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9-1・鬼退治から一ヶ月

 俺と狗塚は文架市の西区に向かってバイクを走らせる。市街地を抜けて西区の田園地帯に到着すると、眼が1つで、3本指で、田んぼから上半身を出した妖怪がいた。


「泥田坊だな・・・幻装!」


 狗塚が妖幻ファイターへの武装化を完了させ、翼を広げて飛び上がった!


「あっ!おい、待てよ!・・・幻装!」


 ワンテンポ遅れて妖幻ファイター(以後YF)への武装化を完了!「狗塚に負けまい」と妖怪に突進をする!

 しかし、今朝の雨で田んぼが泥濘んで走りにくい。足下を気にしていると、妖怪が泥団子を連投されて全身に炸裂!弾き飛ばされて田面を転がる!そんなに痛くはないが、泥だらけにされて結構ムカ付く!


「くそっ!」

「地形を確かめてから動け!」


 狗塚(YF)は低空飛行をして、田面には接触せずに移動をする。そして、妖怪に近付いて至近距離から発砲をして泥田坊にダメージを与え、弱ったところでギガシュートを放ってトドメを刺し、アッサリと戦闘終了。


「・・・俺はアンタと違って、飛ぶ機能が無いんだよ!」

「飛べないなりの戦い方が有るはずだ!」

「戦い方を考える前に戦いが終わったんだよ!」


 些細な皮肉を聞き流しながら、自分の姿を確認する。何処からどう見ても見慣れたプロテクターだ。


「・・・どうした?確認するまでもなく、君には羽なんて生えてないぞ。」

「あぁ・・・うん、そんな事は解ってるけどさ。

 何であの時だけ、別の形になれたのかな?ってな。」


 鬼の討伐時の‘変化をした強い姿’は何だったのか?あの日だけの限定武装だったのか?


「ん!?意識的にフォームチェンジをしたのではなかったのか?」

「う、うん・・・なんで、違う形になったのか、よく解らないんだよな。

 こんなケースは初めてで、爺さんにも説明できないらしい。」

「確かに、武装の形が変わるなんて不可思議な事例だ。

 開発局に確認してみたらどうだ?」

「爺さんが本社に確認中だ。」

「ならば、あとは回答を待つしかあるまい。さぁ、戻ろう。」


 武装化を解除してバイクに跨がり、YOUKAIミュージアムに向かって走り出す。



 鬼の討伐から1ヶ月が経過していた。

 鬼の仕業による妖怪の活性化が収まり、最近は大騒ぎするほどの妖怪事件は起こっていない。この1ヶ月で発生した妖怪は3件のみ。

 しかも、狗塚が参戦する為、妖怪に逃げられることなく事件は早期解決をする。


 鬼退治の専門家が、1つの地域に滞在を続けることは珍しい。本部での訓練を終えて以降、狗塚雅仁が、これほどの期間を1ヶ所で過ごすのは初めてのこと。鬼の首領と幹部達が一掃された為に、鬼を追って全国を回る必要が無くなったのだ。


「良い機会なので、少し休息を取りたい。」


 狗塚は、相変わらず俺を「未熟」扱いするが、少しは認めてくれたらしく、見下したり無視はしなくなった。最近では、出会った頃の‘何かが憑いたような表情’に比べて、幾分かは穏やかな表情を見せてくれる。


「変わったヤツやな。この状況のどの辺に居心地の良さを感じるんや?」


 紅葉との口論(・・・というか、紅葉が一方的に喧嘩をふっかけている)は日常茶飯事。先日も、雅仁が「紅葉ちゃんの箸の握り方は幼稚園児みたいだな」と言ったことをキッカケにして大喧嘩が勃発していた。そのたびに止めに入る俺が、何故かいつも損をしている。



「次は、どんな下らない理由で喧嘩をすることやら。

 2人とも少しは大人になってくれ。」


 文架大橋西詰めの信号機で停車をして、横目で優麗高がある御領町の方向を眺める。今の時刻は午前10時30分。紅葉はまだ授業を受けている時間帯だ。


「アイツのことだから、事後報告を聞いて、

 『自分も行きたかった』と文句を垂れるんだろうな。」


 狗塚の滞在以降、妖怪事件が早期解決して紅葉は事件に全く絡めない為に、かなりイライラしているっぽい。だからこそ、チョットしたキッカケで狗塚に突っ掛かる。

 彼女に「文架市に平和をもたらす為に退治屋を手伝っている」という前提があれば、その様な理由でカッカすることはないだろう。頼もしい仲間の存在を歓迎するはずだ。


  『お嬢の行動理念は、人助けや慈善事業やない!興味や欲求や!

   純粋がゆえに、今はまだ透明色やけど、

   白色か黒色かで言うたら、黒に近い透明なんやで!!』


 以前(第5話・鬼の蠢動)、粉木の爺さんが紅葉を評した言葉が少し気になる。だが、紅葉が‘黒’に染まる姿など想像できないので、直ぐに脳内から消し去った。


「紅葉に限って、それは無いだろう!」


 信号が青に変わり、前にいた狗塚のバイクが走り出し、俺も続けてバイクを発進させる。

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