表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/169

2-5・Yウォッチが無い

-PM1時過ぎ-


 近所の小学生達が、YOUKAIミュージアムの駐車場を公園代わりにして遊んでいる。


「やれやれ、あんなにはしゃいじゃって・・・巫女さん仕様が台無しだな!」


 紅葉は子供達の輪に入って、「きゃーきゃー」と騒ぎながら、携帯型ゲーム機で人気アニメゲームの通信プレイをやっていた。その様子は近所の子供達と同レベル。まぁ、小学生相手に一切の手心を加えずに、マジになってゲームに熱中するのは、どうかと思うけど。

 どうやら、一方的に置いて行った事は気にしていないようだ。「小魚顔」の暴言が気になるが、次第にどうでも良くなってきた。


「あ~~~~・・・暇だ。」


 俺は子供嫌いではないが、扱い方が解らないので、その輪に加わらずに眺めている。


 「ん?アイツ、なに見てんだ?」


 ガキ丸出しで大騒ぎをしていた紅葉が、生活道路を挟んだ向こう側を眺めている。つられて眺めるが、俺には‘いつもと変わらない町並み’にしか見えない。


「あの・・・なんかご用ですか?」


 紅葉が敷地を出て道路を渡ろうとすると、慌ただしくクラクションを鳴らしながら、スピードを超過気味のダンプトラックが通過していく。


「なんだぁ?」

「けったいな車やのう!」

「ぅるさぃなぁ、もぅ!そんなにピーピー鳴らさなくても解るのにぃ!」


 紅葉は、不満そうにダンプのテイルランプを見つめた後、再び道路を横断しようとして首を傾げた。


「・・・・・・・・・・・ぁれ?何処に行っちゃった?」

「どうしたんだ?金でも落ちていたのか?

 道路を横断するなら、左右確認くらいちゃんとしろよな。」


 突っ立ってる紅葉の脇に立って、軽く頭を叩いて注意をする。


「お金ぢゃないよぉ。おじいちゃんだよ。」

「・・・はぁ?」


 紅葉につられて、もう一度、道路の対面を見る。だが、見えるのは‘いつもと同じ町並み’だけ。


「ひゃっ!」   パチン!


 紅葉が背筋をピンと伸ばして、反射的に首筋を叩いた。俺は、その奇声に驚く。


「どうしたんだ!?突然悲鳴なんて上げて!」

「ごめん!虫がぃた!」

「虫?」

「ぅん、今、手で潰しちゃった!キモイ、サイアク!ほらっ!」


 首筋を叩いた手の平を見せる紅葉。だが、其処に虫の残骸は無い。首筋を触るが、やはり残骸らしい物はない。


「ぁれぇ~・・・ぉかしぃなぁ~」

「オカシイのはオマエの頭だ!」

「ヒドォ!燕真にそれを言ゎれたらお終いってカンジなんですケドォ~」


 紅葉が叩いた場所に顔を近付けて眺める。綺麗な首筋やうなじだ。鼻を楽しませてくれる良い香りは、紅葉が使ってるシャンプーの香りだろうか?どうやら彼女は、香水や化粧品で肌を偽るタイプではないらしい。


「どぅ?・・・ぃた?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ねぇ、燕真?・・・ぃたの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あっ!」


 慌てて首筋から視線を外して咳払いをする。僅か数秒間だが、小娘の健康的な色気に目を奪われてしまったのが恥ずかしい。


「む、虫なんて、何処にもいね~よ!」

「ぁれぇ~?ぉっかしぃなぁ~~?」

「気のせいだ、気のせい!」

「ん~~~~~~~~~・・・そっかぁ~~~。」

「おおかた、風に乗ってゴミかなんかが飛んできたんだろ!」

「・・・・・・・・ぁ!!」


 唐突に、紅葉が手のひらを思い切り振るって、俺の頬に叩き込んだ。


「いってぇっ!!・・・何すんだよぉ!!?

 俺、オマエに殴られるようなことしたか!?」

「燕真も頬に虫がくっついてたから・・・ほら!」

「何処だよ!?」

「ぁれぇ?また、ぃなぃ!」

 

 紅葉が手の平を見せるが、先程と同じように虫はいない。単に、俺がビンタをされただけ。頬を摩りながら「なんて粗忽な女なんだ?」と大きく溜息をついた。


ピーピーピー!!!

 事務室の警報機が、妖怪の出現を知らせる緊急発信音を鳴らす!


「・・・またかよ!?」

「今日は忙しいこっちゃなぁ!」


 爺さんが事務所に駆け込んで、センサーから送られてきた情報を確認をする。紅葉の奇行が気になるが、今は妖怪対策が先だ。


「燕真、出現場所は、陽快町3丁目(ミュージアムは1丁目)!此処から直ぐや!!

 詳細は解りしだい報せるよって、先ずは向こうてくれ!!」  


 俺がバイクが引っ張り出している間に、紅葉が博物館前に駐めておいた自転車で飛び出していく。


「3丁目だねぇ!ぉっ先に~~~!!」


 舌打ちをしながらバイクに跨がり、紅葉を追う。だが、自転車を駆る紅葉は、小廻りを利かせて路地を細かく曲がって移動する為、あっという間に見失ってしまった。


「あのバカ!!一体なんのつもりなんだ!?」


 だが、目的地は同じはず。紅葉を追うことを諦めて、幹線道で陽快町3丁目を目指すことにした。しばらく進んで赤信号で停車をしていたら、ポケットのスマホが着信音を鳴らす。確認をしたら、ディスプレイの発信者は‘会社’と表示されていた。


「どうした、じいさん?詳細が解ったのか?」

〈どうしたもこうしたもあるか!?なんで、Yウォッチに出ぇへんねん!?

 いくら通信しても出ぇへんから電話したんや!!〉

「・・・あ、ワリィ、(左腕に)着けるの忘れてた!」

〈ボケェ!アホンダラッ!!オマン、任務中にどういうつもりや!!?〉

「ワリィって!直ぐに着けるよ!それより、どうしたんだ!?」

〈そう言う問題やない!気が弛んどるんや!!

 まぁ、今、ゴチャゴチャ言うてもしゃ~ない!

 その件は、あとでキッチリ話付ける!!

 妖怪が出おった場所は、陽快町3丁目○番地付近や!!

 今、道路工事中やから、行けば直ぐ解る!!〉

「了解・・・直ぐに行く!」


 通話を切り、Yウォッチと和船ベルトを入れてある専用収納スペースに手を伸ばす。どのみち緊急時は基本的にバイク移動なので、ミュージアムで働いている平常時はバイクに収納しておくのだが、紅葉の暴走に慌ててしまって装備するのを忘れていた。「性根が据わっていない」と非難されても反論のしようがないと感じる。


「・・・ヤベっ!マジか?」


 いつもの場所にウォッチもベルトも無い。何度も探すが、どう見ても無い。拙い、何処に置いてきた?自宅アパートか?粉木宅か?博物館事務所か?「装備するのを忘れていた」なんて次元のミスではない。

 

「まぁ、なんとかなるだろう!

 最悪、バイクで体当たりをするくらいは出来るはずだ!!」


 立ち止まって頭を悩ませている時間など無い!現場に到着してから、その後の事を考える!ヘルメットを被り直して、再びバイクを走らせた!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ