2-7・鎌鼬と老人
「うぉ~~~・・・ぉぉぉ・・・・・・・・っっっん」
大ダメージを受けたカマイタチは、苦しそうに嘶き、闇の渦に姿を変える。そして、渦の中から、見ず知らずに爺さんが出現した。
「ん?あの爺さんが依り代?」
事件を解決する為には、妖怪を倒すだけではなく、依り代の念を晴らさなければならないのだが、初対面の爺さんに何をしてやれば良いのだろうか?サッパリ解らない。
「霊感ゼロの燕真でも、妖幻ファイターになってる時ゎ見えるの?」
「ん?なにが?」
「幽霊。」
「・・・・・・・ん?」
俺の目にもハッキリと見えているので実物の老人と思っていたが、紅葉曰く幽霊らしい。妖幻システムのお陰で俺にも見ているのだ。紅葉が、目の前に建つ解体工事直前の古屋を見上げる。
「・・・おじいちゃんゎね。」
古い家の天井裏に遺言書を隠したまま寝たきりになり、長男の家に引き取られて数日前に亡くなった。このままでは、遺言書が発見されないまま家が取り壊されてしまう。その強い未練が老人を霊にして、カマイタチに憑かれてしまったのだ。
「オマエ、さっき、YOUKAIミュージアムで爺さんを見ていたのか?」
「ぅん。ァタシに、このおうちが壊れちゃう前に遺書を取って欲しいって・・・」
だから、紅葉は、妖怪出現直後に、この現場を特定できた。そして、事情を知らないまま、解体業者を救出した俺は、カマイタチから邪魔者扱いをされたのだ。
「そっか・・・解った。天井裏だな。」
その後、無事に遺言書を獲得。老人は、長男の家の住所を提示して、「渡して欲しい」と伝えて、目の前から消えた。
「・・・・・・・・・・・・あれ?爺さん、何処に行ったんだ!?」
「思念が晴れて・・・帰って行ったんだよ。」
同時に、何処からともなく、妖怪の遠吠えが聞こえてくる!
「ウォ・・・ウォ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ンンン!!!」
上空に闇の渦が発生して、中からカマイタチが出現をする。憑いていた媒体が消滅したので、隠れる場所が無くなったのだ。既に大ダメージを受けているので、先程までの敏捷性は失っている。
「燕真!やっつけてっ!
お爺ちゃんの思いを利用したアイツ、絶対に許せないっ!」
「はいよっ!」
「佐波木燕真の正義のお裁きだよっ!」
「・・・正義?」
Yウォッチから空白メダルを引き抜いて、身を屈めて右足ブーツのくるぶし部分にある窪みに装填する!
「なんだそれ、センス無い決め台詞だ!・・・でも、そう言うのも悪くない!」
俺が退治屋をやっている理由は、成り行きと、生活費を稼ぐ為と、ほんのちょっとの正義感。だから、「正義」という言葉は、気恥ずかしいけど嫌いではない。
「・・・閻魔様の!!」
ゆっくりと腰を落として構え、カマイタチを睨み付ける!
「裁きの時間だ!!」
カマイタチとの間に発生した炎の絨毯を突っ走ってジャンプ!火柱に押し上げられながら、空中で一回転をして飛び蹴りの体勢になる!
「うおぉぉぉっっっっ!!! エクソシズム(闇祓い)キィィーーッック!!!」
蹴り飛ばされたカマイタチは、苦しそうな嘶きを上げて爆発四散!爆発によって撒き散らされた闇がブーツに収束して、セットされていたメダルに『鎌』の文字が出現をした!
「ふぅ~・・・任務完了っと!」
後に知った事なのだが、幽霊爺さんの古家解体を請け負ったのは、檀轟興業という建設業者。幽霊爺さんは、家の取り壊しを妨害したくて、その焦りがカマイタチの付け入る隙になってしまい、工事現場で暴れたり、檀轟興業のダンプを襲ってしまったらしい。紅葉が「カマイタチは許せない」といった理由が少し理解できた。
「オマエが妖幻システムを持ち出したこと、粉木の爺さんには秘密な。」
「えっ?ナイショにしてくれんの?」
「バレたら、気付かなかった俺も、持ち出したオマエも、怒られちゃうからな!」
「お~~~!燕真、優しいぢゃん!」
「見直したなら『さん』くらい付けろ!俺は歳上だぞ!」
「うんっ!ありがとう、燕真さんっ!」
「おうっ!」
「さぁ、YOUKAIミュージアムに帰ろ、燕真っ!」
「『さん』はっ!?」
紅葉ってアホなのだろうか?俺への敬称は、わずか1秒で無かったことになった。
-YOUKAIミュージアム-
「バッカモォォォォ~~~~~~~~~~~~ンンンッッッ!!!」
「ひぃぃぃぃっっっっっ!!!」×2
紅葉が妖幻システムを持ち出した件は隠蔽するつもりだったが、粉木ジジイには全部バレていた。
「退治屋の機密とも言うべき妖幻システムを、
他人が持ち出せる状態にしておくとは、どういうつもりやっ!」
「も、申し訳ありませんでしたっ!」
「お嬢はお嬢で、退治屋の仕事を、遊びか何かと勘違いしとるんやないかっ!?」
「ゴメンなさぁ~~~~~~~~~いっっ!!!」
「一歩間違えれば、犠牲者が続出しても不思議やなかったんやぞっっ!!!」
凱旋をした俺達は、正座をさせられて、誤魔化そうとしたことも含めて、2時間ほど大目玉を喰らった。まぁ、当然と言えば当然だろう。何故、「隠蔽できる」なんて考えてしまったのだろうか?妖怪討伐を終えた直後の俺に「甘い考えは捨てろ」「帰ったら正直に話して怒られる前に平謝りをしろ」とアドバイスしてやりたい。
※『妖幻ファイターザムシード』の第2話+第3話&第4話を簡素化。