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粉木勘平の視点1・少女との出会い

 最初に違和感に気付いたのは、絡新婦討伐で優麗高に行った時。つまり、初対面で異常性を感じた。彼女は、自他共に「妖怪退治のベテラン」と認めるワシすら曖昧にしか解れへんかった‘妖怪の位置’を正確に見抜いたんや。

 わりかし経験を積んだ者(燕真は経験を積んでも無理っぽい)なら、実体化した本体の気配(妖気)を追う事は出来るし、実体化前の影を、漠然と「この辺におりそうや」て予測する事も出来る。せやけど、彼女が言い当てたのは実体化前の本体の正確な位置や。類い希な霊力の持ち主が長年の修行を積んだとして、そこまで感覚を研ぎ澄ます事が出来るんやろうか?


「ワシには出来ん。」


 長年の記憶を辿ってみても、これまで一緒に仕事をしてきた仲間達の中に、実体化前の本体の動きをあない正確に把握した者はおれへんかった。

 少女の索敵力は、人間が才能を修練で開花させた能力よりも、縄張りに入った瞬間に殺気立って威嚇する妖怪や、妖怪の力をツールにして索敵を行う妖幻ファイターに近い様に思える。


 子妖に憑かれへん人間は数タイプいる。

 1つ目は、たまたま、憑かれへんかっただけのタイプ。憑かれた者の捕食対象になってまう。絡新婦事件で憑かれへんかった優麗高生の大半は、このタイプに該当する。

 2つ目は、霊感が全く無うて、憑く媒体になれへんタイプ。燕真はこのタイプに該当する。霊力がゼロやさかい、捕食対象にもなれへん。妖怪に命を狙われる可能性が極めて低いんやけど、妖怪の退治屋やのに妖怪の眼中に入ってへんちゅうんは、長所とは言い難い。

 ほんで3つ目は、憑かれる隙があれへんタイプ。陰陽の修練を積んだ一人前の退治屋は、このタイプになる。


「あの少女は、1つ目のタイプなのか、3つ目のタイプなのか・・・。」


 彼女は、憑かれた生徒達に襲われた。妖怪が捕食対象を求めてる状況やったら、1つ目のタイプに該当する。せやけど、あの時は、ワシ等が絡新婦の縄張りに入って、互いに威嚇状態やった。妖怪や子妖は、部外者の排除に動き出すはず。他の、憑かれへんかった生徒達と同様に、妖怪に視野から外れたはず。これまでの退治屋の常識で考えたら、討伐に赴いた妖幻ファイターよりも、ただの少女が優先的に襲われるなんて有り得へん。


「絡新婦にとって、目障りな存在だった・・・ということになるのか?」


 彼女が特殊やったとしても、単に事件に巻き込まれて目撃をしただけで、事件が終わったら、今までと変われへん日常生活に戻る思うとった。


 ・・・せやけど、


「・・・・・・ぁ!やっぱりココに居た、60点!」


 少女は、妖幻ファイターの正体とアジトを突き止めて、押し掛けてきよった。


 部下がマヌケすぎる言うべきか、お嬢ちゃんが切れ者言うべきか、判断に困る。特に規則は決まってへんのやけど、暗黙の了解で退治屋は一般人を巻き込めへん様に心掛けてる。本体捜索の過程で情報を聞き出したり、妖怪から救出した被害者を保護する事はあるけど、必要以上のプライベートにまでは踏み込めへんし、退治屋の情報も最低限度しか教えへん。ほんで事件が解決したらアカの他人として、二度と接点は作れへん。状況次第では、忘却術で妖怪事件に関する記憶を消すこともある。


「源川紅葉・・・源川か。」


 しらばっくれて追い返すことは簡単やった。せやけどワシは、お嬢ちゃんに興味を持ち、異能なのか、ただの偶然なのか、様子見ることにした。




-土曜日・AM11時過ぎ・YOUKAIミュージアム-


ピーピーピー!!!

 事務室に備え付けられた警報機が、妖怪の出現を知らす緊急発信音を鳴らす!


 文架市内には、妖気センサーが数十カ所ほど取り付けてあり、感知をするとYOUKAIミュージアムの警報器を鳴らして、妖怪の発生を報せてくれる。・・・と表現したら聞こえはええんやけど、数十カ所しか設置してへんちゅう方が正確や。欲を言うたら、電柱2本おきくらいにセンサーが設置してあったら、妖怪の出現をいち早よ察知出来んねんけど、費用的な問題で、そこまでは完備されてへん。

 やさかいこそ、センサーの設置箇所は工夫してある。市内で最大の龍穴がある亜弥賀(鎮守の森)神社を中心にして、そこに集まる大龍脈に沿うようにセンサーを点在させ、大龍脈に流れ込んだ妖気の濃さや拡散具合から、妖怪出現場所の推測が可能になってるんや!


「出現場所は、文架大橋の東詰や!!」


 センサーからコンピュータに送られてきた情報を確認して、受付カウンターにおる燕真に指示を出す!


「了解!」


 急いでホンダVFR1200Fに跨がる燕真!遊びに来とったお嬢ちゃんが、「待ってました!」て言わんばっかりに飛び乗りよった!!


「ぃくょ、燕真!」

「おう!飛ばすから振り落とされるなよ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

「レッツゴォ~!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 燕真は、溜息をつきながら愛車から降りて、後ろに回り、タンデムに跨がっていたお嬢ちゃんを抱き上げて地面に降ろし、再びバイクに跨がって発進をした!


「こらぁ~~~!バカァ~~!!何でァタシを置ぃて行くンだぁ~~~!!

 霊感ゼロ!!0点!!ねずみ男!!小魚顔!!猫に食ゎれて死んでしまぇ~~っっ!!」


 出動した燕真に向かってどやし散らすお嬢ちゃんを事務室の窓越しに眺める。言うまでもなく、燕真の行動は正解。一般人を事件に連れ回すわけにはいけへん。

 そのまま2人で出動をしとったら説教をせなあかんが、燕真が社会人としての一定の常識を持っとったさかい安堵をした。


 結局、妖怪は事故を発生さして直ぐに消えてもうたさかい、燕真は現場を眺めて、簡単な情報収集だけをして戻ってきた。



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