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32 初戦


「ボクって昔からクジ運ないんだよね……」


 対戦相手の抽選から戻ってきたマイアルが悲愴感を漂わせている。


「強敵を引いたのか?」


「ううん。知らない相手だった。問題は順番のほうさ」


 まさか……。


「そうさ。ボクらが一番最初なんだ」


 トップバッターか。

 空気感が掴めないから一番緊張する打順だ。

 俺は宝剣を抱いてネクスト・バッターズサークルでぼんやりするだけだから楽だけどな。


「「やあ、子豚くん!」」


 四つ子芸のスペシャリストたちがやってきた。


「「まさか、本当に三聖試験にエントリーしていたとはね。1回戦の相手が君じゃなくて残念だ。思い上がった豚の子にお灸をすえてやりたかったんだけどね」」


 長ゼリフもなんのその。

 シンクロ率100パーセントだった。

 ここまでくると、すごいというより不気味だ。


「ボクと対戦したかったってことかい? なら、お互い3回戦まで勝ち上がればぶつかると思うけど?」


 マイアルは皮肉にもどこ吹く風である。


「「その可能性は万に一つもない。僕らはともかく、君が勝ち上がるのは不可能だ。なんたって、豚だからな。まあ、せいぜい醜く足掻きたまえ。ハッハッハ!」」


 ヨインズ兄弟は笑い声も歩幅も完璧に揃えながら引き上げていった。


「ボク、カッチンときたよ! なんだってんだよ、もー!」


 まあ、そう怒るな。

 結果で見返せばいいだけだ。


「……あれ? でも、カリカリしていたら緊張がほぐれてきたかも。もしかして彼ら、ボクのために憎まれ口を叩いてくれたのかな?」


 マイアルの顔に感謝の念がにじんでいる。

 ポジティブな奴だ。


「もうすぐ出番よ。作戦を練りましょう」


 セーナの提案でマイアルは表情を引き締めた。


「ボクは賢者候補だからね! 作戦立案は任せてくれ! セーナは結界役だ、守りを固めてくれ!」


「わかったわ。適宜、回復役ヒーラーもこなすから」


「ボクは後衛だ。相手の魔術師を牽制しつつ、結界を破るよ。……で、ストロンガノフは」


「グハハハハ! 作戦など不要であーる! 我輩がパワーで、フフ! すべてを解決するのみ! フフハハハハ!」


 そう言うと思ったよ、って顔で俺たちは肩をすくませる。


「これより、第2次試験・1回戦を開始する!」


 遠くのほうからガルラントの声が聞こえてきた。

 大歓声も一緒だ。

 出番だ。


「シーバ、ミルカたちのところに行ってな」


 ダンジョンならいざ知らず、ペット連れで人前に出るのはな。


「きゅぅぅん……」


 寂しそうに一鳴きすると、シーバは霊体化して壁の中に飛び込んでいった。


「よし、行こう!」


 選手入場。

 マイアルを先頭に堂々と乗り込んでいく。

 対戦相手のパーティーは緊張でガチガチだった。

 無理もない。


「「ガノフ! ガノフ! ガノフ――ッ!」」


 闘技場はストロンガノフ・コールで揺れていた。

 完全なるアウェー感。

 対戦が始まっても相手はカチンコチンのままで、


「とぅ――ッ!!」


 ストロンガノフのジャンピング・キック一発で勇者役もろとも蹴散らされてしまった。


 第1回戦、勝利。

 張り切っていたマイアルは出番ゼロ。

 セーナに至っては1歩も動いていない。

 ストロンガノフの独擅場だ。

 場数とパワーの差で圧勝だな。


 第2回戦。

 対戦相手は真っ先にストロンガノフを攻撃した。

 魔法を雨あられと浴びせかけ、剣で畳み掛ける。

 集中突破を狙った形だ。

 しかし、


「フハハハハハハッ!!」


 ストロンガノフの拳、炸裂。

 圧倒的火力でまたしてもワンパンだった。

 このままでは、本当に剣を持たない剣聖が生まれそうだな。

 面白いから、それもいいけどさ。


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