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20 取り立て屋


「うぅぅ……! 大変なことになりましたぁ、ミト様ぁ!」


 1次試験から帰ってきた翌日。

 ミルカに泣きつかれた。

 昨日めちゃくちゃ大変だったから、今日はゆっくりしたいところなんだけど。


「大変なことってなんだ?」


 あまり気乗りしないが、とりあえず訊いてみた。


「うぅぅ、実は今日中に借金を返済できないと教会を差し押さえられるんですぅ!」


「それは、……大変だな」


 教会は俺にとっては生家も同じだ。

 愛着だってある。

 まだ乳飲み子もいるのに、路頭をさまようハメになったら一大事じゃないか。


「ちなみに、借金ってどのくらいなんだ?」


「さ、300万イッツですぅ……」


 ざっと3000万円か。

 払えるな。

 今の俺なら。


「うおォォォォいィッ! ボロ教会のクソシスターどもォォォォ!」


「隠れてねえで出てこんかァーいッ!」


「アニキを待たせんじゃねええ!」


 ドンドンドン、と玄関扉が叩かれる。

 まだ幼い子供たちが震え上がって泣き始めた。

 取り立て屋みたいだな。


「留守でぇーす。教会は本日休業中でぇーす。誰もいませぇーん」


 ミルカがテンパって在宅宣言を発布した。

 一段と強まる、ドンドンドン。


 仕方がないので扉を開けると、いかにも悪そうな連中が凶悪なブルドックみたいな顔で睨んできた。


「オゥオゥ! ミルカさんよォ、借りた金と年利の0.3パーセント、耳揃えて払ってもらいましょうかねえ!」


 年利0.3パーなんだ。

 めちゃめちゃホワイトだな。


「子供たちは成長期でぇ、たくさん食べさせてあげたいし、ちょっとぉ待ってもらえると嬉しいんですけどぉ……」


 ミルカは身を縮めて上目遣いに窮状を訴えた。

 すると、胸が寄って存在感が格段に強まる。

 取り立て屋の顔がニチャァ、と歪んだ。


「どうしても払えねえかァ?」


「は、はいぃ……」


「なら、その乳で払ってもらうしかねえなァ! ついてこいッ!」


「きゃ! ミト様ぁ……!」


 あー、はいはい。

 ミルカに伸びた手を俺はひねり上げた。


「あだだだだだ……!?」


「アニキに何しやがるんだ、てめえ!」


「オゥ! おめえら! ヤッちまえ!」


「「ヘヘイ――ッ!!」」


 てっきり喧嘩でも始まるのかと思ったが、取り立て屋たちは拳を握ろうとしなかった。


「アニキを離せーッ!」


「暴力反対だ、ボケェ!」


「落ち着いて話をしようぜ! なぁ、坊主よぉ!」


 なんか普通に説得してくる。

 まあ、流血沙汰になるのは俺も困るからいけど。


 俺はアニキと呼ばれていた男の手を離して、その胸に革袋を叩きつけた。

 緩んだ袋の口から金のシャワーがまき散らされる。


「わうおっ! 金貨だ! 宝石もあるぞ!」


「すげええ! 黄金のネックレスに指輪もぉ!」


「拾え拾え! 一つも取りこぼすんじゃねえぞぉ!」


 取り立て屋がゴールドラッシュに沸いている。


「ミト様、そのお金、どうしたんですかぁ? ま、まさか……」


 ミルカの顔が引きつっているわけだが。


「ど、泥棒ぉ……」


 いや、違うけど?

 つい昨日、迷宮主を倒して宝物庫から持ち帰ったものだ。

 ダンジョン側から見れば、泥棒と言えなくもないが。


「ミト様が泥棒をぉ……。わたしのおっぱいが歪んでいるから、ミト様がグレたんだぁ……」


 ミルカがついに泣き出してしまった。

 面倒くさいから、後で説明しておこう。


「それで足りるはずだ。釣りはいらない。うちのミルカに二度と関わるな」


「ミト様ぁ! わたしのためにぃぃ、うぅ……!」


 今度は目をキラキラさせて見上げてくる。

 忙しい人だな。


 アニキがチッ、と吐き捨てた。


「これで、返済完了ってことにしておいてやるぜ」


「いいんすか、アニキ? 借金のカタにあの女をもらう手筈じゃ……」


「仕方ねえだろうがよ、返すもん返されちゃ手が出せねェ。いい乳母だって言うから、ウチの島で孤児どもの面倒見させようと思ったのによォ。邪魔したなァ」


 取り立て屋たちは揃って踵を返した。


「おら、おめえら! とっとと帰ッぞ! 腹好かせたガキどもが待ってることを忘れんじゃねえ!」


「「ヘヘイッ!」」


「なあ、アニキぃ! この金でガキどもに絵本を買ってやりましょうよォ!」


「てめえ、このボケ! なかなかいいアイデアじゃねえか! 採用だ、殺すぞ!」


「ヘヘイッ! 光栄っすゥ!」


 なに?

 意外といい奴らなの?

 気をつけて帰れよ。


 清々しい気持ちで手を振る俺であった。


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