17話
「今日は未熟ながら私達がお相手をさせていただきます」
シンはカウンターでシン専用の椅子に座って、カウンター中にいるアヤノの祖父から頭を下げられていた
「よろしくお願いします」
シンは頭を下げてそう返す
後ろの座敷に座る初対面の年配男性やら女性やらにさっき挨拶された、リンのお婆様は知ってるけど、後は多分初対面だと思う
「私では役不足ですが、精一杯やらしていただきます」
後ろの座敷はアヤノの父親と母親が対応するらしい
「今日はいっぱい食べていってね」
目の前にいるアヤノの祖母は優しい笑顔でシンに言うが、めっちゃ素早く野菜を切っている
座敷の方は始まったらしい、オーとか歓声が上がっている
目の前のアヤノの祖父は動こうとしなかった、シンはジッと見られて居心地が悪いとかではなくて何かシンに聞きたいことがある様な気がして、黙って見ていた
「来年は開法に来るのかい?」
「ちょっと!私が聞きたかったのに!」
アヤノの祖父がシンに聞くと、アヤノから抗議が上がる
「なんでですか?」
「バレーをやるなら、後ろの子達とやった方が良いと思ってな」
シンはジッとアヤノの祖父を見つめて
「バレーはやりませんよ、今日までです」
「は?なんでよ!」
「意味がわかりませんわ!」
サリとリンが立ちあがろうとするもアヤノの両親に制される
「シンちゃん、なんでやらないか教えてくれる?」
アヤノの祖母は皿に野菜を綺麗に盛りながら聞く
「だって‥‥‥」
そこでシンが上を向く、アヤノの祖父はコテを持つと、アヤノの祖母は肉をシンの前の鉄板に滑らす、周りがシンの言葉を待っているとアヤノの祖父が肉をサッと焼いて、シンの前の皿に移す、シンは肉を見て箸でつまみ食べる、アヤノの祖父は肉をシンの前でコテで押さえつけて焼き出す、ジュ、ジュュュ、ジュと音が響き始めてアヤノの祖母が手拭いをシンに渡す
「お前さんはよくやった」
アヤノの祖父がシンに向かって優しく言った
「グゥゥゥー」
シンが泣いていた、座敷の面々はビックリしたが、アヤノの両親が焼いた肉、野菜が前に置かれ始めて目で催促される、ウイの祖父が酒の入った杯を置き
「何を泣く?よくやっ「やってない!!」」
シンは食い気味に答え
「全然やってない!今年で最後!中学になって人族はできないからって!だから是が非でも欲しかった!でも、無理だった‥‥グゥゥゥ」
法被を着た年配男性は隣に座る年配女性に頭をペシっと叩かれている、シンは顔を上げてアヤノの祖父を見て
「開法中学は皆に誘われたから、、、行くけど、、進学科になると思う、、」
話しながらグスッと鼻を鳴らす
「嘘?進学科?スポーツ科じゃないの?」
ポーが声を上げる
「シン?知ってるの?めっちゃムズイよ」
カヤはシンの背中に向かって言うも
「知ってるわよ、あんまし学費も出せないと思うから、、、特待生で行くと思う」
ウゥっと涙がまた出てきたのか手拭いに顔をうずめる
「開法の進学科特待生!倍率知ってますの?」
「エルとヒルが受けるならイケるけど」
リンは聞き、ルカはエルとヒルを見る
「シン、エルとヒルに勝てんの?」
「やめてよ、ルカもアヤノも」
「勉強協力するよ」
アヤノが聞くとエルとヒルが続く
シンは上を向き
「ウッサイ!!負けてるわよ!万年3位でゴメンね!!」
また手拭いに顔をうずめる、皆んなが?を出している中、エルとヒルが
「全国模試で?」
「ホントに?」
「そうよ、文句ある?」
シンが答えると、携帯を操作して出した画面を座敷に向ける、全国模試3位シン・フジムラと書いてあり、名前下のグラフ表は真っ直ぐ平行に伸びている、何回前かはわからないがずっと同じ順位なのだろう画面が映し出されていた、ルカは両手で顔を隠して
「4位で自慢したのが恥ずかしい」
「少し聞いてもいいかな?」
リンのお爺様はシンの方を向いて声を上げた、シンは頷く
「さっき是が非でも欲しいといった物とはなんだい?よかったら教えてもらいたくて」
シンは半眼になって手拭いで鼻から口を抑え、グスッと鼻をすすっている
「大丈夫よ、シンちゃん、私達は笑わないから言ってみて‥‥初優勝?」
リンのお婆様は優しく言って、答えを催促する、シンは半眼のまま、リン、アヤノ、ポー、サリを見て
「二つ名」
一瞬間が空き、シン以外が爆笑した
アヤノの祖父はグギュと音を出したが、横を向いて吹き出した、法被を着た年配男性は下を向いて肩を震わせて、背中に羽が生えてきた
「笑わないって言ったのに!!」
抗議するシンにポーは後ろから抱きついて
「へへへっ、シンは二つ名が欲しかったんだ、私の二つ名知ってるの?」
「残影でしょ」
ポーは目を大きく開けてからシンにキューって抱きついた
「シンちゃんはどういう二つ名が欲しいの?」
ウイの祖母はシンに聞いた
「かっこいいのが欲しかった!」
女性陣へのダメージは軽微だったが、男性陣は再度ノックアウトされた
シンはよく食べた、肉も煮物もご飯も、涙もおさまり、からかわれたり、反抗したり、皆が食べる量に驚いたりしている
シンが食べ終わり、食後のアイスを食べ始めると、アヤノの祖母話しかけた
「シンちゃん、中学でもバレーやってみない?」
シンはアイスを食べる手を止めて
「身体が小さいからやめた方がいいって言われてるんで」
「そうね、人族は団体競技をあんまりしないわね、だから遊びでね」
「そうだよ、シン、しようよ」
「私達もやるんだしね」
アヤノとサリからも声が出てくる
「遊びでやったら迷惑かも」
シンが言うと、アヤノの祖母は店の奥を見る、シンも店の奥、座敷とカウンターの間の通路の突き当たりを見ると棚が置いてあるが、何も置かれておらず、ただの木で組まれた棚が置いてあった
「バレーをやってくれたら、煮物食べ放題にしてあげる」
アヤノの祖母はシンの方を向きなおって言う
「オマケで肉もつけてやろう」
「やる」
アヤノの祖父が付け加えるとシンは即答する
アヤノの母親も近づいて来て
「肉じゃがも付けてあげるわ」
シンはエッと驚き、アヤノの母親を見て
「肉じゃが出たら、アヤノの弟か妹が出来るんじゃないのんッ」
アヤノの母親が近くにあったお盆でシンの頭を素早く叩く
「年1じゃ食べ放題にならないわね」
「お母さん!!」
アヤノの祖母の言葉にアヤノの母親は抗議する
「感想をどうぞ!」
「勘弁して‥‥」
サリに言われて、アヤノは両手で顔を隠してた
そんなやり取りを見ていたリンのお婆様はリンのお爺様を肘でつつく、わかっているよと良いたげにリンのお爺様は頷き
「シンちゃん、明日空いてるかい?」
シンはん〜っと考えるとポーが
「シンの母親には了解とってるし、明日は自由じゃない?帰るのは明日の夕方で、いいって」
「いつの間に‥‥私が知らないってどう言うことなのよ」
その間にリンの母親はリンのお婆様の方を見る、リンのお婆様は目を細めるとリンの母親は立ち上がって外に出ていく
「じゃあ、明日の朝空いていたら、この前の店に来れるかい?」
「いいですけど、この前はリンに連れて行ってもらったから場所が」
シンはそう言うとリンを見る
「案内するわ、起きたら向かうでいいんですの?」
「ああ、助かるよ、そんなに急がなくていいよ、待ってるからゆっくり来たらいい」
リンのお爺様はリンにそう言うと頭に?が出ているシンに対して
「いやなに、先日来た時のお詫びと先程妻が笑わない約束を破ったお詫びをしたくてね」
リンのお爺様はリンのお婆様を見る
そこでリンの母親が外から帰ってくる
リンのお婆様は
「ええ、キッチリとお詫びして差し上げますわ」
シンはそれを聞いて、リンを見ながら
「リンそっくりだ」
リンの母親はシンにもたれかかって爆笑した