7話
体育館に着いた時におかしいと思った
中から人の気配がするし、扉を開けて鬼の子とショート金髪の子に背中を押されて入ると中にいた全員が
「おはようございます!!」
って、デカい声で挨拶してきた
意味がわからずパニクってると
「アナタねぇ!何でその服を着てるのよ!」
雷姫が速攻で絡んできた
「ていうか、何でアナタが今日いるのよ!
勝手に来ていい所じゃないわよ!!」
「ウッサイ!」
「はぁ〜〜!」
パンパンと手を叩く音がしてカラマが近寄ってきた
「今日はありがとう!シンさん!まさか来てくれるとは思ってなかった!ソレにその服で登場とは!盛り上がってきたね!」
シンは半眼になり、首をぐりんと回して一緒に来た8人を見る
ほとんどが立っておらず、うずくまったり壁に寄りかかったりして笑いまくっている
「アンタらねぇ〜〜!」
小休憩
「つまり、バレーをしようと言われて来て、運動着がないから、姉に借りたと」
シンはジャージの上着のポケットに手を入れて不機嫌そうにしながらカラマの質問に答えていた
鬼の子とエルフの子である双璧は正座していた
この2人曰く、バレー部員は雷姫以外はシンが今日来ることは知っていたらしい
雷姫は大会が終わって以降、ずっと不機嫌で何か口を開いたらシンの事を言うので、じゃあ、もう一度やらせてみよう、でも雷姫は6年だから、追い出し会に来てもらおうとなったらしい
「じゃあ、そう言いなさいよ」
シンは双璧に言うと
「言ったら来てくれた?」
シンはクビを横に振る
「ほらね、だからシンの母親に相談したらこうした方がって、嘘は言って無いよね?」
鬼の子はエルフの子の方を向き
エルフの子もうんうんとうなづく、シンはどう怒っていいのかわからなくなってきた
「この服は何?」
「その色が今の中学3年が着る色なのよ、色を見ると反射的に挨拶するって言うか」
なんか諸悪の根源が身内にいるような
「もういいわよ」
「え?じゃあ!」
「いや、やんないわよ」
シンはこれ以上思い通りに動くのは癪であった
するとカラマから
「色々と騙したみたいですまなかった!だが、私も少しシンさんに頼りたくてな、気が乗ったらでいいから相手してやってほしい、その為には協力を惜しまない」
「アイツ人の話聞かないから嫌よ」
向こうのコートでズドンって音が鳴る
雷姫がシンを睨んでる、めっちゃ睨んでる
「聞こえたの?」
「原種とはいえ、結界の中だから大丈夫だ」
カラマにそう言われて、シンはん〜と伸びをし
「双璧を貸してくれない?」
「「え?」」
「やるかどうかはアンタら次第かな」
カラマはソレを聞いてシンに
「よろしく頼む!」
そう言って追い出し会をしているコートの方に掛けて行った
「今日はやらないのかな」
「ね?でも双璧となにしてんのかな?」
6人は風通しの良い場所を選び座っていた
赤髪の子と白髪の子はそんな事を話しながら
目線はジッとシンを追っている
銀髪の子がショート金髪の子に尋ねる
「雷姫っていつもこうなんですか?」
「色々とプライドは高いからね」
ギャル風の子は
「まぁ、全国大会でシンに完全に抑えられたしね」
「動画見たけどスゴかった」
黒髪の子はシンを見ながらそう答える
「へー、あれ長いやつでしょ、アタシも見たな」
「編集して持ってる」
銀髪の子とショート金髪、ギャル風の子は黒髪の子に近寄っていき
「後でそれくんない?」
言うと黒髪の子はうなづく
赤髪の子と白髪の子が
「「わっ」」
声を上げたのでその方向を見るとドッと音が鳴ってコートの向こう側でボールは転がっているその反対コートではシンが転がって起き上がる
鬼の子とエルフの子は興奮しながら
「今の何?」
「いいじゃない」
シンは、ん〜と唸ると
「あとボール2個分高いのイケる?」
「次は私!」
とエルフの子は手を上げた
2階の観客席では今回追い出される6年生の保護者が揃っていた
その中でも周りに誰も座っておらず、間隔を空けられている和服姿の女性がいた、ジッと雷姫を見て溜息をそっと漏らす
「珍しい、そう言うお年頃かしら」
和服姿の女性は声の方を見ずに
「じゃあ、アナタもそんなお年頃になるのかしら」
和服姿の女性の隣にジーパンにTシャツといったラフな格好の女性が座る
「娘さん、だいぶ荒れてるわね?」
「そうね、見ていてイラッとしてくるわ」
「やめてよね、私は逃げるわよ」
和服姿の女性はもう一度溜息を吐いて視線を向こうのコートにズラす
「アナタの娘さんは何しているの?」
「さぁ、なにしてんのかしら?あのジャージは中学のよね?センパイにこき使わ‥‥」
ドッと音が体育館に響き渡った
和服姿の女性とラフな格好の女性は目をスッと細めて、音を出したジャージ姿の子を見る
「確か名前はシンでしたっけ?」
「最近、娘が友達になったって言ってたけど、何で今日いるのかしら?」
2人はそんな事を話しながらシンから視線を外さない、音が鳴ってから体育館中の人が注目していた
シンは上機嫌だった
1回やったけど、やっぱり出来る
双璧はスゴイと思う、1、2回言って試しにやったらそのままを再現してくれた
もう一度やってみる、今度は右でエルフの子が上げてくれるボールは2個分プラス
ここら辺かな、たぶんここら辺
髪は緩く2箇所しか縛ってないから、思いっきりは駄目!軽く、だけど出来るってわかるとワクワクしていた
ずっと鳴っていた音がある!全国大会のあの日から!ただ、日が経つにつれだんだんと音がわからなくなって行って、イライラする!動画を見たらいいんだろうけど、自分の情けないのを見ないといけないから嫌だ!
似たような音が鳴る、そうだこんな音だ!隣のコートをみる!アイツがヘラヘラ笑って、あの音を鳴らす!皆が注目してる!お母様まで!
ドッ!
そんな音が鳴ってボールがコートに叩き込まれた、カラマはビックリしていた
(今、直線的にトスを上げてそこにシンさんが飛び込んで打ち込んだ)
トスというよりシンを狙ったみたいなボールだった
(打ち返してコートに叩き込むのもスゴイけど、あの高さがスゴイ)
よそ見をしていた
追い出し会の試合でみんながよそ見していたから、ついつい自分もという形で
「えっ?」
「出来てる」
シンは鬼の子とエルフの子とハイタッチして喜んだ
「完全体ならもっとイケるんじゃない?」
鬼の子がそう言う
「そうね、この前‥‥」
ボン!
エルフの子が喋っている最中にシンの頭にボールが当たる
「いっ、何?」
シンは振り返ると雷姫がいた
「アンタね!耳障りな音鳴らすんじゃないわよ!やるんだったら壁相手じゃなくて人でやりなさい!!私が叩き潰してやるわよ!」
周りがシーンとなる
「ウッサイ!壁とアンタってどのくらいの差があるのよ!跳ね返ってくるだけ壁の方がマシよ!」
シンは言い返すと周りの何人から息を飲む音と短い悲鳴みたいなのが聞こえた
「アンタが取れないようなボールを打てばいいのかしら?」
額に青筋が浮き出てる雷姫に対して
「バトル漫画と勘違いしてるの?点を取れるか、取れないかじゃないのかな?」
「そこまで言うなら相手しなさい!ストレートで勝ってやるわよ!」
シンは拗ねたように口を尖らせて上着のポケットに手を突っ込んで
「え〜無理かな、髪を縛るものもないし、後、服もちょっと大きいし、全力の私とやりたいんだったら無!ブッ!」
「ちょっとだけ待ってて!」
横から6人が現れてシンを攫って行った
と言っても6人が座っていた場所に連れて行っただけ何だが、雷姫はエッて感じで連れられた方向を見てるし、鬼の子とエルフの子は手を目の辺りに置いて
「アイツらもう一度みたいって言ってたもんな」
「そうね」
保護者の席からは失笑というか
「若いっていいわね」
みたいな事を小声で言い合っている
連れさられて1分後位に
「完全体!」
黒髪の子が元いた位置にシンを置く
髪は白い布のような物で頭の後ろで結ばれて4回ほど髪を縛りながら先端へと向かい、髪の先端をしっかり結んでいる
ジャージは脱ぎ、Tシャツは袖や胴回り等を詰めてシンのサイズになっている、ズボンは何もしてないように見えて熱でつけるタイプの龍のアップリケがついてあった、雷姫が
「完全体になったようね、言い訳は出来ないわよ!」
「何でアタシが悪の親玉みたいになってんのよ!もう続ける根性ないから!早く試合やって、勝って帰る」
シンは真っ赤になってコートの方に歩いて行く、母親や姉達みたいに人を煽るとか嵌める才能無いみたいと思いながら
「1セット勝負だ」
カラマは皆に告げた、何か言いたげの人もいたので、もう一度シンから提案された事を告げる
「双璧はシンさんのトス上げ要因だからブロックは禁止!あと、サーブは全部シンさん側からでサーブを打つ人は打ったら抜ける、雷姫の方は普通にメンバーは入って欲しい、で、雷姫からはシン以外はいらないだっけか?」
「はい!」
雷姫は短く答える
「1セット勝負だ、いいな?」
「はい」
シンは準備運動をしながら答えた