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源川紅葉の視点・60点と出会った日

 7月○日。その日ゎァタシにとって、お誕生日よりも大切な記念日になったの。



-朝・県立優麗ゆうれい高校-


 ァタシゎ、この高校の2年生。昔ゎ女麗じょれい学園ってゆー女子高だったんだってさ。でも、何か色々あって共学にして優麗高校って名前になったの。ァタシ、勉強ゎ好きくないんだけど、文架市で2番目に頭がイイ学校に通ってんだよ。凄くね?部活動は「勉強との両立」を前提にしてるから、あんまり強くなくて、市内で‘中の上’くらい。でもたまに、全国区の選手が登場する感じだね。ァタシゎ、中学の時ゎ体操部だったけど、今ゎ帰宅部。バイトやりたいから、部活してないの。


「おはよ~!」 「昨日、テレビ見た?」 「見た見た、アレでしょ~」 

「ユウ高~・・・ファイッ、オー、ファイッ、オー、ファイッ、オー!」


 ァタシが登校するのゎ、朝のホームルームが始まる20分前くらい。一緒に登校するおっぱいの大きな子ゎ平山亜美ってゆーの。アミゎ、小学校時代からの仲良し。すっげーイイ子で、ァタシが寝坊しても10分くらいゎ鎮守の森公園の前(待ち合わせ場所)で待っててくれるし、宿題やお勉強を教えてくれるよ。


「・・・んぁ?」


 正門を通ろうとしたら、なんかイヤな感じ。でも、ァミゎ気にしないで中に入っちゃった。


「どうしたの、クレハ?」


 2~3日前から学校がイヤな感じなの。気持ちワルいんだけど、気持ちイイ感じ。ァミゎ気にしてないみたいだから、ただの気のせいなのかな?でも、きっと今日も同じだと思う。


「ん?ぁ、ごめん、何でもなぃ!」


 正門を通ってみたら、やっぱり昨日と同じ。なんかモヤッとしてる。


「ねぇ、なんか汗臭くね?」

「誰が?もしかして私が?」

「違ぅ違ぅ!ァミゎ、昨日ゎチョット汗臭かったけどね。」

「えっ?私、臭かったの?」


 昨日のァミゎ、学校から帰る時に、なんか疲れた感じの顔してたから、元気にしてあげたくてカラオケに誘ったの。カラオケの時のァミゎ元気だったけど、カラオケのお部屋の中は学校と同じニオイで、なんか汗臭かった。帰る時のァミもクサかった。でも、今日のアミゎクサくないし、疲れた感じぢゃないから、チョット安心。


「でも今ゎダイジョブだよ。」

「なら、何が臭いの?クレハが!?」

「違うょ!学校が!」

「学校が汗臭いの?何それ?意味わかんないんだけど!」

「・・・だょね、あははははっ!」


 やっぱり、ァミゎ学校がモヤモヤしててクサイのを気付いてないみたい。周りを見廻すけど、みんな、普通にしてて、クサそうにしてる人なんて誰もいない。


「ん~~~・・・気のせいかな?」

モゾモゾモゾッ

「ひゃっ!」   パチン!


 虫ゎ大っ嫌い。それなのに、ァタシの首筋に虫がくっついて背中に入っていこうとしたから、慌てて叩いたの。プチって感じの虫が潰れる感覚がすっげーキショい。


「ぅわぁ~~~朝からサィァクなんですけどぉ~~」

「どうしたの?クレハ。」

「虫潰しちゃったょぉ~」


 でも、テッシュで包んで捨てようと思ったのに、手の平に虫ゎくっついてなかったの。その代わりに、黒いモヤモヤがあって、蒸発するみたいにして消えちゃった。


「あれぇ~?虫って蒸発するっけ?」

「そんなわけ無いでしょ。」

「だよね?」


 念の為に叩いた首筋を触ったり、アミに見てもらったけど、潰れた虫的な物は無い。


「んぇ~・・・背中に入っちゃったかな?見てよ、ァミ。」

「え?服を捲って見るの?ここで?男子も沢山居るんだよ。」

「だって、背中に虫居たらキショいもん。」

「潰したんでしょ?」

「潰れたのが背中に入っててもキショいもん。」

「トイレに行って確認してあげるから、それまで我慢して!」

「・・・んっ」


 一日中、潰れた虫が背中にいるとか、おうちに帰って服を脱いだら転がり出すとか、想像しただけでもキモいので、トイレに行ってアミに見てもらうことにして、小走りで生徒玄関に向かう。


《おぉぉぉぉっっっ・・・何故、コノ娘ニハ憑ケナイ!?》


「ん!?何か言った!?」

「何が!?」

「『娘にゎつけない』とかなんとか?」

「言ってないよ!何を付けないの?」

「ワカンナイ!」

「何それ、変なの!」

「だょね!?アミの声じゃなかったもん!ん~~~~空耳かな?」


 学校の雰囲気も、昨日のアミの感じも、澱んだ声も、みんな気のせいかな?とにかく、背中の虫だけゎ我慢できないので、急いでトイレへと向かう。


 しかし、紅葉の感覚は‘気のせい’ではなかった。校舎内のあちこちの隅、廊下や教室の天井、教員や生徒達の首筋から背中・・・至る所で‘小さい蜘蛛’がゴソゴソと動き回っている。




-朝のホームルーム-


 結局、背中に虫ゎいなかったんだけど、ァタシの違和感が「気のせい」ぢゃなかったの。


ドォン!!

「・・・・・・・・・・・・・・・・ぇ?なに??」


 教室で先生が来るのを待ってたら、突如、一瞬だけ真っ暗になったような気がしたの。学校の、ちょっと汗臭いニオイが、すっげー汗臭くなった感じ。え~っと、わかりやすく例えるなら、骨が全部取ってあるはずの焼き魚を食べたら、骨があってイラッとする感じ。


「なに、この感じ!?」


 窓から顔を出して、違和感が強い方を見たら、今朝会った格好良いバイクの人と、知らないお爺ちゃんが校舎に向かって歩いていて、汗臭い感じゎ、2人を拒否ってるような気がしたの。


《おぉぉぉぉっっっ・・・来タカ・・・小賢シイ!!》


「またさっきの声が聞こぇた!!ねぇ、みんな!?みんなも聞こぇたょね!?」


 さすがにビビっちゃった。クラスのみんなが俯いてて、眼は虚ろで顔色は青白くて、背中が黒い湯気みたいなのでモヤモヤしてるんだもん。まだ、体育の授業で汗をかいてないのに、みんな、超汗臭い。


「ぇ!?なに!?ちょっ・・・みんな!?・・・アミ!?」


 みんなの体臭ぢゃなくて、黒いモヤモヤが臭いみたい。よくワカンナイけど、絶対になんかおかしいよ。


「なにょ、これ?せ、先生・・・呼ばなきゃ!」


 教室を飛び出して教務室に走る。廊下を走りながら窓やドア越しに他の教室の中を見る。ちゃんと見てないからハッキリとは解らないけど、どの教室も汗臭くて、生徒達の背中がモヤモヤしているっぽい。


「先生!!みんなが変なの!!」


 教務室に到着。でも、先生達も汗臭くて背中がモヤモヤしている。


「おぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!」


メリッメリッメリッメリッ・・・ズバァァッ!!

 先生達の背中にあるモヤモヤから毛の生えた8本の虫の足が出現!


「おぉぉぉぉっっっ・・・何故、オマエニハ憑ケナイ!?」

「おぉぉぉぉっっっ・・・目障リダ、我が糧とナリて消エろっ!!」


 8本足を背負った先生達が飛び掛かってきた!


「きゃぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」


 ビックリしすぎて腰が抜けそう!なにがなんだか解らない!でも、捕まったらヤバいことだけはわかるから、必死になって逃げる!


「ァタシの学校、どうなっちゃったの?みんな人間のフリをしてたけど、ホントゎ虫だったの?」


 廊下を走り、階段を駆け下り、生徒玄関に向かう!だけど、玄関は既に沢山の8本足を背負った生徒達で埋め尽くされていた!


「ひぃっ・・・ぃやぁぁぁぁっっっっ!!!」


 ァタシゎ、頭の中が真っ白になって、大っ嫌いな虫に捕まって食べられて死んじゃうと思った。


 だけど・・・


 ヒーローが現れて、ァタシを助けてくれた。

 閻魔大王みたいな格好をした朱色のヒーロー。

 

 落ち着きを取り戻したァタシゎ、ヒーローに汗臭い元凶の場所を案内してあげたの。なんでかよく解らないけど、どこに居るのか解っちゃった。ヒーローやベテランぽいお爺ちゃんでも解らなかった場所が正確に解るなんて、ァタシ凄くね?

 操られたアミが襲ってきた時は焦ったけど、助けることができて良かった。大っきい蜘蛛の妖怪が出て、すっげー気持ち悪かったけど、ヒーローが格好良かったおかげで、あんまり怖く感じなかった。


「あっ!待ってっ!」


 蜘蛛退治が終わった後、閻魔様みたいなヒーローとお話ししたかったけど、彼はァタシとの接触を避けるような素振りで、屋上から飛び降りて、サッサと帰っちゃった。

 屋上に残ったァタシゎ、格好良いバイクに乗って遠ざかっていく彼に背中を見つめる。


「大丈夫。どこの誰なのかは解らないけど、突き止める手掛かりゎあるよ。」


 中の人ゎ、今朝、会った格好良いバイクの人。ヒーローに向かって何回か「60点」て呼んだけど、話が通じていたみたいで、彼は「60点」を受け入れてた。

 ホントゎ「60点」ぢゃない。でも、ホントの点数はナイショだよ。


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