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31 対抗戦


「これより、三聖選定試験・第2次試験を執り行う」


 ガルラントの胴間声が轟いた。

 闘技場のバックヤードには試験官のほかに100名近い受験者たちが集められている。


「試験の内容は――」


 一拍を置いてからガルラントは言った。


「名づけて、勇者パーティー対抗戦である!」


 なるほど。

 勇者パーティー対抗戦か。

 それだけじゃ何もわからないから、受験者たちもざわざわしている。


「これから諸君らにはパーティーを組んでもらう。聖女候補、賢者候補、剣聖候補に勇者役のサポーターを加えた4人パーティーだ。そして、パーティー同士で決闘をしてもらう」


 サポーターは勇者役なのか。

 荷物持ちよりは華がありそうだ。


 試験官たちが壁にトーナメント表を掲示した。

 受験者数から計算すると、合計30パーティーほどになる。

 直接対決で白黒つけて、本当の三聖人が誰かハッキリさせようとそういうわけか。


「勇者パーティーは1つでよい。そして、勇者パーティーに敗北は許されない。負けたものから順次失格とする」


 わかりやすいルールだな。


「「勝敗はどうやって決めるんです?」」


 綺麗にハモった4人分の声が聞こえてきた。

 ヨインズ兄弟だ。

 同じ顔が4つも並んでいるので、ざわざわが今日イチ大きくなった。


「三聖候補が全員戦闘不能になったパーティーは敗北とする。また、勇者役のサポーターには宝剣をひと振りずつ授ける。これを相手方に奪われても失格とする」


 聖剣を敵に奪われたら、そりゃ失格だよな。

 となると、俺の役目はけっこう大事じゃないか?

 サポーターが参戦するのは御法度だろうから、せいぜい一番後ろのほうで宝剣をギュッ、と握り締めておこう。


「それでは、パーティーを組みたまえ」


 ガルラントが言い終わらぬうちに、受験者たちは一斉に動き出した。


「セーナ、ボクとパーティーを組んでくれないかな?」


「そうね。お互いのことを知っているほうが連携も取りやすそうだわ。勇者役は当然」


「ミトで決まりだ!」


 マイアルとセーナは脇目も振らず俺のもとにやってきた。


「これで、賢者候補と聖女候補と勇者役がそろったな。あとは剣聖だが、二人の知り合いとかいるか?」


「うーん、ボクは心当たりがないかなぁ……」


「私もよ」


 じゃあ、剣聖候補はイチから探すしかないな。

 なるべく強そうな奴がいいだろう。


「とぅ――ッ!!」


 突然何かがジャンプした。

 そいつは、演壇の上に軽やかに着地すると、筋骨隆々の肉体から輝く汗を飛び散らせた。

 裸マントに覆面、そして、ブーメランパンツ。

 ま、まさか……。


「我輩はグハハ! ストロンガノフ1世であーる! 我輩とパーティーを組みたい者よ、いざ名乗りを上げるがよい! フグハハハハハ!」


 超・個性派拳闘士ことストロンガノフだった。

 推しの登場に俺の胸は高鳴った。


 しかし、受験者たちはシーンとしている。

 目が合うと呪われるとばかりに視線をそらす者も多い。


「む? また会いましたな、パワーマン殿! フオハハハ!」


 大きな手が俺に向かって振られる。

 奇異の視線も俺に集まる。

 推しではあるが、知り合いだと思われるのはちょっと……。


 というか、ストロンガノフも参加者なのか。

 きっと1次試験は腕力でサクッと合格したに違いない。

 いや、そんなことより剣聖探しだな。

 俺も覆面マッチョから目を切った。


 そして、5分後のことである。


「ど、どうしよう……。まだ剣聖を見つけられていないよ」


 マイアルは頭を抱えていた。


「なぜか私たち、避けられていたわよね」


 セーナは俺に非難の目を向けている。

 俺のせいなのか、これ?


 ストロンガノフがまた会ったなんて言うせいで、俺まで変な奴だと思われているのだ。

 変な奴の誘いを受ける者はいない。

 よって、俺たちのパーティーは剣聖候補を見つけられずにいた。

 俺のせいでは……ないな。


「剣聖が1人足りないってことはないよな」


 それだと4対3になる。

 フェアじゃない。

 どこかに剣聖候補がいるはずだが。


「……」


「………………」


「…………」


 余っている受験者が1人だけいた。

 俺たちは嫌々そいつに目を向けた。


「はて、我輩の顔に何かついておりますかな? グハハハハ!」


 ぐはは、はは……。

 そう、ストロンガノフ1世である。


 俺は苦笑しつつ尋ねた。


「そもそも、あんたは拳闘士だろ? 剣聖なら剣がいると思うぞ」


 百歩譲って魔爪か槍だ。

 もちろん、ストロンガノフは手ぶらである。


「剣ならありますぞ! けんが! グハハハ!」


 思いっきり親父ギャグだった。


「我輩はフハハ! 裸一貫、拳一発でもって真の最強になりたいのであーる! 『拳聖』など通過点に過ぎぬ! 我輩に任せておけば必ずや勝利で報いましょうぞ! フグハハハハ!」


 剣聖な。

 いいのか、こんな奴で。

 試験官は何も言わない。

 ルールの上では問題ないのか。

 戦力としては破格だけど、連携を取るのは難しそうだな。


 セーナは目が死んでいる。

 マイアルはさり気なく距離を取っている。

 不安だ……。


「パーティーが決まったようだな」


 ガルラントが演壇の上から呼びかける。


「それでは、対戦相手の抽選を行う。パーティーリーダーは前へ」


 俺はマイアルの背を押した。

 セーナも一緒に押していた。


「え、ボクでいいの?」


「もちろんよ。あなたが一番意欲的だもの」


 俺もセーナの意見に同意だ。

 ストロンガノフは興味がないらしく、自分の体を恋する乙女みたいな顔で見つめている。


「じゃあ、行ってくるよ!」


 金のショートヘアを揺らして駆けていくマイアルの背中を見ながら、俺はふと思い出していた。


『どうせ第2次試験は誰も受からんのだからな』


 1次試験の前、ガルラントはそう言っていた。

 あれは、どういう意味だったのだろうか?


ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます!

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