手を伸ばしてさらに

「あんな綺麗なの生まれて初めて見たからさ、また良かったら見せてよ?駄目?」

シーンとしてしまって、返答が返って来ないからシンは上体を起こして雷姫を見るとボロボロと泣き始めていた

「えっ、そんな駄目だった?」

「リンよ」

シンは?って顔をしている

「本名は長いから、リンって呼んでよ」

シンを真っ直ぐに見つめてそう言う

「私の名前は「アヤポサマウヤルンル」」

シンは名前を言おうとしてるのを見て、周りが同時に言い出した

シンは

「わかるかー!!」

キッ!となっていた

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