30 第2次試験の日
試験日がやってきた。
装備を整えて闘技場へと向かう最中もマイアルは陽気で饒舌だった。
こいつは、緊張とかしないらしい。
「でも、ボク意外だったなぁ! 完璧に見えるミトにも弱点があったんだからさ!」
俺に弱点?
なんのことだ?
前世と違って長生きしたいから、弱点は極力潰すようにしてきたのだが。
マイアルの目は俺の傍らに注がれている。
俺も釣られて目を向けてみた。
すると、俺の腕にセミみたいに引っ付いているミルカと目が合う。
「キミのお義母さんはキミが寂しがらないように、わざわざ聖都まで来てくれたんだよね?」
「そうなんですぅ! ミト様に寂しい思いをしてほしくありませんから、夜通し馬に鞭打って追いかけてきたんですっ!」
ミルカの顔にとってもいいことをしたっ! って書いてある。
「ミトって寂しがり屋なんだね! 子供っぽいところもあってボクなんだか親しみが持てるなぁ!」
やめろ。
俺をお子ちゃま扱いするな。
通算年齢なら、この中で一番上だ。
「ご主人様はまだ親離れができないのね。私はできているわよ?」
セーナが小馬鹿にしてくる。
「逆だ。子離れできない親を持っただけだ。それに、お前は勘当されただけだろ?」
と言ってやると、セーナの顔に影が落ちた。
失言だったか。
「見返してやればいいさ。第2次試験に受かったと聞いたら、お前の家族はころっと手のひらを返すと思うぞ?」
「そうね。そのためにも今日の試験、頑張らないと」
闘技場に到着した。
聖翔国の全土から集まった受験者たちが互いに視線の火花を散らしている。
受験者ではない人たちもいるようだ。
むしろ、そっちのほうがずっと多いな。
列になって闘技場に入っていくが、もしかして見物客だったりするのか?
「まさか、試験って公衆の面前で行われるの?」
セーナの表情が強ばった。
人前となるとプレッシャーもあるだろうな。
ただでさえ、セーナは猫耳メイドとかいうふざけた格好をしているわけだし。
「三聖人とは、国家国民の英雄だ」
山賊ヅラの眼帯男が法衣をなびかせてやってくる。
中級司祭のガルラントだ。
「背負うべき国民の重さに屈するようでは三聖人たる資格はない。ゆえに第2次試験は衆目の前で行われるのだ」
なるほど。
納得の理由だな。
「ディクライン家の娘セーナよ、聖女の血筋の復権を私も期待しているぞ。……その耳、いいな」
最後の一言、なんだったんだ?
「ときに、お前」
ガルラントの左目が俺に向けられた。
「1次試験のときにもいたな。今回もサポーターとして参加せよ。人手が足りておらんのだ。相応の報酬も出るぞ」
サポーターか。
前回は痛い目を見たからな。
でも、2次は1次よりずっとハイレベルだろうし、近くで見てみたい欲求もある。
「またダンジョンに潜れとか言わないなら」
「第2次試験では人死にが出るようなことにはならん。詳細はまだ発表できんがな」
なら、引き受けてやるか。
マイアルやセーナも頑張ることだし。
「ところで」
ガッ、と俺の肩に大きな手が置かれ、いかめしい顔が近づいてくる。
「お前が迷宮主を倒したと噂する者があるのだが、まことか? 事実ならば口惜しいな。サポーターに甘んじてよい才能ではない」
ガルラントはそれだけ言うと、法衣をはためかせて去っていった。
「お兄様は私たちと一緒に試験を観戦しないんですか?」
やり取りを見ていたクロエが長い耳を垂れさせた。
「シロたち、お兄の隣に誰が座るかで喧嘩したのに」
シロンも耳と尻尾を下げてしまっている。
そんなことで喧嘩するな。
「クロエちゃんもシロンちゃんも強すぎなんですよぅ。わたし、ボロ負けでしたぁ……」
ミルカの髪は鳥の巣みたいになっていた。
「でも、クロエちゃん。どうして勝ったのに後ろの席を選んだんですかぁ?」
「だって、後ろの席ならお兄様に後ろから抱きつけるでしょ?」
ミルカとシロンから同時に感心のため息がこぼれた。
「シロ、やっぱ後ろの席がいい」
「わたしもですぅ! ミト様に後ろから抱きつきたいですぅ!」
「もう一戦するつもりですか? お兄様に教わった暗黒魔法で返り討ちです!」
いや、だから、俺はサポーターをするんだって。
観客席にはお前たち3人だけで行きなさい。




