16話
シンは屋上でカバンを枕にして寝転がっている
1階で、寮長に会ってダメ元で許可を取って見ると
「知ってる子って事で特別だよ」
って言われて通された‥‥
夕日がもうすぐ沈む
「何にも考えたくないなぁ」
そう言いながら、枕にしているカバンの中に手を入れる、別に何を探している訳でもないがゴソゴソと探る、携帯が手に当たり、カバンから引っこ抜いて、操作しようとしてポケットに入れる
「めんどくさいな私って」
そう言って目を瞑り、フッーーと息を吐いて目を開けるとカヤとポーが覗き込んでいた
「わっ!」
シンがビックリして声を上げ、起きようとして起き上がれずにカバンにボスっと頭が沈む
「見つけた」
「おばあちゃんに聞いてよかった」
カヤとポーは屋上の入り口に目を向ける
つられてシンも目を向けると皆んなが走ってコッチに向かってくる、シンは
「久しぶり」
と言いながら上体を起こし立ちあがろうとしてやめるとルカとウイが後ろからくっついてきた
「久しぶり」
「久しぶり、シン?」
ルカとウイは抵抗がないシンに違和感を覚える、今まで何度も抱きついたけど絶対と言っていいほど抵抗してきた、人族の力だから痛くはなく、ジャレている程度にしか思わないが、今日は無抵抗だ
「どっか痛い?」
「疲れてた?」
エルとヒルはシンの顔を覗き込みながら尋ねる
「別にそんな事ない、アヤノ、サリ5連覇おめでとう」
シンはアヤノとサリの方を向いて言った、アヤノとサリ、リンは何も言わなかった
「頑張って見たけど、駄目だったわ」
誰もが何も言えないでいると夕日が沈んだ、急に暗くなった気がした、周りも空気も
「覚悟の話を勘違いしていましたわ」
リンがシンを見ながら言い
「あんな事になるなんて、シンは想像してたの?」
「監督が言ってましたわ、コレが想像出来ないのは恵まれてるからと」
アヤノとサリが喋り、少しの間静かになる
シンが沈んだ夕日の方を見て下を向いた
「去年の話だっけ?よく覚えてるわね」
シンは顔を上げてルカとウイにもたれながら続ける
「去年の夏にね、色々とあったのよ、絶対仲良くなれそうに無い奴らと仲良くなったり、水が苦手だったのに泳ぐのが楽しくなったり、くっつかれんのが嫌だったのにそーじゃなくなったりとさ、まぁ色々と」
皆はシンを見ながら、聞いている
「無理だとか嫌いだと思ってる事が色々と出来る様になっていったから、もしかしたらって、やれるかもって思ったのよ、でも地区大会で避けられるし、開法と当たるのは準決勝だし、私は気合い入れてんのに、ボールは取られるし、3回戦でコリンもナルももう辞めたいって言うし、頭下げて準々決勝と準決勝は私がなんとかするからって言っても」
ルカとウイの腕をどけて立ちあがろうとするも立てずに座り込む
「足がさ言う事を聞いてくれなくなるし、途中から誰もボールを回してくれなくなるし、無視するし‥‥わかってはいたんだよね」
ん〜と座りながら伸びをして足をさする
「去年の大会でわかっていたんだけどね、こうなるって‥‥」
そこで、シンはぐりんと首を回して皆んなを見ながら
「だからって同情は勘弁してよ!こっちは去年にはこの状況に準備はできてるんだからさ」
ヨイショっと立ち上がろうとするとエルとヒルが横から支える
「ありがとう、助かる、ここに上がったんだけど、立ち上がれなくて、お腹も空いて動けなくなって寝てたのよ」
言った瞬間にシンの身体は浮き上がって
「エッ?なになに?」
「捕獲したわ」
「急ぐわよ」
「連絡」
「したからオッケー!」
「「カバンもオッケー」」
「「「「「「「「「レッツゴー」」」」」」」」」
シンは神輿の様に担がれて運ばれていく
「せめておんぶでしょうが!!」
シン達はドアの向こうに消えていった