20話
「はぁ〜、さっむ〜〜い」
静まり返った道をゾロゾロと進む中にいる1番小さい子が白い息を吐きながら言うと
「鍛え方が足んないんじゃない?」
「最近は運動とかしてるの?」
アヤノとサリは背中を丸めて歩くシンに尋ねる
「写真を送った時にバレーやってたわよ」
シンは苦々しく言う
「クリスマス会のヤツ?」
「シンダルマ」
ポーが聞くとルカが携帯で写真を見せる、写真は大勢で撮られており、その中でシンが雪だるまの格好をして、両親や兄妹に囲まれている
「コレは笑ったけど、その前は月初めだっけ?」
「もっとちゃんとしておきなさいな」
「コレもアリだったわ」
カヤとウイがルカの携帯をのぞいてニヤニヤして言うと、リンがシンを見ながら言う
「遊びだし、三次選考もあるしね、今は勉強ばっかやってる」
「まぁいいけどさ、けど楽しみだなぁ!シンの着物」
「エルとヒルが写真は絶対って言ってたもんね」
アヤノが会話を今からの話題に切り替えて、ポーが続く
「できたって連絡あったんでしょ?」
「ええ、今日のお楽しみなんですって」
「ビックリ箱」
「何が出てくるのよ」
「のらなくてイイわよ」
話しながら、歩いていく
12月の二次選考の後にリンのお婆様が
「ごめんなさいね、後少しだと思うんだけどね」
身長等を測られて、その日はリンの家に泊まって、次の日は開法学院の体育館でバレーをして帰った、年末が近づいてくるとシン以外は着物が出来たと言って、初詣合わそうとメッセージが届いてくる、エルとヒルは神事の役目があるからソレが終わったら合流するというメッセージと写真絶対!と送られてきた
「寒いし、寒い」
シンは手を服の袖に隠しながら歩いていた
「ご来店くださりありがとうございます」
店側から入ると、リンの母親が丁寧に挨拶してきた
「‥‥‥」
シンは先頭で店に入った瞬間に固まって、ジッと無言でリンの母親を見ていた
「どったのシン」
カヤが尋ねると、ゆっくり顔を動かしてシンはリンを見る、リンは目を逸らす、シンが回れ右して歩こうとしたら、リンの母親に後ろから抱きしめてられた
「冷たくなっています、奥で暖まれていってください、コラ!暴れないの!」
「絶対なんかある!企んでる時のアンタらと一緒の顔してる」
「感が良いのは知ってるけど、ここまで来て逃げれると思わない事ね」
シンはリンの母親に担がれて、店の奥に運ばれていく
「危なかったわね」
サリはシンに手を振りながら小声で言う
「ここでバレてよかった」
「何気に会話に出しててよかったね、警戒心が薄れてたし」
少し間を開けてシンの後を追った
店の奥、何回か襖を超えた先にデカい和室がある、大きい部屋なのに寒くない
壁際に何枚も和服が飾ってあり、木箱も何個も置かれているが、ソレでも和室は大きく、シン達が入っても余裕があった
「お連れしました」
シンを担ぎながら、リンの母親がリンの祖母に言う、シンは抵抗をやめてダラっとしている、それでもリンの祖母に顔をあげて何か言おうとしたが、先にリンの祖母が言う
「予想通りね、時間がありません」
リンの祖母はパンパンと手を叩いて
「皆さん、やってあげてください」
壁際に飾ってあった和服と壁の間から顔が出て、こちらへと呼ばれてシン以外が各々に散っていく、まるで決められていたかのように
「これは‥なに」
「シンちゃん、可愛いって言ってくれたわね」
リンの祖母はニコニコしながら黙ってるシンに続けて言う
「仕返しに今日はたっぷりとわからしてあげるわ、大人をからかうとこうなるって」
「そういう所もリンちゃんにそっくりです」
リンの母親の肩でダラーとしながらシンが少し反抗するとリンの母親が横を向いて笑う
「反省がない子はお仕置きね」
言う言葉は物騒だが、笑顔でシンをかけてある和服の向こう側に連れていった
シン以外が着替え終わり、和室の真ん中で待っていた、壁にある和服はシンがいるのを残して全部片付けられていた、その和服の向こう側から声が聞こえてくる
「真っ直ぐ立ってくれる?そう」
「うん、うん‥‥」
「なんかこう‥‥」
和服の向こう側から微妙な、けど納得した様な声が聞こえてくる
「お婆様まだですの?私達にも見せて欲しいですのに」
リンが待ち遠しいと言った感じで言う
和服の向こうから、リンの祖母が出てきて、リンの母親がシンの手を引っ張って出てくる
シンの和服は白を基調として見るたびか見る角度、歩くたびに色んな色に変化、またそんな色が薄くぼんやりとシンを囲っている、頭は皆とお揃いの組紐でバレーをする時の様に括られている、シンは皆を見ると、リンは青を基調として薄く白く見える、ウイとポーは黄色を基調として、ウイは白く、ポーは黒く薄く見える、アヤノとルカは黒を基調、アヤノは赤く薄くみえ、ルカは青く薄く見える、サリとカヤは緑で、サリは薄く水色、カヤは薄く黒に見えた、頭はお揃いの組紐で整えられている
シンは少し照れながら
「どう」
と言うと、誰も何も言わずにシンを見てる
「七五三」
リンの母親が言うと、全員が吹き出した
外に出ると寒く感じるがそれほどでもない感じがする
「シンちゃんは可愛くなりすぎただけよ、気にしないで行ってらっしゃい、可愛いわよ全員!」
「ほら、シンちゃん笑ってね!さっきは調子に乗って悪かったわ!ね!全員可愛いんだから」
なんかいい風にまとめて、シン達を店から見送る
シンはあの後、リンの母親に飴の入った袋を持たされたり、写真を撮って、コレ広告に使えないとかリンの母親と祖母は言い合っていた
リンやカヤ、ルカ、ポーはシンを見るたびに笑いが止まらなくなっており、ウイとサリは慰めていたが、シンが大人しく飴を持って写真を撮られてからは喋れなくなっていた、アヤノは着付けをもう一回やり直すほど駄目になっていた、シンはみんなは綺麗って笑っていた
「ありがとうございます」
ブスっとしながら言ってカラカラと鳴らしながらシンは歩いていく
「行ってきます」
と全員があたまを下げてシンに追いついて歩いていく、カランカランと鳴らしながら、歩いて遠ざかっていく背中を見つめながらリンの母親がふふっと笑って
「もっと厳かになると思っていたのよ、私」
「それを言うなら、あの人になんて言おうかしら、寝ていてくれて助かったのかしらね」
「きっと悔しがるわよ」
「シンちゃんが言った通り、全員が揃っていないから意味がないかもね」
語り合いながら2人は店に向かって歩いていく
「さてと私達も用意しますか」
「間に合うと思うから、一休みする?」
「そうね、いいお茶請けあったわよね」
仕事の後、気の抜けた親子の会話をしながら店の中に入っていった