表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/37

19話

朝は何故かこの時間に目覚める

この1年半、バレーをやり始めた時からこの時間に起きる様になっていた、明日からは少し遅く起きようと思う、そんな事を思いながら周りの状況をシンは見る

昨日はアヤノの家に泊まって、今日はリンのお爺様の誘いで遊びに行って、夕方に帰る、ダボついたTシャツを着ていた為、ズレていた肩の部分を引っ張る

「あっつ、近いっての」

シンの周りに寝ている人がいる、昨日はハシャいだ、色々とグシャグシャだったのに最後には笑っていた自分がいる

そっと起き上がる、昨日足が言う事を聞かなかったのに少し痛いくらいで立ち上がる事ができた、ドアの方を向いて、口だけごめんと動かしながら、寝ている何人かをまたいでドアに近づいたら、ドアが開く、カヤがアクビをしながら立っていた

「どこ行くの〜」

「トイレどこか知ってる」

「出て右」

カヤはシンに答えながら、部屋に入っていって空いてる場所にポスっと横になる

シンはトイレに行き、出ると下に行く階段を見つけて壁に手をつきながら下に降りていく

大きな居間があり、男性が4人イビキをかいて寝ていた、そこらに置かれた酒瓶が何本か空になっている

そこを通り過ぎて、縁側に出る

「少し涼しいかな」

日が上がってすぐの時間、ん〜っと伸びをすると風が少し吹いて、頭の上からチリンチリンと音がする、風鈴かなっと思って顔を上げるとアヤノの母親が笑顔で背後にいた、挨拶をしようとするとアヤノの母親がシンの耳を塞いでから体を押し付けて前に行く様に押してくる

空気が震えて、なんか鈍い音と怒声が聞こえ、情けない声が聞こえた気がしたが、アヤノの母親に連れて行かれてしまった


「朝早いのね、ビックリしたわ」

何事も無かった様にアヤノの母親は言うとお茶を出していた、連れてこられたキッチンでシンは受け取ったお茶をすすりながら、

「いつもこんな時間です‥‥昨日はご馳走様でした」

「いいわよ、道楽みたいなもんだから」

棚から煎餅が入った皿を出しながらアヤノの母親は尋ねた

「どんな予定だったっけ?今日」

シンの顔くらいある煎餅を何回か割ってシンに渡すと、シンクで手を払う

「リンの所に行って、夕方帰ります」

「‥‥大丈夫かな」

アヤノの母親が呟くと玄関の引き戸がガラッと開いて、リンの母親が入ってくる

「おはようございます」

シンは挨拶すると

「早いわね、おはよう」

と言って、シンの横に座り、割ってあった煎餅を摘んで口に運ぶ

「引き取り?」

お茶を出しながらアヤノの母親が聞くと

「付き添い、大激怒だから逃げてきたわ」

「ウチもお母さんに任せてきた」

シンはそんなやりとりを煎餅をパキッと食べながら聞いている

「シンちゃんは気にせずに来なさいね」

リンの母親は笑顔でシンの頭を撫でる

「お、ねぼすけもアレに驚いて起きてきたか」

シンはアヤノの母親が見ている方を見ると、アヤノとウイ、リンが溜息をつきながら、カヤとポー、エルとヒルは目を擦っている、

ルカはシンを見つけると小走りになり抱きついてくる

「あっついの」

「今日は抵抗する」

「ホントに」

とポーとカヤ、エル、ヒルはシンにくっつく

「暑いってんでしょうが!」

キッ!となると笑い合う

「仲良いわね、あんた達は」

アヤノの母親が笑いながら言うと、ゴッと空気が震えた気がした、アヤノとウイ、リンが溜息をつく、リンの母親は煎餅をパキッと言わせながら食べると

「あっちも仲良いいのよ、アレで」

と溜息つく3人を見てお茶をすすった


「また来なさいね」

アヤノの母親と祖母に見送られて、鬼肉の店から10人は出て行く

時間は昼前で外に出ると蒸し暑かったが、リンのお婆様に

「ゆっくりね、ゆっくり来てね」

と言われたので、朝ごはんをアヤノの母親に作ってもらい、ゆっくりしているとアヤノの祖母がソーメンを作ってくれたので食べて、そろそろかなっと思って目的地に向かっている

「あつい」

ルカは手をパタパタしながら歩いている

「今年はいつから涼しくなるの」

「さあ、でも少しはマシになったのかしら」

「早く冬になって欲しいな」

「ね!寒いのは着れば我慢できるから」

「あはは、あっつ」

「ちょっとそこ詰めてよ」

「押さないの」

「なにこれ、なにコレ」

汗をかき始め、固まって進んでいく

「あっついってんでしょうが!!」

固まって、凹んでいる真ん中からそんな叫びが聞こえた



前に来た店舗の裏側に回って、今回は家の部分から入る

「お邪魔します」

「はい、いらっしゃい」

リンのお婆様が出迎えてくれて、前に来た部屋の奥に案内される

「よく来てくれたね」

小声でリンのお爺様が迎えてくれる

「お邪魔します」

「くっ!」

リンのお爺様は額に手を当てて、苦悶の表情をし、手元の水を飲みフッーーと息を吐く

「大丈夫ですか?」

「大丈夫、少し君達の若さに押されただけだよ」

今さっきより声を出して、リンのお爺様はシンに答える

「だらしない事、しっかりとしてください」

リンのお婆様は用意された座布団にシン達を誘導し、リンのお爺様の横に座って言葉を続ける

「よく来てくれたわね、と言ってもこの様子ではカッコがついてませんけどね」

「そうイジメないでくれよ」

リンのお爺様は苦笑する

「この前はありがとうございました、組紐、兄と姉達はとても喜んでました」

去年の夏に作った組紐をその日の内に兄と姉達に渡していた、シンはリンのお婆様に作ってもらった事を言うが、姉達はなにも知らずにハシャぐ妹にそのうち知るであると思い、プレゼントをくれた気持ちにお礼を言って、組紐は3本ともファミリーの家に飾っておいた

「よかった、気になっていたんだよ、その節は悪い事をしたね、2度とないように対策したから」

「次はないから、安心してね」

少しピリッとした空気になると

「今日はお婆様が笑ったお詫びでしたわよね」

リンが言うと、リンのお婆様がハッとしながら

「そう、お詫びにね、今年の暮れに引き取る予定の物をもらってもらえないかなっと思ってるの」

「引き取る物?」

「着物だから、初詣とかどうかと思ってね」

リンのお爺様はシンの疑問に答えながら、横に置いてある木箱に手を伸ばす、リンは箱を見て少し寂しそうに、すぐに笑って

「シン、もらえる物ならもらいなさいな」

ウイとポー、サリはリンの様子に気づかない振りをして

「初詣はみんなで着物着て行こうね」

「今年は、ばあちゃん貸してくれるかな」

「アヤノはどうするの?買いに行く?」

「なんかあるかな、いいの?」

「色はどうする?」

「全員被ったら笑うよ」

ワイワイと喋り出す皆を見て、

「まだ半年ぐらい先だし、もらう事も‥‥」

シンはエルとヒルが黙っているのを見て

「どうしたの?」

「「ううん、なんでもないよ」」

ふ〜んと言いながら、リンのお爺様の方にシンが向くと、おでこに手を当ててむっーと唸って水を飲む所だった

「も〜本当に、シンちゃん、コッチに立ってくれるかしら」

シンはリンのお婆様に手招きされて、姿見の鏡の前に立つ、リンのお爺様は木箱を開けて中から反物を取り出す

「えっ?」

何人かは声を出してリンを見る、リンは声が聞こえた方を見て、フッと笑い、肩をすくめる

「こんな色とかどうかな?」

リンのお爺様がシンと姿見の間に少し伸ばした反物の生地を広げる、リンのお婆様は

「良い色だと思わない?シンちゃんに似合うと思ってね」

シンは広げられた生地を鏡越しに見て少し動いて、生地を直に見て、少し後に下がって、生地を見る

「どうしたんだい?何か駄目だったかい?」

シンはあっ、いやとか言いながら、しゃがんで生地を見て、ん〜と言いながら

「カヤ、ポー‥‥どう思う?」

「は?」

「いや、無理よ、パス」

カヤとポーは首を振りながらイヤイヤをしてる

「気に入らなかったかしら、他の色がよかったかしらね?」

リンのお婆様は残念そうにそう言うと

「ふーむ、他の色となると‥‥」

「あっ、そのまま!」

リンのお爺様が生地を下げようとすると、シンが手で待ったをかけ、リンの所へ小走りに行って、腕を引っ張って姿見の前に立たす

「リンが力解放した時に見た色、去年見た時この色だったのよ」

生地の色は青を基調とし、薄く白を纏っている

「あの時さ、こんな色してたなぁって思って見てたんだけど、やっぱリンに似合うよね」

誰も何も喋っていない中、シンは興奮気味に喋る

「カヤとポーならなんか言ってくれ‥るか‥?どうしたの?」

シンは喋っていると後ろからウイとサリに捕まえられてゆっくりと彼女達の方に連れて行かれる、抗議の為になんか言おうとするとポーに口を抑えられて、お願いのポーズをされる

「リンの本気を間近で見た事があるのはシンちゃんだけだったね、どうだいリン?」

「別に」

「照れちゃって可愛いんだから」

「別にリンを後回しにしたつもりはないよ、ただ、色合わせをしてただけだよ、ホントに」

「知らないもん」

「拗ねちゃって可愛いんだから」

「いやいや、そんなに可愛くならないでくれ、なんか欲しいものはあるかい?言ってごらん」

「いや、もうヤダぁ」

「もう可愛い!シンちゃんに言われた通りにこの色でリンは決まりね、少し早いけど孫のお披露目ね!」

っと、ふと気づいた様にシン達の方を見て、ピタッと止まる

「どうだい?うちのリンちゃんは?」

リンのお爺様に笑顔で問いかけられ、シンに視線が集まる、そういえばと思い

「お婆様に似て、すごく可愛いです」

「あ、アンタねぇ〜」

真っ赤になったリンがシン達の方を向く

「「「「「「「「「可愛いよ!リンちゃん!」」」」」」」」」

リンは口をパクパクさせて

「うぅぅぅ〜〜」

とシン達に襲いかかる、キャ〜と言いながらわちゃわちゃとしている、リンのお爺様はその光景をみて、スッと立ち上がり、奥の部屋へと行ってしまう、シン達はピタッと止まりその背中を目で追う

「シンちゃん、今度コッチに来る事はある?」

シンは目線をリンのお婆様に移して、えっとと言いながら答える

「確か二次選考までが今年だった様な」

「一次選考が10月終わりで」

「二次選考が12月初めだよ」

考えているシンにエルとヒルが続ける

「なら、12月の試験が終わったら、ここに寄ってくれないかしらね?」

リンのお爺様が開けっぱなしにした襖を閉めながらリンのお婆様は笑顔で言う

「終わる時間がわからないんでどうとも‥‥」

「何時になっても構わないわよ、なんだったら泊まっていってもいいのよ」

「そもそも一次選考が通らないと‥‥」

「大丈夫」

ルカとウイがシンに抱きつく

「落ちる理由がないわよ」

「髪方とかどうする?」

カヤがシンの髪をツンツンしながらう〜んとしていると

「組紐って駄目かなぁ?」

シンがカヤを見て言う

「いいわね、新しいのを作っちゃいましょ」

リンのお婆様がパンと手を叩いて立ちあがろうとする

「前もらったヤツがあるから持ってきてもいいですか」

シンの言葉にリンのお婆様が動きを止めて少し考えて

「皆お揃いのを作りましょうか?」

再び動き始めて、襖を開けて出ていく

「いいのかな、リンちゃん」

「いいの?リンちゃん」

「間に合うのかな、リンちゃん」

「どうなの?リンちゃん」

「答えなさいよ、リンちゃん」

リンはフルフルと震え始めて

「知らない!!」

と言って襲いかかってくる、シンは笑っていたが、ふと疑問に思い聞く

「引き取り予定なのに間に合うって何?リンちゃん」

「知らないって言ってんの!!」

リンはシンに飛びかかっていった


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ