1-7・エクソシズム(闇祓い)キック
しばらくの睨み合いから突進して激突!妖刀ホエマルの刀身と、絡新婦の足が幾度となくぶつかり、巨大な蜘蛛の足が2本ほど斬り飛ばす!
「おぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ・・・」
「パワーは並み・・・過去データの通りだな!」
Yウォッチから空白メダルを引き抜いて、指で真上に弾いてから手の平で受け止め、身を屈めて右足ブーツのくるぶし部分にある窪みに装填!気合いを入れる為に右足をパァンと叩いた!
「まぁ・・・力押しの方針に変更はないが!」
右足が赤い光を纏う!同時に俺と絡新婦の間に幾つもの小さい火が上がり、炎の絨毯を作る!
「おぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ・・・此ハ・・・地獄ノ炎・・・オヌシハ一体!?」
ツインテール少女が、ドア枠に手を掛け、扉から半身を乗り出して叫ぶ!
「行けぇぇっっ!!!やっつけろぉぉっっ!!!」
ゆっくりと立ち上がりながら横目で少女を見る!
「当然だ!」
絡新婦に正面を向け、ゆっくりと腰を落として構える!プロテクター、炎を絨毯に照らされて、今まで以上に朱く染まる!
「Ω(オーン)・封印!!」
顔を上げ、標的を睨み付ける!絡新婦から、3匹の子妖が生み出されて襲い掛かってきた!妖刀ホエマルを振り上げて踏み込み、子妖を次々と両断!
「・・・ハァァァッッ!!」
絡新婦一点を目掛けて大股で炎の絨毯を一歩一歩を力強く踏みしめながら突進!踏んだ炎が火柱となり、突進を後押してくれる!
襲い掛かる子妖を回避して両足を揃えて空高く飛び上がった!踏み切った場所の炎が一際大きな火柱となって、俺を大きく飛翔させる!空中で一回転をして絡新婦に向けて右足を真っ直ぐに突き出した!
「うおぉぉぉぉっっっっっっ!!!
エクソシズム(闇祓い)キィィーーーッック!!!」
朱く発光した右足が絡新婦の腹に突き刺さり、そのまま一気に突き抜けた!絡新婦のど真ん中には、大きな風穴が開いている!
「おぉぉぉぉ・・・ぉぉっ・・・閻魔大王・・・ナニユエ人間如キニ・・・?
オノレ・・・口惜しヤ・・・おぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ・・・!!」
全身の力を失い、下半身にある蜘蛛の体をドスンと床面に降ろして、大きく仰け反る!そして、咆吼と共に黒い炎を上げて爆発四散をした!
撒き散らされた黒い霧のような物は、やがて1ヵ所に集まり、俺のブーツに嵌められていたメダルに吸い込まれて完全に消る!
本体の消滅に伴い、本体が嗾けた子妖達も存在を維持出来なくなり、闇に解けるように消えていった。
「また失敗なんてオチは勘弁してくれよな。」
ブーツにセットしたメダルを外して確認する。メダルには先程までは無かった『絡』の文字が浮かび上がっていた。
「よしっ!封印成功!」
妖幻システムのセンサーで、それまで学校を覆っていた澱んだ空気が晴れていくのが解る。勝利を実感して屋上から校庭を眺めようとしたら、Yウォッチが着信音を鳴らした。
「どうしたジイさん?まだ何かあんのか!?」
〈『どうした』やない!討伐が終わったならちゃっちゃと撤収や!〉
「あぁ・・・そっか!」
「ワシはもう退散済みや!
悠長に勝利の余韻なんぞに浸っておると、生徒達が目ぇ覚ますで!」
妖怪の退治屋は非公式の組織。妖幻ファイターは、公のヒーローではなく、人知れず妖怪を討伐する戦士。可能な限り、その存在は隠さなければならない。今回は成り行きでツインテール少女と行動を共にしたが、勝利を祝ってハイタッチをする関係ではなく、事件が解決すれば金輪際接点を持たない関係なのだ。
「あっ!待ってっ!」
俺は、寄ってきたツインテール少女に背を向けて駆け、屋上から飛び降りて軽やかに地上に着地。正門から出て電柱脇に停車してあるバイクに跨がった。屋上で見つめている少女をチラ見しつつ、「美少女を救ったのに名乗りすらしない俺って格好良いぜ!」と自画自賛しながら、愛車をスタートさせて去って行く。
この時の俺は、全く予想をしていなかった。ツインテール少女・源川紅葉と共有した事件は、今回の1回で終わりではなく、これが第一歩目だったということを・・・。
※『妖幻ファイターザムシード』の第1話&第2話を簡素化。