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1-5・ツインテールの少女

 片手の拳をもう一方の手の平に当てて打ち鳴らして気合いを入れ、腰に帯刀してある木笏=裁笏ヤマを構えて、子に憑かれた生徒達の群れに突進!運動能力が妖幻システムによって向上しているおかげで、ザコ程度ならば物の数にも入らない!闇祓いの呪文を唱えながら生徒達の背を叩いて子妖を祓う!


「ひぃっ・・・ぃやぁぁぁぁっっっっ!!!」


 校舎内から、甲高い悲鳴が聞こえた!


「ん?」


 反射的に窓を蹴破って、校舎内に飛び込んで、憑かれた生徒達に囲まれたツインテールの少女を発見!子妖を蹴散らしながら、少女を庇って前に立つ!


「何だよ、俺が居れば他の生徒は襲われないんじゃなかったのかよ!?

 思いっきり襲われてんぞ!!」

「あぁ・・・ぁぁぁ・・・・」

「朝のセンスの悪い女か!?・・・立てるか!?」

「あぁぁ・・・ぅ、ぅん」

「君の他にも正気を保ってる奴はいるのか!?」

「ワ、ワカンナイ」

「そっか、まぁいい!今から玄関を強行突破する!!

 付いて来い!そして、玄関を出たら真っ直ぐに校庭から外に出ろ!!

 そうすりゃ襲われね~よ!」

「ぅ・・・・ぅん」


 少女は声に成らない声を出して小さく頷く!


「いいな、行くぜっ!ハァァァァッッッ!!!」


 光を纏った木笏で、降りかかる8本足を薙ぎ払い、正気を失った生徒の背を叩き、背中から飛び出して実体化した蜘蛛を両断し、校庭への出口を目指す!ツインテール少女が必死で付いてくる!


「わぁぁぁぁっっっっっっ!!」


 気が付くと、少女は掃除用のモップを振り回しながら、一緒になって玄関までの道を作っていた!


「度胸あるな!・・・まぁ、モップ如きで倒される妖怪はいないんだけど。」


 押し寄せる生徒達を蹴散らして、玄関を抜けて校庭に脱出!すかさず、左腕のYウォッチ越しに粉木の爺さんに連絡を入れる!


「よし、出たぞ!!爺さん、この子を頼む!!」

〈任せときぃ!!〉


 正門付近で待機していた爺さんが駆け寄ってきて、ツインテール少女の手を取った!俺は、少女が妖怪のテリトリーの外に連れ出されたことを確認した後、再び玄関周辺に集う子妖に憑かれた生徒達から蜘蛛を祓う!


 しかし、ザコとはいえ、数が多すぎる。ツインテール少女以外の全員が憑かれているのではないか?いくら祓っても次から次へと押し寄せてくる為、徐々に息が切れ始める。ただ斬るだけではなく、背中を打って子妖を追い出してから実体化した蜘蛛を斬らなければならないのだ。


「キリが無い!!・・・どうする!?」


 肝心の‘本体’は姿を見せない!子妖に押し戻されるようにして、校庭に転がり出てしまう!


「クソォ・・・本体は何処だ!?ザコばっか相手にしてたら、こっちが保たない!!」

「燕真!妖刀ホエマルや!ホエマルを使いや!!あれなら、邪念だけを斬れる!!」


 爺さんのアドバイスが飛ぶ!


「そ、そうか!あれなら!!」


 Yウォッチから『蜘』と書かれたメダルを抜いて、Yウォッチの空きスロットに装填!目の前に光の渦が出現して、日本刀=妖刀ホエマルが出現!


「Ω(オーン)!!」


 妖刀ホエマルを握って呪文を唱えると、その切っ先が鈍く揺らぐ!これで、物理的な切断をせずに憑いている邪気のみに致命傷を与える事が出来る!・・・はずなんだけど、その理屈が解らないので、「子妖ごと生徒も斬ってしまうのではないか?」と少し戸惑う。


「おぉぉぉぉっっっ・・・!!」


 しかし、相手は待ってくれない!俺の戸惑いなどお構い無しに襲い掛かってくる!


「こ、こうなりゃ、オマエを信じるぜ、ホエマル!!うおぉぉぉっっっっっ!!!」


 突進してくる生徒の体に妖刀を当て、一気に振り切る!


「おぉ・・・ぉぉ・・・ぉっっっ」


 背中を支配していた8本足が闇に解けるように消滅し、斬られた生徒は穏やかな表情を取り戻してその場に倒れた!

 思いっきり刀を振り抜いてしまったが、倒れた生徒から血は出ていない。顔色は暖かみのある肌色を取り戻している。これまでの面倒な行程を省き、刀を振り回すだけで子妖を消滅させる事が出来るのだ。


「これなら行ける!!」


 覇気を取り戻した俺は、気勢を発しながら子妖を背負った生徒達に突進をして妖刀を振り回す!


〈おぉぉぉぉっっっ・・・オノレ・・・〉

「・・・声!?」


 攻勢になった途端、その場の空気が急激に澱み騒ぎ始めた!妖幻システムを通して、耳を劈くような雑音が聞こえてくる!両側頭部のセンサーが、妖気の変化を受信した!


「来るで、燕真!!本体や!!」

「・・・・何処から!!?」

「それはワシにも解らへん!せやけど、場の空気が今まで以上に殺気立った!」

「・・・りょ、了解!」


 ホエマルを構え、周囲を警戒する!


「何処だ・・・何処から来る!!」


「上だょっ!」

「え!!?」

「屋上に‘汗臭い’空気が集まって、60点をイカクしてるょっ!!」

「なんや!!?」


 正門の外に退避をしたはずのツインテールの少女が、スカートを靡かせながら走ってきて、屋上を指さした。


「ワカンナイの!?教えたげるから付いてきてっ!」

「えっ!?えっ!?」


 ツインテール少女は、倒れている多数の生徒達を飛び越えて、生徒玄関に駆け込んでいった。


「おいっ!まだ中には子妖憑かれた奴等が・・・あぁっ!もうっ!」


 奇行気味の少女に困惑したが、放置はできないので追いかける。



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