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34 ハンデ


「剣聖に決闘で勝てってさ。そんなことできると思うか?」


「できるわけないだろ。相手は世界最強の剣士だぞ」


「戦って勝てるなら最強なんて言われていないわよね」


 受験者の顔色が目に見えて悪くなった。

 俺の見立てでも受験者が勝つ可能性は万に一つもない。

 ストロンガノフでも難しいだろう。

 本人もそう思っているらしく、ファイティング・ポーズのまま冷や汗をダラダラさせている。


「ハッキリ言おう。私はお前たちに三聖人の座を譲るつもりはない」


 剣聖キリエはきっぱりと言い切った。


「私は見ての通り、まだ若いエルフだ。ゆえに、代替わりと言われてもピンとこないのだ。私は、あと1000年は現役でいるつもりなのでな」


 若いと言っても、お前たちの祖母と同じ世代だがな、とキリエは自嘲気味に付け加えた。


「トーナメント方式などという生っちょろい競争を勝ち抜いただけの後進に明け渡す席など持ち合わせていない。三聖人を名乗る資格があるか否か、私が自らの剣で見極めてくれる」


 トーナメント方式だと必ず1組は優勝者が生まれる。

 たしかに、生ぬるい。


 一方、キリエとの決闘方式なら、該当者なしもありえる。

 難易度は格段に跳ね上がるだろう。

 キリエも手心を加える気はさらさらないって顔をしているしな。


「決闘のルールを告げる。基本的には勇者パーティー対抗戦と同じだ。4人1組でかかってこい」


 違うのは、対戦相手がキリエ1人という点か。

 俺も宝剣を背負って参加するわけね。


 そんなの無理だ、と誰かがこぼした。

 たった4人で勝てっこない、と。

 キリエは鼻で笑った。


「無理? 無理を無理やり跳ね除けるのが勇者パーティーだろう。魔神を滅ぼし、世界を守るのが勇者パーティーの使命だ。ここで、私一人を倒せずして何が三聖人だ」


 うんうん、と俺は頷く。


「とはいえ、お前たちは私以上に若い。少しばかり、ハンデをくれてやろう」


 キリエは木剣をさらりと抜き放った。


「私はこれでいく」


 木剣。

 要するに、木の棒か。

 斬られても死なない分、真剣勝負よりはマシだな。


「ついでに、もう一つハンデだ」


 キリエはどこからともなく取り出した角付きカチューシャを頭に装着した。

 そして、言った。


「私は魔神だ、ブハハハハ!」


 しーん。

 恐ろしいほどの静寂が訪れた。

 天を突く2本の角がバカさ加減に拍車をかけている。


 キリエは赤くなった頬をポリポリとかいて、


「……つまり、あれだな。私が魔神役だ。お前たち勇者パーティーは死に物狂いで私を倒せ。特別に、この角を叩き折ったらお前たちの勝ちでいい。負けたときは、私も素直に剣聖の座を譲ろう。そんなことは絶対に起こりえないがな」


 武器は木剣。

 角を折っても勝ち。

 数の利もある。

 これだけハンデをもらって勝てないなら、故郷に帰って腕立て・腹筋・走り込みからやり直したほうがいいな。


「どうする? 別に逃げ帰ってくれても構わんのだぞ」


 キリエがハッパをかけるように言った。


「1対4で勝てないようなら三聖人を名乗る資格はないわね。私はやるわ」


 セーナが負けじと大見得を切った。

 お前、そんな熱血キャラだったか?


「ボクも逃げないぞ! ここで逃げ出すような奴に領民を背負う資格なんてないんだ!」


 マイアルも鼻息を荒げている。

 お前はそういうキャラだよな。


「ふーむ! 我輩も、グハハ! 全霊をとして戦いましょうぞ! これも最強に至るための試練! グフ! フグハハハハハ!」


 ストロンガノフはいつもどおりって感じだな。


「ほう。気骨のある者もいるようだな」


 キリエは白い歯をこぼして、言った。


「未来の三聖人たちよ、私を倒して見せろ!」


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