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10-4・妖力と魔力の違い

「だが、何故、魔術師でもない紅葉ちゃんが、魔術に気付けるんだ?」

「ァレ?まさっち?燕真ぢゃなぃクセに見ぇなぃの!?」

  「『俺じゃないクセに』って、どういう意味だ!?」

「霊力があるクセに・・・ってことか?しかし、霊術と魔術は別物で・・・」

「同じだょ!偉そうにしてるクセに解らないの!?

 簡単じゃん!ぃつもゎ黒色を探してるけど、今度ゎ青色を探すみたぃな感じっ!」

  「『俺じゃないクセに』って、どういう意味だ!?

   何で、俺だけは見えないのが前提なんだよ!!?」

「『いつもは黒だが、青を探す』とは?もう少し詳しく説明してもらえないか?」


「ん~~~~~~~~・・・メンドィなぁ~~!

 じいちゃんや、まさっちって、妖力を使ってるワケぢゃなぃでしょ?」

「あぁ、ワシ等は妖怪やあらへんからな。ワシ等が使うとるんは霊力や。」

「だったら何で、妖怪と戦ぇんの!?」

「それは、霊力を妖力に近い形に変換して・・・」

「それが退治屋や陰陽道の技術や。

 霊力の高いだけの一般人では、妖怪と戦えないんは、その為や。」

「それだょ、それっ!

 普段から‘妖怪を探すクセ’がぁるから、意識しなくても見ぇるでしょ?

 でもそれじゃダメなの!妖怪探しても‘まじゅつ’っていうのは見ぇにくぃの!

 1個を見るょぅにしなぃで、自然に全部を見るょぅにすれば、なんとなく解るょ!

 氷柱女(妖怪全般)みたく‘無理をしなぃで、自然に妖力を見てる’ってやれば、

 魔術とか別の力も、きっと、直ぐに気付くんじゃなぃかな?」


 相変わらず、紅葉の説明は言葉足らずで解りにくいのだが、要は、普段から「妖怪を探すクセ」があるので、魔力が見えにくい。「妖怪を探す視野」を棄て、元々備わっている霊力のまま自然体で見れば、妖力も魔力もボンヤリと気付く。持って生まれた能力で物を見る「鬼や妖怪」は、魔力の違和感にも気付くだろう・・・と言っているようだ。


「つまり・・・霊力も、妖力も、魔力も、違う形に変換をしているだけで、

 根幹にある物は同じ・・・」

「ぅんぅん、そんな感じ!」

「ワシ等は、妖怪に特化した修業をしてきたよって、

 別の力を見るクセが無かったちゅうことか?

 この歳になって、今更‘今までの常識’とは‘違う視野’で物を見なあかんのか?

 なかなか厄介やな。」

「・・・ですが、不可能なことではありませんね。」


「霊感ゼロの俺じゃ、魔術ってのにも全く気付けないってことなのか?

 しかも、妖幻システムは妖力に特化してるから、武装化をしても気付けない?」

「ん~~~・・・燕真は元々、妖力を探す才能もクセも無いから、

 妖幻ファイターの時ならダィジョゥブかも!

 妖幻ファイターゎ妖怪の力なんだから、

 燕真が‘妖怪が自然体で物を見るょぅな感じ’にすればね!」

「む、難しいな・・・そんなの、あまり深く考えたことが無かったから・・・。」


 飛び抜けた才能と、退治屋の技術に染まっていない視野。「先が読めないので危険」と判断して、紅葉を遠ざけようとしていたのに、その本人が最も核心に気付いていた。


「しゃ~ないか・・・

 今の危険な状況を知ってもらう為にも、お嬢にも話さなアカンようやな。

 えぇか、お嬢?話す代わりに条件や!

 何か異常を感じても、絶対に単独行動はせんこと!

 必ずワシ等3人の誰かに報告をして一緒に行動をすること!約束できるか!?」

「ぅんぅん!できる!」

「その空返事が不安なんだよ!」


 俺達は紅葉に「退治屋とは似て非なる大魔会という組織があること」、「大魔会の離反した凶悪な奴等に襲撃されたこと」、「夜野里夢と一時的に協力状態になったこと」を説明した。


「へぇ~・・・ケバいナマコ、ヤノリムってゆーの?」


 20代の女性に対して、「ケバいオバサン」扱いは失礼だが、夜野里夢以外に該当者がいない。・・・てか、「ケバい」はともかく、「ナマコみたいな顔」ってどんな顔なんだろうか?


「理に適っていますね。

 離反者が此処を襲撃する可能性を考えれば、必然的な処置にですよ。」

「なるほど。ここを監視しておけば、離反者が来た時に、直ぐに気付けるもんな。」

「ここだけぢゃないよ。

 優高とか、東中(通学途中で通過)にも、ナマコのオバサン、いっぱいいたよ。」


 夜野さんが、公約通りに市内の複数箇所に使い魔を放って監視しているのだろう。


「枝豆みたいなオッサンも沢山いたのか?」

「エダマメゎココにしかいないよ。」

「・・・ん?」


 紅葉のおかげで少しクリアになってきたと思った矢先に疑問点が増えた。


「あれ?離反者は俺達しか監視をしていない?」

「さっき追い払ったから、今は監視してないよっ!」

「オマエが追い払ったことは、今はどうでも良い。

 奴等が何を監視対象にしているのかを話しているんだ。

 一般人から生命力を集めるつもりなら、

 使い魔を使って『どこが適しているか?』を物色するだろうに。」

「いや・・・むしろ逆だ。

 使い魔の発想が無かった俺達とは違うんだ。

 離反者達は、夜野里夢が監視用の使い魔を放つことくらいは

 予想しているのではないか?」


 狗塚の想定を前提にすると、離反者達が何処かの学校で被害を発生させる可能性は低く、俺達の巡回は無意味な行動になってしまう。


「明日以降は、別の方法で調査するべきやな。」


 これにて本日の業務は終了して解散になったのだが、大きな問題が1つ発生。ただいまの時刻は23時前。


「やっべぇ~!門限、スッゲーすぎてる。

 ママに怒られちゃう。燕真、一緒に謝ってよ。」

「なんで俺が?門限過ぎても帰らなかったのはオマエだろう。」

「それゎ、燕真がァタシを仲間ハズレにしたせいぢゃん!」

「せやな、燕真のせいや。責任を持ってお嬢を送って、ご家族に説明して来いや。」

「はぁ?どうやって説明すんだよ!?

 『今現在、大魔会の無頼者の所為で文架市が危機に陥っていて、

  俺が遅くまで調査をしていたら、紅葉が心配をして帰宅せずに待っていた。

  事情を説明していたらこんな時間になった』・・・とでも説明しろってか?」

「未熟者め!そんな説明では拙いに決まっているだろう。」

「んなもん、言われんでも解ってる!皮肉を込めた例え話だ!」

「『娘さんとデートをしていたらこんな時間になってもうた。

  ちゃんと責任は取ります』・・・で、ええやろ。」

「おぉぉっ!それイイ!カンペキぢゃん!」

「全然良くない!」


 言うまでも無く、そんな破廉恥な説明ができるわけない。


「恋人のフリをすれば良いのか?

 佐波木が送る気が無いなら、俺が送っても良いが・・・」


 狗塚が送れば、俺は紅葉の親から無用な恨みは買わずに済む。だが、それはそれで、納得できない。


「解ったよ!俺が責任を持って送れば良いんだろっ!」

「送りオオカミすなや!」

「この状況で出来るワケ無いだろう!」


 これ以上、紅葉の帰宅を遅らせるわけにはいかない。言い訳は道中で考えることにして、とりあえず紅葉を送ることにした。



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