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35話

「お父さん!早く、早くってば!」

「わかっている」

「お母さんは先に着いてるって」

「さっきから落ち着きなさい」

サリの母親はサリの祖父を急がして、狭い道を歩いていく

「しかしだな、すごい面々が集まるもんだ」

「一緒に同窓会もできるし、いいじゃない」

サリの母親はサリの祖父の後ろに行き、背中を押す

「だから、早くってば」

「サリちゃんもシンちゃんも逃げないから落ち着きなさい」

久しぶりにこういうのもいいなとサリの祖父は思うが、もうすぐ店に着いてしまう

今日の目的地は【鬼肉】

全国大会で活躍した者たちを祝い、労う会がある

「じゃあ、開けるよ!」

「ああ」

引き戸を開け、挨拶をしようと声を出す前にその光景にビクッとして止まってしまう

カウンター席と座敷には好き勝手に座る顔馴染み達がいる、その顔馴染みはニヤニヤと笑ったり、杯を掲げて飲むフリをしてプルプルと震えたりして、座敷の一角を見ている

引き戸を開けてすぐに目に入った光景

私が主役のタスキをかけて頭にぬいぐるみを乗せたシンちゃんが腕組みをしている

シンちゃんが向いている方向には3人の子達が正座している、リン、アヤノ、サリである

「「ああ!サリちゃーん!!」」

サリの母親と祖父は初めて見る光景に叫んだ



「ねぇ、リンちゃん」

甘い声に聞こえる

だけどコレは罠!バレバレなのよ、シン!

「コッチを向いていつもの可愛い顔を見せてほしいな」

思わず向いてしまいそうになる顔を気合いで横向きで固定する

正座する私の目の前にいるシン

駄目よ!お願い!見たいの!けど、罰が怖い!

「リンは私の事見てくれないの」

「そん‥‥ブハッ!フックックッヒ!

見た瞬間笑ってしまう!まだ耐性ができていないのよ!お婆様!卑怯よ、こんなの!

「ポー、よろしく」

「あいよん、シン」

リンの後ろでポーがハリセンを右手に持ち、左手にハリセンのジャバラの部分をシターン!シターン!として近づいてくる

「アンタ!嘘よね!」

リンは振り向きポーを見て絶望する

頭に触角が出ており、力を全開では無いにしても解放している

「大会で持て余した力をココに捧げちゃう!」

ポーの片目が怪しく光る

「シン!慈悲ッんぅ!!!」

シンに縋りつこうとポーから目を離した瞬間、バツッと音がして、リンが倒れ込んだ



「アヤノは私の事を見てくれるわよね」

「今日の今は許して、シン!」

アヤノは上を見ながら必死になって命乞いをする、リンが横で頭を手で押さえて倒れ込んでいるのを横目で見る

「誰なの!あのハリセン作ったの!」

「は〜い、シンちゃんが欲しいって言うから、心を込めましたぁ〜」

「私もなの〜」

アヤノの母親と双子の母親は笑いながら言っている、アヤノは見ることが出来ないが手をあげて楽しそうにしている母親を恨む

「アヤノ」

「シン!待って!お願い!」

シンはアヤノに近づいて

「そうなんだ、嫌なんだね、ごめんね」

アヤノに言われて止まり、シンは遠ざかろうとする

「違‥ブハッアハヒャ!」

アヤノは思わずシンを見て、タスキもそうだが、頭の上で揺れているリンのお婆様からもらったぬいぐるみが駄目だった

「‥‥ルカ、熱いのをご所望らしいわ」

「任せて!ヤケドさせてやるわ!」

ルカはテンションMAXでアヤノの母親と双子の母親が作成したハリセンをポーから受け取りシターン!シターン!しながらアヤノの背後に立つ

「ねえ、ルカ、私達友達よね、グラサンが怖いわ、外して見せて」

アヤノは少し顔を振り向かせてルカを見る

「ええ、友達よ‥‥シンが後で抱きしめてくれるって!頑張っちゃうんだから!!」

グラサンをバッと取りながらルカは答える

目の涙袋、クマができるあたりが真っ白になっている

「ルカ!私もしてあげるかッックヒッグ」

アヤノが喋っている途中で、ハリセンは振り下ろしされた

「アナタじゃなくて、シンがいいのよ」

「友情って複雑よね」

リンの母親が言うと、笑いが起こった



笑いが起こる中、サリは集中していた

最悪魔力でなんとか衝撃をと思い、目を瞑って精神を集中していく

「サリ」

顔に手が触れる感触がきて、ビクッとして目を開けそうになる

「駄目よ!駄目なのよ!シン!」

今、アレを見せられたら集中力が切れて、静かに貯めている魔力が霧散する

「そう」

顔から手が離れる感触がして、

シンが目の前から離れる気配がする

「待って、わかったわよ」

おそらくはどんな手を使ってでも目を開けさせようとしてくるだろう

なら、足元からゆっくり見ていけば大丈夫、サリはそう思い、長く息を吐いて、薄目を開いて

「フッ!ん〜〜〜っ」

サリは顔を真っ赤にして耐えているが、じわっと魔力が漏れ出している

サリの目線の先、サリが座っている前に良い生地で作られたモコモコの蠍が持ち前の弾力を生かしてなのか、フヨンフヨンと揺れている

「駄目よ!蠍ちゃん!まだ独り立ちは早いわ!」

シンが小芝居をすると

「キャハッ!なん!クフッ!」

サリは決壊し、魔力が霧散する

「‥‥カヤ、報酬は出すわ」

「ホント!頑張るよ!シン!」

腕まくりをして、ブンブンとハリセンを振り回しながら、カヤがサリに近づいていく

「待って!カヤ、その耳と尻尾、久しぶりに見たけど可愛いわよ」

「ありがとう!さっきシンにも言ってもらえたから、なんか新鮮さが足らないけどさ」

カヤはサリの後ろでハリセンを振りかぶる

「待って!あのね、そう報酬って何?コチラも出すわよ!」

「時間稼ぎが丸見えだよ、サリをぶっ叩いて、シンからのハグ!最高だよーん」

「はぁ?こんッッハオぁグン」

「ああ!サリちゃん!」

サリの母親は手を伸ばして小芝居をするが、顔は笑っている

ウイの母親はお猪口で酒を飲んで、フッーーと息を吐いてから笑い

「そりゃまぁ、寮長があんな場所で怒るはずよ」

いつもこんなんだろうと想像して笑った



リンとアヤノとサリはなんでこんな目に説明を求めます!と抗議してきて、納得できなければハグして!ギュッがいい!ゴロゴロもしたい!なんならヨシヨシとかもつけて!

エルとヒル、ウイが混じって要求し始める

シンは溜息混じりにわかったわよと言うと

「まずはリン!」

「ええ、聞きますわ」

シンは左手を見ながら

「痛かった‥‥」

リンはうぐっと呻く

「あんな全力はないんじゃ無いって」

「でもアレでシンは‥」

「保健室のゴーゴン族の女医さんが言ってた」

「‥‥理解できましたわ」

シンの言葉に、リンは降参するが

「麻酔って言って、合計で4回も噛まれたのよ、頭をカプッとね、まぁ1回は麻酔を覚ます為だったけども」

追い打ちを掛けていくが、頭が動くたびに蠍ちゃんがフヨンフヨンと動く

「だから、りか‥‥理解できましたわ!」

「次は双璧!」

「「はい!蠍ちゃん!」」

アヤノとサリが声を合わせて返事をする

シンはピタッと止まり、頭の上の蠍ちゃんは動きが少し大きくなって、ハサミと尻尾をフヨンフヨンと動かす

「アンタ達はなんでそんななのよ」

アヤノとサリは頭に?を出す

「シンちゃ〜ん、その子ははっきり言わないとわからないわよ」

「サリちゃんもテストと察しは極めて悪い方よね」

「はぁ〜、私の所もなのよね、シンちゃん頑張って!」

アヤノの母親とサリの母親、リンの母親はシンにエールを送る

アヤノとサリはお母さん!と抗議している

「誰が私を誘ったのよ!そして、なんでアンタ達は2階にいんのよ!」

「そうよ、左しか」

「そうなの、使ってなかったんだから」

シンが抗議すると、エルとヒルが続けてくる

「いや、待って、何を言う気」

シンが待ったをかけるも

「そうよ、全国大会で1回も右で打って無いんだから」

「練習の時は、交互に打っていたのにねぇ〜」

ウイとカヤがアヤノとサリを見ながら言う

「途中から取られたのは右で打ってないから」

ルカはうんうんと頷いて

「そうだよ、真っ直ぐの左だけでイケたのもすごいけど、変化する右が無いとさ」

ポーはサリを見ている

「ほう、そうだったとは気づかんかったのぉ」

「私は気付いていましたのよ」

双子の祖父は感心したように

双子の祖母はエヘンとしている

「「だよね、シン!」」

エルとヒルは揃ってシンを見る、少し赤くなったシンが

「アンタ達で練習し過ぎたのよ、タイミングとか高さとかが、リンでも違和感を感じるくらいになったのよ」

「「シン!」」

アヤノとサリがシンに抱きついて

「ごめんね」

「来年こそは」

そこにリンが3人に抱きついて

「最後の年は最強ですわね」

不意に、シンはスルリと抜けた

アヤノとサリ、リンがシンになんでと声をかける前に、背後から殺気と力を感じる

「どさくさに紛れて」

「反省無しと抜けがけ」

ハリセンが3本に増えており、ブンブンと振り回されている

3人は涙目になりながらも

「「「いーじゃないのよ!これくらい!」」」

「「「「「「問答無用!!」」」」」」

わちゃわちゃと力を解放してじゃれ合う

シンは少し離れた所で

「お〜、こわ」

皆と笑い合っている



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