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9 第1次試験・開始


「それでは、試験を開始する。準備ができたパーティーからダンジョンに入るように」


 ガルラント司祭がそう告げると、受験者たちは続々と遺跡の入口へ向かっていった。


「行くぞ! オレについてこい!」


 剣聖候補のイザックが威勢良く歩き出す。

 賢者候補のラウルと聖女候補のセーナが後に続き、一番最後が荷物持ちの俺だ。

 背中には4人分の水と食料がのしかかっている。

 20キロちょっとってところか?

 ついでに、犬みたいな猫が1匹だ。


「ぴゅぃ……」


 降りたほうがいい? って顔でシーバが見つめてくる。


「お前は重くないからそのままでいい」


 それに、世の中には、重いものを軽々と持ち上げる技ってのがあってだな。

 家具を運ぶ引っ越し業者や老人の面倒を見る介護士なんかはこの辺よく熟知しているのだ。


 そういった技も俺の模倣魔法でコピーできる。

 荷物を軽くする生活魔法と併用すれば、背嚢は体感2キロくらいまで軽くなった。

 楽チンだ。


 いざ、ダンジョンの中へ。

 中も遺跡といった趣だった。

 足元は苔むしていて歩きにくい。

 それ以上に、濃い魔力で息が詰まりそうだった。


 パーティーは全部で10組。

 合計40名だ。

 団子になって進めば、ある意味、軍隊の1個小隊みたいなもの。

 魔物のほうが逃げていくだろう。


 と高をくくっていたのだが……、


「このダンジョン、まるで迷路だな」


「きゅい!」


 近所の住宅街より脇道が多い。

 あっという間に他のパーティーは散り散りになってしまった。

 残されたのは、不気味な静寂と暗闇。

 威勢のいいイザックもさすがに歩調が弱まってきた。


「――『微精灯トーティア』」


 ラウルが杖の先に明かりを灯した。

 昼間みたいに周囲を照らしている。


「僕くらいになれば、光の精霊をその場で使役できるんだ」


 奇遇だな。

 俺もできる。

 でも、言わないほうがいいだろう。

 ラウル、とっても誇らしそうだし。


「おーし! よくやった、ラウル! さすが賢者候補だな!」


 明るくなった途端、イザックに威勢の良さが戻ってきた。


「どうせだ! 一番乗りで宝剣を持ち帰ってやろうぜ!」


 踊るような足取りで一歩踏み出して、


 ――カチッ。


 イザックが踏んだ石がスイッチみたいな音を立てた。

 通路の向こうから何か飛んでくる。


『思考加速』――。


 俺は精神魔法で自分の思考スピードを加速させた。

 世界がスローモーションで動き出す。


 ――矢だ。


 どうやら、トラップを踏んだらしい。

 真っ直ぐイザックに向かって飛んでいる。

 てっきり避けるか、剣で防ぐのだと思った。

 でも、イザックは矢に気づく様子すらない。

 とぼけた顔で足の裏を見つめているだけだ。


 ガキン――ッ!!


 ギリギリのところで俺の結界魔法が間に合った。


「うお!? なんだ……!?」


 結界に弾かれて転がる矢を見ても、イザックはまだトボケ顔だった。


「もしかしてオレ、罠のスイッチを踏んじまったのか?」


 もしかしなくても、そうだ。


「でも、ラッキー! なんか外れたみたいだな!」


 いや、なんでそうなる!?

 俺が結界を張ったことにすら気づいていないのか。

 ラウルもぽかーんとしている。


 唯一、セーナだけは俺を見て目を丸くしていた。

 でも、しきりに目をこすっているあたり、見間違いだと考えているようだ。


 俺は心配になって尋ねた。


「お前たち、どの程度戦えるんだ?」


 剣術にせよ魔法にせよ階級がある。

『下級』『中級』『上級』『聖域』『龍域』『神域』って感じで。

 三聖人を目指すと豪語しているんだ。

 せめて、上級剣士か聖域魔術師クラスの実力はないと厳しいと思うが。


 イザックが露骨に怪訝な顔をした。


「うるせえよ雑魚が。お前に剣術の何がわかる? オレに守ってもらわないとお前なんかもう死んでいるぞ」


 いや、こっちのセリフですけど!?


「お前は黙ってオレについてくればいいんだ」


 それが不安だって話なんだが。

 まあ、俺はただのサポーターだ。

 試験の主役はイザックたちだし、見守ってやるか。


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