表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/40

14 炎のオットセイ


「あなた、何者なの……」


 セーナの声は震えていた。

 俺が体を向けると、彼女はびくりと肩を跳ねさせた。


「剣も魔法も超一流、そのうえ聖女の魔法まで使えて、聖獣を従えているなんて。まるで、伝説にある勇者様じゃない」


 勇者ってそういうものか?

 俺は聖剣とか持ってないけどね。

 それに、桃の中でどんぶらこした覚えはない。

 普通に可哀想な感じで路地裏に捨てられていた。

 通行人にも汚いものを見る目で睨まれたからな。


 俺はただのモノマネ名人だ。

 それだけだ。

 これ以上、問いただされるのも面倒なので、話をそらそう。


「そろそろ、下りてきたらどうだ?」


 俺は上に向かって声を張り上げた。


「ほう。オレたちの潜伏を見破れるのか」


 くぐもった声の後、天井の石材がボコッと外れた。

 ロープが垂れてきて、スルスルと冒険者が3人下りてくる。


「驚いたぜ。ヤバくなったら助けに入るよう言われてたんだがな。まさか、自力でどうにかしちまうとは」


 崩れた壁を覗き込んで、リーダー格らしき男が感嘆のため息をもらした。

 獣人だ。

 えらくワイルドな風貌だが、気さくな雰囲気がある。


「どうやりゃ、この壁を素手で破れるんだ? 意味がわからねえな」


 その話はもうやめてくれ。

 それより、訊きたいことがある。


「助けに入るよう言われていたって、どういう意味だ?」


 まあ、あらかた察しはつくのだが。

 俺の脳裏にはガルラントの眼帯顔が浮かんでいた。

 おっかない顔だが、サポーターを生贄にするような人物には見えなかった。


「ま、坊主が察しているとおりだ。ガルラントの旦那はサポーター連中が割りを食わねえように救助隊を用意していたのさ。それがオレたちだ」


 ま、坊主には必要なかったらしいがな、と男は自嘲気味に笑った。


 安心した。

 帰ってからどんな顔でガルラントを見ればいいか、上げた拳を振り下ろす場所に困っていたところだ。


「オレはガッス。ベルトンヒルじゃ、それなりに名の知れた冒険者だ。知らねえか? 『炎のオットセイ』ってパーティーなんだが」


 知らない。

 けど、聞いたことがあるようなー、という顔をしておいた。

 名前の由来が気になるところだ。


「それで? 坊主はどうするんだ?」


 どうすると言いますと?


「その崩れた壁の向こうが最奥の間だ。坊主に救助がいるとは思えねえが、他のサポーターみたいにオレらが地上まで送り届けてやろうか?」


 俺に宝剣は必要ないしな。

 帰るかな。

 返事をする前にセーナに視線を向けると、彼女は最奥の間を見つめていた。


「私は進むわ。なんとしても宝剣を持ち帰らないと。私はどうしても試験に受かりたいのよ」


 そうか。


「なら、俺も残る」


「え、どうしてよ? あなたが危険を冒す必要はないでしょう? この先には迷宮主もいるのよ?」


「そんなこと言われてもサポーターだからな。受験者のサポートをするのが、俺の仕事なんだ」


 ガッスたちも危険を冒して救助を引き受けているわけだし。

 俺が仕事を放棄して、彼らの仕事を増やすのは褒められたことじゃないだろう。


 それに、セーナも心配だしな。

 無茶しそうな顔をしている。


「そういうわけで、悪いけどガッス」


「おう! オレたちは引き上げさせてもらうぜ? お前のまっすぐなところ、気に入った! まだ、しばらくこの辺にいるから、何かあったら呼んでくれ。助太刀してやるよ!」


 そう言うと、忍者みたいな軽やかさでロープを登っていく。

 最後に一つ訊いておこう。


「迷宮主って強いのか?」


「まあな。まだ誰も倒したことがねえ。というのも、この迷宮には宝物庫がねえからな。命かけて迷宮主とやり合う理由がねえのさ」


 なるほど。

 お宝なしの迷宮か。

 金にならないから、試験地として体よく使われているってわけだ。


「それじゃ、気ィつけろよ!」


 長い犬歯をキランと光らせると、ガッスは天井裏に消えていった。


「じゃ、セーナ。お前のタイミングで突入していいぞ」


 どうぞどうぞ、と俺は壁にあいた穴を譲る。


「礼を言っておくわ。あなた、いい人ね」


 ふふ、と少しばかり口元が緩んだ。

 しかし、すぐに引き締めて、


「これは私の試験よ。あなたは手出ししないで。約束よ?」


「了解だ」


 でも、いざとなったら構わず助けに入るぞ?

 ま、宝剣拾ってトンズラするだけだ。

 ボス戦になるとは限らないけどな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ